今年も一年の締めはスター・ウォーズ

 観てきた。批評家大絶賛・ファン大激怒と噂の『最後のジェダイ』だが、私的には別に怒らないけど呆れた。バカすぎるだろ、この脚本。いや、面白かったけどさ。
 とにかく、ファースト・オーダーはうっかりな人ばかりでレジスタンスも無謀で身勝手で行き当たりばったりでいらつく。けど、新キャラのポーグとケアテイカーのグッズは色々買っちゃいそうだ。あざといぞ、ディズニー!

 そんな微妙な気分のまま間もなく新年を迎えるわけですが、来年も宜しくお願いします。

観た映画(2016年7〜9月公開)


インデペンデンス・デイ:リサージェンス
 「バカっぽさ」と「燃え」が前作の肝だったのに、今回は人間側もエイリアン側も致命的なバカに成り下がりビックリするほど燃えないドラマを展開。やりすぎ感たっぷりの超巨大円盤の割に、被害規模やミッション難易度はスケールダウンしてて呆れる。


『シング・ストリート 未来へのうた』
 音楽映画の申し子ジョン・カーニー監督が贈る80年代青春ドラマ。ニューロマンティック全盛の時代に、素人バンドがその影響を受けながら成長していく感じを伝えるオリジナル楽曲群がとにかく粒ぞろい。映像もあの時代の再現度が高いし、不遇な少年少女達の理想と現実のギャップが巧く表現されてて楽しい。無名俳優ばかりだけどバンドメンバーの好感度はマックスで指南役の兄貴も良かった。


『ロスト・バケーション』
 浅瀬の小さな岩礁で展開するソリッドシチュエーションな低予算サメ映画。無意味なヌードやくだらないギャグを排除し、矢継ぎ早にイベントをぶち込んで緊張感を維持し続けるストイックさに脱帽する。オチが強引だったりはするけど。カモメがとてもいい味を出してて素敵。それと、テキサスに海があることを学んだ。


シン・ゴジラ
 ハイテンポで字幕情報だらけの実に庵野監督らしい作品なので特撮マニア層が熱狂するのは当然だが、東日本大震災という共通体験を投影した暴れぶりに、あの時よりはちょっと頼もしい政府関係者が底力を発揮する構成で一般向けのカタルシスを生むとは。あの記憶が薄れてしまえば解けてしまう魔法だけど、本当スゴイものを観た。なお、浮きっぷりが物議を醸す石原さとみだが、個人的にはスピンオフが観たいぐらい好きなキャラだ。


ゴーストバスターズ』(2016版)
 残念ながらギャグがツボに嵌まらず。ワンタンのくだりとか謎過ぎる。『サタデー・ナイト・ライブ』とかに詳しい人は解るのかな?あと、美味しい所が金髪と受付に片寄ってて他のキャラが妙に薄いのが不満。オリジナルを知らなくても楽しめるのはグッド。


君の名は。
 ぶっちゃけ前半が『転校生』で後半は『時かけ』だし、記憶が消えて文字情報でやり取りって設定が途中で破棄され、スマホ時代にゃ不自然なご都合主義もかなり目立つんだけど、郷愁と男女のすれ違いがお家芸新海誠監督らしい青春映画に仕上がってて面白かった。最後は電車内で互いに気づいて走り出す辺りで切ってくれた方が好みだけども。


『後妻業の女』
 連続不審死を題材にした、大竹しのぶ無双のピカレスク・コメディ。旦那殺しまくって罪悪感の欠片もない女って役柄なのに物凄く痛快に魅せちゃうのは流石の一言。抱腹絶倒とはいかないが軽妙でブラックな笑いのバランスも良かった。ただ、笑福亭鶴瓶の挿話が中途半端だったり、物語の着地点がぼやけ気味なのが残念。


『セルフレス/覚醒した記憶』
 デザイナーの石岡瑛子さんが亡くなった為「選ぶ題材が変わった」らしいターセム監督だが、まさか幻想的映像が鳴りを潜めたB級アクションになるとは。まあ、話はド直球だけど美しい画は健在で一安心。問題は、ライアン・レイノルズが『デッドプール』でも似た設定をやってて、そっちのイメージが強過ぎ。中身がベン・キングスレーには見えない。


スーサイド・スクワッド
 マーゴット・ロビー演じるハーレイ・クインは最高だが、それ以外はこれじゃない感が満載。全体にクドいし編集が下手すぎる。予告のノリは素晴らしかったし、垣間見えるジョーカーとハーレイの馴れ初めは単独映画で成り立つ魅力を放ってるのに。


『怒り』
 本当に気持ちを開いているのか掴みきれない3人の男と、人を信じる難しさに揺れる周囲の人々。人物像の説得力が重要な作品であり、超豪華俳優陣は伊達じゃ無く、見応えがあった。特に妻夫木聡×綾野剛による同性愛描写のインパクトは強烈。不満は偏見の助長に近い形で在日米軍を絡めたこと。


ハドソン川の奇跡
 トラブル発生から着水まで僅か3分・救助完了まででも30分弱で誰もが顛末を知ってるという難儀なネタなのに、事故そのものは淡々と描きつつ緊迫感ある映画にしてしまうイーストウッド監督の手腕に感服。疑惑の機長として糾弾される法廷劇をクライマックスに置く構成が見事だった。ただ、事故調査委がこんな低レベルなわけないとは思う。

観た映画(2016年4〜6月公開)

『ルーム』
 着眼点が面白くキャスティングも完璧。実際オスカーでは主演女優賞を獲ったわけだけど、それなら子役の方も受賞させるべきだと思った。監禁部屋が世界の全てな前半と、外界を知り惑い適応していく後半の少年を実に自然に演じて、この映画のコンセプトを成立させている。子供感覚のサイズ感を再現するカメラワークも見事。


『ボーダーライン』
 えぐい死体がわんさかな麻薬カルテルに挑む女捜査官物を想定してたが全然違って戦争物に近かった。緊迫感が半端ない。ただ、主人公が蚊帳の外のまま任務が進む構成には戸惑った。国境線のメキシコ側は本当に首無し全裸死体とか吊った無法地帯なんだろか?


『スポットライト 世紀のスクープ』
 カトリック教会による少年性的虐待事件の隠蔽が題材だが、信仰に疎い日本人としてはスキャンダルのインパクトが本質的にちょっと解らない。けど、極力バイオレンスやサスペンスな描写を抑え、淡々と取材と会議が繰り返される地味な話で退屈させないのは偉い。


レヴェナント:蘇えりし者
 とにかく超広角レンズで撮ったマジックアワーの大自然映像が凄い。凍土を匍匐前進しノースタントで水落ち崖落ち、生肉囓りや動物解体まで体を張ったレオ様も偉い。特に熊にボコボコにされるシーンは圧倒される。でも、驚異的すぎる回復力は実際にあった話が元ネタなだけに微妙。結末も感動的とは言い難い。


アイアムアヒーロー
 日本の予算規模で、ここまでスケール感のあるパニックホラーが撮れるんだと感心しきり。話自体は非常にフォーマットに則ったものなんだけど随所で日本化されてて新鮮だし、感染者の造形も珍しいぐらいに怖い。よくR-15で済んだと思う人体破壊描写もたっぷり。搭乗者瀕死レベルのクラッシュは余計だが、日本じゃ規制で難しい公道カーアクションまである。特に大泉洋覚悟完了から猟銃無双のシークエンスは圧巻。


ズートピア
 「差別と偏見」がテーマの作品は数あれど、簡単にはいかない事をここまで前面に押し出すのは珍しい。被害者にも加害者にも成り得たり善意が不寛容を生んだり、とかく単純化できないナーバスな問題をキッズに楽しく教えてくれるディズニー恐るべし。しかも『ブレイキング・バッド』な羊とか、大人専用ネタも挟みながら。普通にバディ刑事モノとしても小粋だし、伏線がきっちり回収される様も気持ちいい。続編を期待。


テラフォーマーズ
 無理な企画も断らないと定評の三池崇史監督がアクション期待薄なキャストと予算なりのCGを駆使したビジネスライクな作品。原作でもあんなキャラなのか小栗旬が頑張り過ぎてるのか超気になる。だが悪ノリはその程度で、それなりに纏まってて逆に面白くない。


ちはやふる -下の句-』
 面白いが前編からはやや落ちの出来栄え。新キャラの松岡茉優はちゃんと孤高な設定を体現してるから、これは脚本の問題。過去の因縁も無く色恋沙汰にも団体戦にも関係ないクイーンをラスボスにする流れに無理があり過ぎる。とは言えクライマックスは充分に盛り上がる。ここに伝統のデータや吹奏楽部問題を絡めて欲しかったけれども。


シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ
 折角『アベンジャーズ2』の最後で整理したのに、また超人が増えてる。けど、それぞれの立場やキャラが明示されるのでアクションは見やすかった。お話は「米国単独か、国連主導か」みたいな対立なのだが、紛争解決の負の側面に正面から向き合い安易な和解に逃げずに上手く纏めてた。しかし、回を重ねるごとに色々ストレスを背負い込むアイアンマンが不憫過ぎる。


『64-ロクヨン-前編』
 演技上手い人わんさかだが群像劇じゃなくて佐藤浩市がほぼ出ずっぱりなのが意外だった。時効間近なロクヨン事件の過去と現在、県警キャリア組と刑事部の軋轢、広報室と記者クラブとの丁々発止、主人公の家庭の問題と、複雑な同時進行が興味を誘い退屈はしなかった。これが全部前フリだとは・・・。


殿、利息でござる!
 元ネタが住職の遺した伝記だから、本格時代劇で忠実に描くと極めて道徳的な美談になったと思うが、敢えてコメディ・タッチを用いたことが功を奏し、程良い人情話になっている。展開の妙も見事。話題の羽生結弦は意外に台詞が多かったが無難にこなし、颯爽とおいしい所を持って行った。コイツが財政難の元凶なのに。


世界から猫が消えたなら
 映画好きで猫好きとしては色々とダメージ大な設定でしんみりだが、そういった補正を抜けば法則性の無い妄想ファンタジーに過ぎない。全体に色々とフォローが足りず構成がイマイチ。特にアルゼンチンのシーンは邪魔。でも、濱田岳絡みのエピは好きだ。


『HK/変態仮面 アブノーマル・クライシス』
 顔を出せなくとも肉体美と変態的動作で作品を成立させる鈴木亮平の頑張りには頭が下がる。けど、漫画と違い生々しくて生理的嫌悪感が勝るのが困る。今回はPG-12を外れてるが天狗の面とかギリギリ過ぎ。『スパイダーマン』ネタに詳しくない事もあり時々眠かったが、無駄に格好いいアクションとバカバカしい笑いも結構あった。


ヒメアノ〜ル
 年間ベスト等での高評価を受けて内容もキャストも全く知らずに観賞。濱田岳ムロツヨシのダメ人間コメディにゲラゲラ笑ってたら、遅めのタイトルが来て主演がV6の人と判り当惑。しかも、そこからトーンがガラッと変わって非常にバイオレントなサスペンスに。とにかく森田剛がヤバイ。笑いと併走しつつの凶悪描写でとことん嫌な気持ちに落としてくる監督のセンスも凄いと思って調べたら『さんかく』を撮った人で、これは納得。


デッドプール
 言葉は下品で戦闘は血みどろバイオレンス、マスクに妙な愛嬌があり、ちょいちょい観客に語りかけたりのおふざけも超楽しい。けど、『X-MEN』シリーズの知識に疎い&米国ポップカルチャーの細かいギャグが謎な為イマイチ乗り切れず。もっとハチャメチャなのかと思ったら意外に真面目なドラマだったし。


『サウスポー』
 親権絡み家族愛でどん底から這い上がる、いかにも米国なボクシング映画。前年『ナイトクローラー』でゲスなサイコ野郎を演じてたジェイク・ギレンホールが肉体改造で別人になってて見事。ドラマ的には「そこ、さらっと流しちゃうの?」なエピソードが多く小さくまとまった感あるが、王道サクセスはやっぱ燃える。


『シークレット・アイズ』
 豪華キャストのハリウッド・リメイク。元ネタの『瞳の奥の秘密』は未見。捜査側も隠蔽側も容疑者の行動も揃って強引過ぎる事にたびたび呆れつつも、事件自体は予想外の方向に収束し地味に面白かった。ただ、中途半端な恋愛要素が邪魔臭い。


『64-ロクヨン-後編』
 前編を盛り上げすぎた弊害が目立つ。主軸となる誘拐事件が稚拙すぎて前編要素を背負いきれない。特に、主人公を広報官に据えて本筋と全く絡まないマスコミとのゴタゴタに時間を割いた意図が不明。「犯人を昭和に戻す」と更に掛け金を上積みするが、見合うクライマックスもカタルシスも無かった。


『二ツ星の料理人』
 批評家の影に不安定なメンタルを露呈し独裁完璧主義で厨房を混沌化させるシェフが、やがて仲間を信じて平常心で望むという王道物なのだが、複雑な過去の因縁や新旧調理法問題を中途半端に盛り込み過ぎ。『七人の侍』を期待させて個々の見せ場が無いのも残念。


エクス・マキナ
 アンドロイド・エヴァのデザインとキャラが秀逸。これはカルト的に盛り上がるのも肯ける。話も近未来SFサスペンスで面白かった。なんか名言の引用やら意味ありげで哲学的な会話やらは村上春樹を思わせるし、目の保養も結構ある。ただ、山奥の別荘でIT社長が独りで製作って設定と、その社長の意表を突くダンスシーンが底抜けにバカっぽい。


10 クローバーフィールド・レーン
 ネタバレが過ぎる日本の宣伝は勿論、わざわざ『クローバーフィールド』の看板を持ってきた制作陣も間違ってると思う。何の情報も無しに監禁モノの密室サスペンスとして観た方が絶対に面白いよ、これは。『ミステリーゾーン』的なオチにアレルギー起こす観客が多いだろうとも。


帰ってきたヒトラー
 風刺コメディかと思ったら意外に社会派だった。日本の現状と被る点も多く興味深い。ドイツでヒトラーってもっとタブー視されてると思ってたけど、総統コスプレでドキュメンタリー的に撮るのも有りなら彼の主張にも一理あるみたいな内容も許容されてて驚く。無茶な移民受入や格差問題に喘ぐ国民の不満が背景にあるにしても過激な映画だ。


クリーピー 偽りの隣人』
 話自体は途方も無く粗だらけなんだが、ミスリードする気のない副題から察するに其処を丁寧にやる気は全くないんだろうな。誰も彼もがなんだか危うい人な演出が生み出す妙な緊張感と、それを超越して完全に笑わせに来てる香川照之の図抜けたサイコっぷりが全て。それでいて怖さ全開なんだから恐れ入る。


『日本で一番悪い奴ら』
 スコセッシ監督を思わせるコミカルでエロくてヤクザな実録警官汚職物。しかも古き良き東映チック。ノルマ達成のために銃を買い漁る警察の本末転倒ぶりには目眩を覚えるが、チンピラたちの清々しいバカっぷりと疾走感が心地よい。ただ、ピエール瀧の出番が意外に少なくて残念。そして脱げる女優さんがあと何人か欲しかった。

観た映画(2016年1〜3月公開)

ブリッジ・オブ・スパイ
 ソ連のスパイの助命と後の捕虜交換に尽力した弁護士のアメリカ歴史秘話。脚本はコーエン兄弟だがコメディ色は薄く、スピルバーグ監督の人権尊重な姿勢が強いサスペンス。流石の完成度に唸らされる。ハードボイルドな主人公もいいし、速成されるベルリンの壁とか、当時のソ連東ドイツの微妙な関係とか、色々と興味深かった。


『イット・フォローズ』
 不幸の手紙形式の呪いに物理攻撃で対抗ってのが斬新な全米大ヒットのホラー。姿を変え憑いてくる設定のおかげで緊張感は半端ないんだけども、噂ほど怖くは感じなかった。薄気味悪く、なにかの暗喩や象徴らしきものが多々あるが、結局なんだかよくわからない。


『白鯨との闘い』
 小説『白鯨』の元になった実話の映画化って事なのだが、予想ほど鯨とのバトルに時間を割かないというか、ぶっちゃけ一方的に蹂躙される展開で驚いた。けど白鯨描写はド迫力で劇場で観なかったことを後悔。たぶん実際より美談にしてるんだろうけど、対立から極限状況を経て友情を描く人間ドラマもちょっとビターなところが好き。


ザ・ウォーク
 今は亡きNYのツインタワーでゲリラ綱渡りという実話の映画化。3D映画としての意味が凄くある作品で、ロバート・ゼメキスのCG技術に惜しみない拍手を贈る。映像がスリリングなのは勿論なのだが、決行までのドラマ部分もテンポ良く、傲慢な主人公なのに不快感は薄目。劇伴がジャズなので『ルパン三世』気分で楽しんだ。最後の切なさも良い。


サウルの息子
 ホロコーストが題材だからキツイ映画だろうと覚悟して観たものの、想像以上に息苦しくて困った。物凄くテクニカルな撮影で観客の視線をコントロールし地獄の労役を疑似体験させるのが凄い。ただ、ユダヤ教の埋葬の意味合いを理解してない事もあり、主人公の傍迷惑な一連の行動が謎だった。


ブラック・スキャンダル
 この組織をモデルに『ディパーテッド』が作られてる事もあり、新鮮味の無い展開でイマイチ盛り上がらない。いつキレるかわからない禿げ親父を熱演したジョニー・デップには悪いけど。序盤の会話でさらっと流されるアルカトラズでのLSD実験の話の方が気になった。あと、裏社会の首領にしては質素に暮らしてた理由も知りたい。


『オデッセイ』
 専門知識だらけでしっかり理解するのは大変なのだが、ざっくり観ても話は面白い。練られた科学考証による地道な生存努力と、ダイナミックでパワフルな無理筋展開が平然と混在してても何故か許せてしまう。火星でひとりぼっちのサバイバルな話なのに70年代ディスコヒットでノリノリになる不思議な作品。惜しむらくは内容とシンクロしてるらしい歌詞に字幕がついてない。


『キャロル』
 中年マダムに一目惚れな若い娘の感性も理解不能だし、当時のアメリカにおける同性愛の禁忌の度合いも量りかねるが、とにかく画が格好良い。作り込まれた50年代風の映像に、あらゆる仕草が男前なケイト・ブランシェットが映える。ルーニー・マーラも五割増しで可愛い。二人の視線に釘付けだった。


スティーブ・ジョブズ
 ジョブズの栄光と挫折の繰り返しな人生については色々と既知なので、「ダニー・ボイル監督だから一応」程度の観賞だったのだが、全然想像と違う切り口で面白かった。彼の突き抜け過ぎた先見性と残念で失礼なお人柄を、Mac・NeXT・iMacの新製品発表会直前の口論だけで見事に伝える構成が斬新。ただ、終着点がもの凄く嘘っぽい。


『SHERLOCK/シャーロック 忌まわしき花嫁』
 「現代版ドラマのキャストでヴィクトリア時代のホームズを」という外伝作と思いきや、がっつりシーズン3の続きだった。よってシリーズ入門者は先に観ちゃ駄目。ファンとしては楽しいお遊びが豊富だが、ミステリー自体にはモヤモヤ感が強い。


『ザ・ブリザード
 救命艇パートの臨場感はアトラクションとして楽しいし、真っ二つに折れたタンカーの壊れっぷりとクルー達の必死の対応も燃えるんだが、うざいヒロインの退屈な陸パートがかなりの部分を占めるのが・・・。羅針盤ロストも定員云々も奇蹟で済まされるのが腑に落ちないが、実話なんだから仕方ないと自分に言い聞かせる。


ヘイトフル・エイト
 安定のタランティーノ節な西部劇で陰惨かつ悪趣味だが面白い。今回は密室ミステリーって触れ込みなので、いつもの退屈で長い無駄話っぽい所も緊張を強いられ超疲れるのだが、最終的にはその部分の役者さんの細かい演技をもう一度確認したくなる映画だった。ミステリーって宣伝は嘘で推理は成り立たないけど。


マリーゴールド・ホテル 幸せへの第二章』
 高齢キャストの再集結だけでも嬉しいし、それぞれのイケてる老後にハッピー気分の手堅い続編。けど、前作が綺麗に纏まってた故に蛇足感は否めない。今回加わるリチャード・ギアのお話が薄っぺらいのも気になる。煩わしさパワーアップなインドの若造だが、パワフルなダンスは一見の価値あり。


セーラー服と機関銃 -卒業-』
 往年の角川映画ファン的には薬師丸版の相米慎二監督を強く意識した作風や長谷川博己の怪演など楽しめる部分もある。謎演出や超展開含めて。けど、ただでさえ小柄な橋本環奈にサイズ感のおかしな服着せて引きで撮っちゃ、お子ちゃまにしか見えない。


『エヴェレスト 神々の山嶺
 阿部寛はじめ多くは実在の登山家がモチーフなので問題ないが、創作キャラっぽい岡田准一尾野真千子の造形が酷く行動原理がさっぱり。設定上は『エベレスト3D』より数段ハードな山行の筈なのに、さほど辛そうに見えないのは演出の差か予算の差か。


ちはやふる -上の句-』
 とにかく若手役者が粒ぞろい。キャラ立ちから体技に至るまで、しっかりとした演出が素晴らしい。脚本も百人一首とストーリーをシンクロさせたり、わかりやすく面白く競技かるたの世界を伝える。特にメインが野村周平の成長物語なのが驚き。原作は知らんが、集客でも役作りでも圧倒的に頑張ってる広瀬すずを敢えて中心に置かない構成は勇気が要ると思う。前編のみできっちり話が成り立つのも偉い。


僕だけがいない街
 出来の悪い『バタフライ・エフェクト』。歴史改変型のタイムリープ物は整合性が命なのに、終盤の展開は全く辻褄が合わない。犠牲者も殆ど減ってない。挙げ句に、最後の対決に母親も有村架純も蚊帳の外。途中までは面白く、子役の演技も素晴らしかったのに。

HappyNewYear2017

 『君の名は』の劇場鑑賞をサクッとスルーするような映画ファンの風上にも置けない私ですが、今年も映画を観ることを生きがいにゆるゆる暮らしていく所存であります。
 本年もよろしくお願いいたします。

観た映画(2015年10〜12月公開)

 今年もぎりぎりで要チェックと思った昨年公開映画を見終える。今回は13作と少な目。

バクマン。
 原作全然知らないけど、たぶん設定をかなり削って展開を物凄く速くしてて、少年ジャンプ的漫画家青春譜が綺麗に纏まってる。クオリティの高い原稿にCGバトルの演出や凝ったエンドクレジットも素晴らしい。ヒロインの絵もそっくりで、作者サイドの全面協力に頭が下がる。漫画製作におけるツッコミ所の多さもこの作品では逆に魅力。

『パパが遺した物語』
 先ず、邦題でネタバレする配給会社は許しがたい。あと、父親の小説がトラウマ克服に繋がるっぽいミスリードな予告編も非道い。子役の可愛いさと挿入歌『Close To You』の力で感動的な雰囲気を醸すけど、それよりもメンヘラ女が「愛する人を失う恐怖」と向き合うネガティブなお話のストレスが勝る。

ピッチ・パーフェクト2』
 世界的に大ヒットしたのは本作の方なのだが、恋もチームワークも王道パターンはほぼ前作でやり尽くした感があり、退屈はしないがドラマ的にはあまり盛り上がらない。ギャグも冒頭の一発は強烈だけど次第に尻すぼみとなる。だけど、歌パートのパフォーマンスは文句なしの見応え。

マイ・インターン
 アラサーの敏腕女社長に降って湧いた七十歳の部下って設定はあまり活かされないが、仕事に家庭に色々と悩む女性を適切な助言で老紳士が優しく支えるデトックス系コメディとしては良い雰囲気。その健全で誠実なジジイがよりによってデ・ニーロってのも笑える。アン・ハサウェイの色々なファッションも楽しい。

ギャラクシー街道
 長年培われてきた三谷幸喜ブランドの信頼を大きく損なう事故物件。一般ウケ不可能な古典SFネタも結構あるが知ってても笑えない。えっと、『真田丸』は面白かったです。

『エベレスト 3D』
 過去に映画化もされた有名な大量遭難事故なので、3D映像でも強調しなきゃ売りが無いのは解るが、3Dが後半の荒天描写には役立たずで金返せ感は強い。ガイド&参加者のスキル不足や梯子渋滞など商業登山の弊害はよく整理されてる。取って付けたような奇跡的救助は実話だから仕方ない。

グラスホッパー
 融合しない二つの物語。ミスリード一切無しの演出。やたら挟まれ緊張感を削ぐ回想。最後に明かされる無理筋の真実。クライマックスで主人公と全く接点のない殺し屋二人がバトルを繰り広げるのも斬新すぎる。

コードネーム U.N.C.L.E.
 海外ドラマ『0011ナポレオン・ソロ』は題名ぐらいしか知らないのにとても懐かしい気分にさせられた。お洒落な絵面にチープなスパイアクションにユーモアのセンスも間違いなく60年代アメリカTVのテイスト。バディ・ムービーとして地味に面白くヒロインも可愛い。続編を期待してるが世界的に大コケだったみたいで・・・。

『ムーン・ウォーカーズ』
 「これを何故フランス・ベルギー合作で?」と思ったけど、月面着陸映像捏造説を広めたのは仏のTVの四月馬鹿だったっけ。コメディとしてはハズレだったけども、キューブリック関連の小ネタや当時のヒッピー文化的雰囲気の再現は良い感じだった。

『007 スペクター』
 ダニエル・クレイグ版3作と話が繋がりまくりでそんなの覚えてない状態だったが、ドラマなんか無視してもOKな作品であり、やってることが凄すぎるアクションとか出番多めのボンドガールとか過去作オマージュとか愉快な見所は多かった。けど、ハード路線から急にバカっぽくなる砂漠のアジト以降の失速が酷くて、残念な印象が勝る。

杉原千畝 スギハラチウネ』
 あまり知らない東洋のシンドラーの業績を改めて学ぶには便利だった。淡々と真面目に人権・博愛な伝記映画かと思ったら意外にスパイ映画風味あり。けど、悲しいかな邦画の予算規模。見た目が洋画っぽいだけに映像のチープさは強調される。脚本もエピソードの羅列が酷くスリルとサスペンスが盛り上がらない。

スター・ウォーズ/フォースの覚醒
 これ程までに徹底してエピソード4の焼き直しで攻めるとは予想外だったが、只の懐古趣味では無く新しい世代でも存分に楽しめる作りになってる。新主人公たちがそれぞれに魅惑的だし、CGに頼り過ぎない造形もグッド。ぶっちゃけ中身はたいして無い話だが、それで強烈にうるさいマニア達を黙らせる監督の力技に驚かされる。唯一20世紀フォックスのファンファーレが無いのが悔やまれる。

クリード チャンプを継ぐ男』
 アポロの隠し子をロッキーが鍛えるという胸熱スピンオフ。前回でシリーズが綺麗に終わり快哉を叫んだオールドファンの心残り、『ロッキー5』とかいう一点の曇りは本作で見事に払拭された。観たいモノをちゃんと盛り込んだベタな感涙ドラマが嬉しいし、今風な黒人映画のテイストを加味し焼き直しの印象を与えないのも偉い。


 結局、年間で洋画37作、邦画24作のトータル61作を観賞。去年とほぼ同じ実績だった。

観た映画(2015年7〜9月公開)

 17作と多かったこともあり更新が空いた。今回は(2015版)と此方で勝手に付けなきゃ過去作と区別がつかない奴が3作もある。特に『HERO』はTVの方も全て副題無しでややこしい。

チャイルド44 森に消えた子供たち』
 原作が「このミス1位」って言う情報だけで観たんだけど、なんだこれ?舞台装置であるべき「楽園を建前とするスターリン時代の抑圧されたソ連」ばかりがフォーカスされ、山間部で何故か溺死し胃を摘出された子供達の連続殺人は謎のまま終わったんだが。

アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン
 関連作をフルコンプしてない事もあり色々と疑問符はあったが、『アイアンマン3』で普通の人間に戻った筈の社長が勝手に復帰してる時点で考えても無駄だと割り切った。それにしてもハルクとブラック・ウィドウが無理矢理くっつけられてるのには唖然。アクションはド派手で楽しかったけど、ヒーロー多すぎでもう何が何やら。

ターミネーター:新起動/ジェニシス
 シュワルツェネッガーの帰還を祝福する為のファンムービー。後半の新展開は続編ありき過ぎでつまらんが、過去作を踏まえたネタやシュワの笑顔ギャグで攻め、ツンデレ化したサラ・コナーに萌えるアクションコメディとして予想外に楽しかった。回を重ねるごとに扱いが酷くなるジョン・コナーには涙。

リアル鬼ごっこ』(2015版)
 原作無視の完全新作。女の子のゴア描写とパンチラがぎっしり詰まった園子温ワールド全開の作品。ホラー的には冒頭のバスのシーンが頂点で、後は必然性なく惨殺される女だけの世界を眺め、完全にどうかしてる作り手を笑う映画だった。トリンドル玲奈の戸惑い演技が意外に良い。

『HERO』(2015版)
 TVの新シリーズは観てないのだが、前回の映画であんなキスシーンやっといて、その後ずっと会ってないってのにはビックリ。恋愛面もそうだが検事としてもアラフォーであの設定を引っ張るのは痛すぎる。大使館の事件の方も話は微妙だった。

進撃の巨人 ATTACK ON TITAN
 基本設定だけ借りときゃ良いのに半端に寄せたばかりに原作ファンが発狂した訳だけど、前編だけなら世間で言われるほど酷くはない。樋口真嗣のキャラ演出力には難があるし、常に索敵が機能しないなど兵団描写の緩さも気になるけど、怪獣パニック映画としては及第点。ただ、後編が観たくなるような仕掛けが弱いのが問題。

ジュラシック・ワールド
 大スクリーンで観てこそのアトラクション映画で、恐竜達の暴れ回る様は3D感が素晴らしく迫力満点。反比例するように人間ドラマは壊滅的だけども。でも旧作のオマージュ多めなのは嬉しい。ラストはあまりにも『三大怪獣 地球最大の決戦』な展開だが、遅れて来た真の主役の活躍に胸が熱くなる。モササウルスがでかすぎるのは気にするな。

ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション
 ジャッキー・チェン化が著しいと噂のトム・クルーズを笑うつもりで観たけれど、「そこまでやらんでも!」なサービス精神満載の全力アクションにすっかり魅了されてしまった。レベッカ・ファーガソン扮する謎の女も七変化ぶりが麗しく、飛び関節の流れるような動きが素晴らしい。『スパイ大作戦』らしくラストで溜飲が下がる物語もグッド。

『日本のいちばん長い日』(2015版)
 継戦困難となった鈴木貫太郎内閣の歴史背景をレクチャーしてくれるのは親切だが、尺の半分以上使ってもメインディッシュの「いちばん長い日」に辿り着かないんじゃ本末転倒。この表題じゃ無ければ、降伏に導いた人達の伝記として結構本格派だけど。

ナイトクローラー
 序盤はやや怠かったが話が進むに連れ成り上がるゲス野郎の魅力にどんどん引き込まれた。サイコパスの容赦ないクズ行為に不快感を覚えつつも、口が達者で意識高い系な「村西とおる」っぷりが可笑しい。しかし、血まみれ衝撃映像を狙う特ダネ動画マンなんて仕事がリアルに成立してしまう合衆国の日常は怖いな。

『映画 みんな!エスパーだよ!
 監督・園子温ってだけで予備知識なしに観たが、連ドラ絡みにしちゃ異様にエロ方面に貪欲で驚いた。下ネタで笑わせ巨乳オールスターズでたっぷり目の保養ってのが主で、合間に挟まる本筋は途中からエスパー能力関係なかったりと超手抜きグダグダ脚本。完全にグラビア好き向け。

キングスマン
 突き抜けてバカで面白かった。劇中の会話にあるように、今風のシリアスなスパイ映画ではなく現実離れ上等ってスタンスで作られてて、秘密兵器を駆使したスタイリッシュで楽しげな大殺戮とか、シニカルでブラックな笑いとかが惜しみなく披露される。そんな露悪的な作品だが、スゴ腕の師匠にスカウトされた若者が採用試験をサバイバルしたりするので成長モノ・師弟モノとしてもグッとくる。スウェーデン王室には失礼過ぎるけど。

『天空の蜂』
 原発テロという素材の良さを活かせずに並の料理になった印象。だが、バカ映画としてはツッコミどころが満載で楽しかった。ヤバすぎるヘリのセキュリティ、政府・警察・自衛隊の説得力無い対応、無理に無理を重ねる救出劇、実は一切役に立ってない主人公。実行犯判明を皮切りに爆発・カーアクション・バトルと拍車のかかる無駄演出も素晴らしい。

カリフォルニア・ダウン
 震災シーンの絵作りが物凄いので飽きないが、教授の地震予知も主役父娘の防災知識も活かされない偶然ラッシュの確変継続に苦笑。周囲の人と別行動とし、死に直面させる事を避けた妙に淡泊な展開も不満。まあ、初手から高層ビル崩壊レベルだと、何処に避難すべきか、そもそも避難可能なのか謎だがな。

ピクセル
 一芸ボンクラ活躍系ありがちコメディ。あのゲーム達にストライクな世代的には漂う空気感が懐かしく、ギャグもそこそこ楽しめた。ドット絵のエンドロールも素敵。しかし、コレじゃない感も強い。かつての天才ゲーマーと関係ない攻略法にしてどうするのか。

進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド』
 明らかとなる設定の数々やガンダム的三つ巴の様相からして元の脚本はこの尺じゃ畳めない大風呂敷だったと推測。それを大胆にカットしたら、辻褄合わず伏線拾えず誰が壁を塞ぎたくて誰が壊したいのかすら整理出来てないという無様なことに。映画2本分の予算は殆ど前編で使い切ったらしく、特撮少なめで普通の巨人がモブキャラ同然なのも酷い。

アントマン
 もっとコメディ寄りかと思ったら、意外に真っ当な駄目パパ更正モノだった。拡大縮小アクションやアリ軍団の見せ方が巧く、格好良くも程良くコミカル。ただ、『アベンジャーズ』関連ネタがこの緩く小ぢんまりな世界観と合わないのでかなり邪魔臭い。あと、ヒーロー物なのにキャストの実年齢が全体にかなり高目なのは謎。