観た映画(2015年10〜12月公開)

 今年もぎりぎりで要チェックと思った昨年公開映画を見終える。今回は13作と少な目。

バクマン。
 原作全然知らないけど、たぶん設定をかなり削って展開を物凄く速くしてて、少年ジャンプ的漫画家青春譜が綺麗に纏まってる。クオリティの高い原稿にCGバトルの演出や凝ったエンドクレジットも素晴らしい。ヒロインの絵もそっくりで、作者サイドの全面協力に頭が下がる。漫画製作におけるツッコミ所の多さもこの作品では逆に魅力。

『パパが遺した物語』
 先ず、邦題でネタバレする配給会社は許しがたい。あと、父親の小説がトラウマ克服に繋がるっぽいミスリードな予告編も非道い。子役の可愛いさと挿入歌『Close To You』の力で感動的な雰囲気を醸すけど、それよりもメンヘラ女が「愛する人を失う恐怖」と向き合うネガティブなお話のストレスが勝る。

ピッチ・パーフェクト2』
 世界的に大ヒットしたのは本作の方なのだが、恋もチームワークも王道パターンはほぼ前作でやり尽くした感があり、退屈はしないがドラマ的にはあまり盛り上がらない。ギャグも冒頭の一発は強烈だけど次第に尻すぼみとなる。だけど、歌パートのパフォーマンスは文句なしの見応え。

マイ・インターン
 アラサーの敏腕女社長に降って湧いた七十歳の部下って設定はあまり活かされないが、仕事に家庭に色々と悩む女性を適切な助言で老紳士が優しく支えるデトックス系コメディとしては良い雰囲気。その健全で誠実なジジイがよりによってデ・ニーロってのも笑える。アン・ハサウェイの色々なファッションも楽しい。

ギャラクシー街道
 長年培われてきた三谷幸喜ブランドの信頼を大きく損なう事故物件。一般ウケ不可能な古典SFネタも結構あるが知ってても笑えない。えっと、『真田丸』は面白かったです。

『エベレスト 3D』
 過去に映画化もされた有名な大量遭難事故なので、3D映像でも強調しなきゃ売りが無いのは解るが、3Dが後半の荒天描写には役立たずで金返せ感は強い。ガイド&参加者のスキル不足や梯子渋滞など商業登山の弊害はよく整理されてる。取って付けたような奇跡的救助は実話だから仕方ない。

グラスホッパー
 融合しない二つの物語。ミスリード一切無しの演出。やたら挟まれ緊張感を削ぐ回想。最後に明かされる無理筋の真実。クライマックスで主人公と全く接点のない殺し屋二人がバトルを繰り広げるのも斬新すぎる。

コードネーム U.N.C.L.E.
 海外ドラマ『0011ナポレオン・ソロ』は題名ぐらいしか知らないのにとても懐かしい気分にさせられた。お洒落な絵面にチープなスパイアクションにユーモアのセンスも間違いなく60年代アメリカTVのテイスト。バディ・ムービーとして地味に面白くヒロインも可愛い。続編を期待してるが世界的に大コケだったみたいで・・・。

『ムーン・ウォーカーズ』
 「これを何故フランス・ベルギー合作で?」と思ったけど、月面着陸映像捏造説を広めたのは仏のTVの四月馬鹿だったっけ。コメディとしてはハズレだったけども、キューブリック関連の小ネタや当時のヒッピー文化的雰囲気の再現は良い感じだった。

『007 スペクター』
 ダニエル・クレイグ版3作と話が繋がりまくりでそんなの覚えてない状態だったが、ドラマなんか無視してもOKな作品であり、やってることが凄すぎるアクションとか出番多めのボンドガールとか過去作オマージュとか愉快な見所は多かった。けど、ハード路線から急にバカっぽくなる砂漠のアジト以降の失速が酷くて、残念な印象が勝る。

杉原千畝 スギハラチウネ』
 あまり知らない東洋のシンドラーの業績を改めて学ぶには便利だった。淡々と真面目に人権・博愛な伝記映画かと思ったら意外にスパイ映画風味あり。けど、悲しいかな邦画の予算規模。見た目が洋画っぽいだけに映像のチープさは強調される。脚本もエピソードの羅列が酷くスリルとサスペンスが盛り上がらない。

スター・ウォーズ/フォースの覚醒
 これ程までに徹底してエピソード4の焼き直しで攻めるとは予想外だったが、只の懐古趣味では無く新しい世代でも存分に楽しめる作りになってる。新主人公たちがそれぞれに魅惑的だし、CGに頼り過ぎない造形もグッド。ぶっちゃけ中身はたいして無い話だが、それで強烈にうるさいマニア達を黙らせる監督の力技に驚かされる。唯一20世紀フォックスのファンファーレが無いのが悔やまれる。

クリード チャンプを継ぐ男』
 アポロの隠し子をロッキーが鍛えるという胸熱スピンオフ。前回でシリーズが綺麗に終わり快哉を叫んだオールドファンの心残り、『ロッキー5』とかいう一点の曇りは本作で見事に払拭された。観たいモノをちゃんと盛り込んだベタな感涙ドラマが嬉しいし、今風な黒人映画のテイストを加味し焼き直しの印象を与えないのも偉い。


 結局、年間で洋画37作、邦画24作のトータル61作を観賞。去年とほぼ同じ実績だった。

観た映画(2015年7〜9月公開)

 17作と多かったこともあり更新が空いた。今回は(2015版)と此方で勝手に付けなきゃ過去作と区別がつかない奴が3作もある。特に『HERO』はTVの方も全て副題無しでややこしい。

チャイルド44 森に消えた子供たち』
 原作が「このミス1位」って言う情報だけで観たんだけど、なんだこれ?舞台装置であるべき「楽園を建前とするスターリン時代の抑圧されたソ連」ばかりがフォーカスされ、山間部で何故か溺死し胃を摘出された子供達の連続殺人は謎のまま終わったんだが。

アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン
 関連作をフルコンプしてない事もあり色々と疑問符はあったが、『アイアンマン3』で普通の人間に戻った筈の社長が勝手に復帰してる時点で考えても無駄だと割り切った。それにしてもハルクとブラック・ウィドウが無理矢理くっつけられてるのには唖然。アクションはド派手で楽しかったけど、ヒーロー多すぎでもう何が何やら。

ターミネーター:新起動/ジェニシス
 シュワルツェネッガーの帰還を祝福する為のファンムービー。後半の新展開は続編ありき過ぎでつまらんが、過去作を踏まえたネタやシュワの笑顔ギャグで攻め、ツンデレ化したサラ・コナーに萌えるアクションコメディとして予想外に楽しかった。回を重ねるごとに扱いが酷くなるジョン・コナーには涙。

リアル鬼ごっこ』(2015版)
 原作無視の完全新作。女の子のゴア描写とパンチラがぎっしり詰まった園子温ワールド全開の作品。ホラー的には冒頭のバスのシーンが頂点で、後は必然性なく惨殺される女だけの世界を眺め、完全にどうかしてる作り手を笑う映画だった。トリンドル玲奈の戸惑い演技が意外に良い。

『HERO』(2015版)
 TVの新シリーズは観てないのだが、前回の映画であんなキスシーンやっといて、その後ずっと会ってないってのにはビックリ。恋愛面もそうだが検事としてもアラフォーであの設定を引っ張るのは痛すぎる。大使館の事件の方も話は微妙だった。

進撃の巨人 ATTACK ON TITAN
 基本設定だけ借りときゃ良いのに半端に寄せたばかりに原作ファンが発狂した訳だけど、前編だけなら世間で言われるほど酷くはない。樋口真嗣のキャラ演出力には難があるし、常に索敵が機能しないなど兵団描写の緩さも気になるけど、怪獣パニック映画としては及第点。ただ、後編が観たくなるような仕掛けが弱いのが問題。

ジュラシック・ワールド
 大スクリーンで観てこそのアトラクション映画で、恐竜達の暴れ回る様は3D感が素晴らしく迫力満点。反比例するように人間ドラマは壊滅的だけども。でも旧作のオマージュ多めなのは嬉しい。ラストはあまりにも『三大怪獣 地球最大の決戦』な展開だが、遅れて来た真の主役の活躍に胸が熱くなる。モササウルスがでかすぎるのは気にするな。

ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション
 ジャッキー・チェン化が著しいと噂のトム・クルーズを笑うつもりで観たけれど、「そこまでやらんでも!」なサービス精神満載の全力アクションにすっかり魅了されてしまった。レベッカ・ファーガソン扮する謎の女も七変化ぶりが麗しく、飛び関節の流れるような動きが素晴らしい。『スパイ大作戦』らしくラストで溜飲が下がる物語もグッド。

『日本のいちばん長い日』(2015版)
 継戦困難となった鈴木貫太郎内閣の歴史背景をレクチャーしてくれるのは親切だが、尺の半分以上使ってもメインディッシュの「いちばん長い日」に辿り着かないんじゃ本末転倒。この表題じゃ無ければ、降伏に導いた人達の伝記として結構本格派だけど。

ナイトクローラー
 序盤はやや怠かったが話が進むに連れ成り上がるゲス野郎の魅力にどんどん引き込まれた。サイコパスの容赦ないクズ行為に不快感を覚えつつも、口が達者で意識高い系な「村西とおる」っぷりが可笑しい。しかし、血まみれ衝撃映像を狙う特ダネ動画マンなんて仕事がリアルに成立してしまう合衆国の日常は怖いな。

『映画 みんな!エスパーだよ!
 監督・園子温ってだけで予備知識なしに観たが、連ドラ絡みにしちゃ異様にエロ方面に貪欲で驚いた。下ネタで笑わせ巨乳オールスターズでたっぷり目の保養ってのが主で、合間に挟まる本筋は途中からエスパー能力関係なかったりと超手抜きグダグダ脚本。完全にグラビア好き向け。

キングスマン
 突き抜けてバカで面白かった。劇中の会話にあるように、今風のシリアスなスパイ映画ではなく現実離れ上等ってスタンスで作られてて、秘密兵器を駆使したスタイリッシュで楽しげな大殺戮とか、シニカルでブラックな笑いとかが惜しみなく披露される。そんな露悪的な作品だが、スゴ腕の師匠にスカウトされた若者が採用試験をサバイバルしたりするので成長モノ・師弟モノとしてもグッとくる。スウェーデン王室には失礼過ぎるけど。

『天空の蜂』
 原発テロという素材の良さを活かせずに並の料理になった印象。だが、バカ映画としてはツッコミどころが満載で楽しかった。ヤバすぎるヘリのセキュリティ、政府・警察・自衛隊の説得力無い対応、無理に無理を重ねる救出劇、実は一切役に立ってない主人公。実行犯判明を皮切りに爆発・カーアクション・バトルと拍車のかかる無駄演出も素晴らしい。

カリフォルニア・ダウン
 震災シーンの絵作りが物凄いので飽きないが、教授の地震予知も主役父娘の防災知識も活かされない偶然ラッシュの確変継続に苦笑。周囲の人と別行動とし、死に直面させる事を避けた妙に淡泊な展開も不満。まあ、初手から高層ビル崩壊レベルだと、何処に避難すべきか、そもそも避難可能なのか謎だがな。

ピクセル
 一芸ボンクラ活躍系ありがちコメディ。あのゲーム達にストライクな世代的には漂う空気感が懐かしく、ギャグもそこそこ楽しめた。ドット絵のエンドロールも素敵。しかし、コレじゃない感も強い。かつての天才ゲーマーと関係ない攻略法にしてどうするのか。

進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド』
 明らかとなる設定の数々やガンダム的三つ巴の様相からして元の脚本はこの尺じゃ畳めない大風呂敷だったと推測。それを大胆にカットしたら、辻褄合わず伏線拾えず誰が壁を塞ぎたくて誰が壊したいのかすら整理出来てないという無様なことに。映画2本分の予算は殆ど前編で使い切ったらしく、特撮少なめで普通の巨人がモブキャラ同然なのも酷い。

アントマン
 もっとコメディ寄りかと思ったら、意外に真っ当な駄目パパ更正モノだった。拡大縮小アクションやアリ軍団の見せ方が巧く、格好良くも程良くコミカル。ただ、『アベンジャーズ』関連ネタがこの緩く小ぢんまりな世界観と合わないのでかなり邪魔臭い。あと、ヒーロー物なのにキャストの実年齢が全体にかなり高目なのは謎。

Amazon Prime Musicがおっさんホイホイな件

 ちょっと前はテイラー・スイフトやマルーン5など今時の洋楽アーチストが少々あるものの、和物はクリス・ハートつるの剛士中森明菜坂本冬美などのカバー集が妙に目立つ微妙ラインナップだったAmazon Prime Music。その後、絢香とかきゃりーぱみゅぱみゅとかのベスト盤が加わっていったので若者向けに整備されていくものと思っていたのだが・・・。
 ここに来て80年代が異様に充実してきたよ。洋楽はマイケル・ジャクソンビリー・ジョエルブルース・スプリングスティーンなど。フュージョンでスクエアやYMO。そして日本人なら松田聖子佐野元春レベッカ岡村孝子などのフルアルバムがわんさか。中古CD屋のワゴン漁っても揃わないレベルで追加されてる。
 アップルやラインやグーグルの音楽配信がどんなかは知らないが、おっさんだとAmazon Primeのおまけでもかなり満足できると思う。他にプライムビデオもあるし。

観た映画(2015年4〜6月公開)

 今回は結構早く消化できた。珍しく邦画のが多い。

『ジヌよさらば 〜かむろば村へ〜』
 松尾スズキ監督のカラーがかなりしっかり出てるので好き嫌いは分かれそうだけど、笑いどころは多かった。ひと癖もふた癖もある登場人物がそれぞれに面白いし、松たか子中村優子は色っぽく、そして二階堂ふみは濃厚キスが凄かった。

『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』
 中盤ぐらいまではがっつりコメディなんだけど段々シリアスでヘビーな話になって難解に終わるし、映像情報も密度が濃いので面白いけど非常に疲れる映画。技術的には、カットを繋げたままのように見せつつ数日間の物語を成立させたアイデアに関心。

『ソロモンの偽証 後篇・裁判』
 つまらなくは無いが、前篇で提示した問題が収束する度にモヤッとする。「電気屋の親父の記憶が曖昧だった場合、この計画は破綻するんじゃ?」とか。でも、それが「中学生の考えた事だから」で全部すまされる設定がむかつく。

『カイト/KITE』
 原作の18禁アニメは未見だが、海外でカルト的人気と言われるアクション&世界観が死んでしまったのは判る。何故に身体能力ゼロな娘を主役に置いたのか。

『セッション』
 スポ根モノの亜流だけど、超高速ドラム至上主義の鬼教師も嫌な奴なら、対する主人公も負けず劣らずのクズというのが最高。終盤怒濤のハイテンションが圧巻。しかし、ジャズ・ドラマーで一旗揚げようと思って名門音楽学校に進むって普通なのかね、今のアメリカは。

寄生獣 完結編』
 原作未読。説明台詞だらけで緊迫感薄めのバカっぽい演出は気になるが、ストーリーは綺麗に纏まってて面白い。アクション・CG・ゴア描写に橋本愛の濡れ場まで、邦画にしては良く頑張ってる。

『王妃の館』
 水谷豊の奇抜な服装が売りのフランス観光コメディ。原作の時点で設定に無理があったのに果敢に実写化に挑み見事轟沈。現地ロケなのに何故カツラ被って西洋人な劇中劇を?

THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』
 押井守なのでレイバーは殆ど動かない。退屈な会話が続き登場人物の行動原理が理解不能なのも通常運転。それらを含めて、ベースとなったアニメ『劇パト2』のハードな世界観を求められる水準でリアルに再現してると思う。しかし、わずか半年足らずでディレクターズカット版を劇場で公開なんて客を舐めたまねをするのは許しがたい。

映画 ビリギャル
 実際はどーか知らんが、好きなことを我慢して猛勉強の末に合格なんて話よりも、ギャルのまま受かる話が観たかった。あと、事実はどーあれ、母ちゃんパート増やし妹の学費を崩し親戚から借金してまでの塾通いなのに志望は独立前提の私大ばかりってどーよ。けど、若年向け青春映画としてはソツない作品なのだった。

『フォーカス』
 クライム・サスペンスのつもりで観たらロマコメだった。まあ、詐欺師の映画としてはミスリードが下手過ぎるのが辛いとこなので、セクシー女優マーゴット・ロビーを堪能という方向性は間違いじゃ無いと思う。

駆込み女と駆出し男
 早口で台詞が聞き取れない&幕末の言葉なので意味不明多発。挙げ句にエピソード鮨詰めにぶつ切り編集に謎構成と来るのだが、その耳心地良い台詞と軽快なタッチが人情時代劇にマッチしてて、話が面白い上に割ときっちり正当派な満足感がある不思議な作品。画面作りのメリハリが格別に巧い。

『ゼロの未来』
 テリー・ギリアム自らが縮小再生産した『未来世紀ブラジル』。つまり、さっぱりワケわからんメタファーづくめの社会風刺がだらだら続く。奔放でエロくてとてもキュートなメラニー・ティエリーが一服の清涼剤。

明烏
 元は落語の『明烏』を題材とした舞台劇らしいが、他の廓噺も拝借して構成されてる辺りは『幕末太陽傳』っぽい。オチはもっと捻って欲しかったけど、良くも悪くも福田雄一ワールド全開で楽しめた。けど、無粋を承知で言えば深夜ドラマで充分な作品。

『チャッピー』
 残虐描写を監督承諾の元でカットしたと配給が嘘ついたり、そのシーンが凄まじく不自然な処理だったりと、色々とケチがついたがそれなりに楽しめる。頭脳は子供な警官ロボ「チャッピー」が超可愛いし、頭弱い系で出たとこ任せな登場人物達も面白いんだけど、この監督は『第9地区』も『エリジウム』も全部同じようなオチになるのが・・・。

ピッチ・パーフェクト
 大学のア・カペラ部を題材にしたアメリカン・ガールズ・コメディ。あっちの学園モノ特有のダメダメで下品でイカれた連中が色々揉めて、最終的に各々の個性を合わせたら恋も友情もハッピーという、どこまでも予定調和な映画だけど歌と踊りはかなり魅せる。

新宿スワン
 園子温にしてはバイオレンス描写が普通でガッカリ。俳優さんは総じて頑張ってるんだが脚本が酷すぎる。綾野剛が嬢達に感謝されるに足る奮闘部分は描写されず、むしろフォローもリサーチも努力不足に見える。山田孝之の動きは裏社会的に即詰みの悪手ばかり。

トゥモローランド
 そばかすっ娘がキュート、それだけの映画。トゥモローランドに行くまでは面白かったんだけど、終盤は大味展開な上に説明台詞だらけ。悪役が何をしたいのか全然理解できない。

海街diary
 三姉妹と腹違いの末妹の共棲の話なんだが、一方で色々な別れを扱った物語でもあったのが意外。主演級若手女優4人に加え豪華すぎる脇役てんこ盛りの割に、個々がバランス良く配置された丁寧な作りの良作だった。しかも、広瀬すずのアイドル映画としても成立してるのが凄い。ただ、「このナイスバディな三姉妹の実母って誰よ?」と思って観てたら登場したのが大竹しのぶで爆笑した。

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
 メル・ギブソンの不在も30年間のブランクも全く問題にならなかった奇跡的な続編。極上爆音上映で観たことは一生の自慢だ。誰もがオールタイムベスト級の作品として語ってるので多くは述べんが、何もかもが狂っている世界観とぎっしり詰まった馬鹿アイデアに脱帽。あらゆるカーチェイスの手本が此処にはある。唯一の問題点は鑑賞後のドライブに色々と支障を来すことだな。

『ラブ&ピース』
 長谷川博己の怪演は一見楽しげなのだが、無名時代の園子温の鬱屈が赤裸々にぶつけられ過ぎで笑えない。冗長で退屈なファンタジー要素もキツイ。でも、最後にRCサクセションの「スローバラード」が力技を極める。あと、怪獣特撮シーンは無駄に本格的。

観た映画(2015年1〜3月公開)

 5月にして今年初めてのエントリー。色々あって観賞ペースは最近だだ下がりなのよね。今回は短評も付けてみた。

ビッグ・アイズ
 実際に起きた一大スキャンダルが題材なので、ファンタジックなティム・バートン節は封印。事件の顛末自体は興味深かったが、屑亭主の商才が無ければヒロインの絵は世に出てないと思うのであまり感情移入は出来ず。クリストフ・ヴァルツの爆笑一人裁判をもっと見たかった。

『ANNIE/アニー』
 悪評渦巻くミュージカル『アニー』の現代版リメイクだが、今風の楽曲アレンジやギャグ多めの脚色は言うほど悪くない。ちゃんとハッピーな気持ちになる。けど、かなり踊れそうな孤児達に見せ場が殆ど無かったり色々惜しい。

『はじまりのうた』
 「キーラ・ナイトレイってこんなに魅力的だったっけ?」と驚いた音楽映画。ミュージック・シーンは本当にどれも楽しそうで画もお洒落。ストーリーはベタだけど素敵で、何より回想多めの構成がとても巧い。楽曲も思わずサントラ買っちゃうほど好み。

『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』
 エロスもロマンスも低空飛行だが欧米的な展開が意外に面白かった。サディスティックな性癖の金持ちイケメンが惚れた弱みでノーマルに寄せられるオチと決め打ちで観てたので唐突な幕切れには爆笑。ここで終わっておけば画期的だと思う。

フォックスキャッチャー
 実話ベースではあるが時系列や事件背景などはかなり弄られてるらしいし、偏った見解による脚色も気に入らない。コメディ俳優スティーブ・カレルのシリアスで不気味な演技は一見の価値あり。

『D坂の殺人事件』
 緊縛が売りの低予算映画なんだから情事と心情描写に特化しても良いと思うんだけど、中途半端にミステリーを維持して墓穴。『屋根裏の散歩者』と混ぜた意味もわからない。更に、ヒロインがエロくも美しくも撮れて無いのが致命的。

アメリカン・スナイパー
 淡々と描いてグサッとくる安定のイーストウッド節で贈る伝説スナイパーの実話映画。手に汗握る戦争アクション、特に緊迫の狙撃シーンが圧巻。決して戦争賛美じゃない事も普通に伝わる。ただ、メリケンさんは結構な割合で「兵士か壊れていく」→「無人化」って発想に至るから、それはそれでおっかない。

『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』
 邦題の所為で観る気が失せてたが、中身は元気が出るロードムービーだった。とにかく爽快感が堪らない。Twitterの使い方が巧いのもグッド。そして、キューバ風サンドイッチのアレンジメニューが出る度にめちゃくちゃ美味そうで困る。

『ソロモンの偽証 前篇・事件』
 ニキビの女の子を中心にほぼ無名の子役達の熱演が素晴らしい。だが、「真実を知りたいから裁判をする」という謎の論法からして後篇は期待薄。

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密
 対独戦争を勝利に導いたエニグマ解読チームの中心人物を戦前・戦中・戦後のエピソードを複雑に織り交ぜて描く。観客は天才の変人ぶりに快哉を叫び、偉業達成も任務の性格上秘匿されざるを得ないことに嘆き、さらに意外な秘密から予想外の結末を突きつけられる。とにかく脚本が非常に練られており史実なのにもの凄くドラマチックな傑作。

『ジュピター』
 ウォシャウスキー監督&スペオペって事でオイラと相性悪いと予感してたが間違いじゃ無かった。アクションに工夫がなさ過ぎるし、設定も矛盾だらけでいらつく。ストーリーは「ヒロイン大ピンチ」→「間一髪」の予定調和を3回も繰り返す。


 たった11作なのに何故か似た切り口の映画が集まってる。伝記物が4作、音楽物が2作、SM物が2作、それからSNSネタで『アニー』と『シェフ』、ダメ親父再生で『はじまりのうた』と『シェフ』が被ってたり。ついでに『フィフティ・・・』と『ジュピター』がラジー賞繋がりか。

さらば2015年

 マーティが過去から乗り込んできて使徒が襲来した2015年もまもなく終わり。茨城の工場が鬼怒川氾濫で水没し東京勤めの此方にも少なからずしわ寄せが及んだりはしたものの、それ以外は公私ともに可も無く不可も無くで終えられる事に感謝。オイラの心情は「植物のような平穏な人生を送る事」だからな。
 そして映画バカ的には、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』、『ターミネーター:新起動/ジェニシス』、『ジュラシック・ワールド』、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』、そしてロッキー・シリーズの『クリード チャンプを継ぐ男』と、オイラが愛してやまない作品達の続編がどっさり並んだ年として記憶される。しかも、名作を辱めるような酷いのが1本も無い。うん、良い一年だった。
 それでは皆様、良いお年を。

観た映画(2014年10〜12月公開)

 ここ数日で頑張って何とか年末に間に合わせたぜ。第4四半期分16作追加で2014年に日本公開を迎えた映画は計60作の鑑賞となった。悪くない数字だ。なお、今回10本も追加したお陰でかなり盛り返したが、それでも邦画は24作鑑賞と全体の4割にとどまった。

蜩ノ記
アンダー・ザ・スキン 種の捕食
まほろ駅前狂騒曲
イコライザー
花宵道中
神さまの言うとおり
紙の月
インターステラー
フューリー
寄生獣
宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟
ゴーン・ガール
バンクーバーの朝日
ベイマックス
百円の恋
海月姫


 終盤のトンデモ批判などものともしないミニチュア映像の金字塔『インターステラー』に、女の怖さにぐったりするもヒッチコック映画的面白さの『ゴーン・ガール』、日本リスペクトが気持ちいい『ベイマックス』。この辺はベタでもお勧め。あと、話は普通だけど安藤サクラの熱演が光るダメ女版ロッキー『百円の恋』も好きだ。

 んで厳しかった方。ぶっちゃけ安達祐実の裸目当て鑑賞だけど本当にそれ以外に何も無い『花宵道中』、逆に『紙の月』は濡れ場も含め不倫パートが薄っぺらい故に転落の経緯が腑に落ちず話自体も退屈。『神さま・・・』は序盤だけ盛り上げて残りは惰性で突っ走る駄目な時の三池崇史の典型。『ヤマト』の完全新作はコレジャナイ感満載なんだけどスタートレックとしては面白かった。