観た映画(2017年10~12月公開)
『アウトレイジ 最終章』
前二作で主だった凶悪キャラが全滅した結果、実質の主役がコミカル・ポジションにいた西田敏行という事態に。更に今回加わった大杉漣とピエール瀧もコメディ・リリーフ担当。笑うところは豊富だがバイオレントなヤクザ映画シリーズの幕引きとしては・・・。
『あゝ、荒野 前篇』
前後篇あわせて5時間超なので勇気が要ったが、映画賞方面での高評価を頼りに内容を知らずに観賞。「現代設定なのに『あしたのジョー』の時代っぽいボクシング映画だなぁ。」と思ったら原作が寺山修司で納得。それじゃサヨクインテリ臭さも許容しないとね。人物描写が面白いので長尺は気にならず。だが、あまりに偶然すぎる人物配置には苦笑。
『猿の惑星:聖戦記』
クズな人類を余所に格好良い猿達の生き様に感動のシリーズ三作目。原罪を背負い楽園を追われ受難の末に約束の地へ・・・ってな神話の宗教臭さを減衰して西部劇に仕立てた辺りが面白かった。ただ、虫の息だった人類が盛り返し過ぎてる違和感はある。あと、防衛用に石で壁とか作ってたのに戦闘が始まってみたらロケット弾が飛び交うのも・・・。
『アトミック・ブロンド』
シャーリーズ・セロンのアクション満載なスパイ・サスペンス。女性の非力を感じさせるゴリゴリの肉弾戦で容赦なく傷だらけ痣だらけのヒロインが凄まじい。ハードボイルドでセクシーで体張り過ぎな役柄とシャリ姐のフィット感に戦慄を覚える。ただ、お話の方は単純な事件を無理にややこしく見せてるだけで脚本のための脚本。
『女神の見えざる手』
銃規制側に寝返ったロビイストが卓越した頭脳で手段を選ばず勝利を目指す辣腕モノ。ドラマ1クール分撮れそうな内容を二時間超に収めた脚本力が素晴らしい。銃や選挙の米国複雑事情やロビー活動の実態に全く馴染みがなく何処までが合法なのか解ってなくても面白かった。ワーカホリックで非情な女なのにジェシカ・チャステインが超格好良い。
『あゝ、荒野 後篇』
辛い過去を抱えた人々の因縁やら社会派ネタやら広げておきながら風呂敷全く畳めず。前篇だけの映画だった。終盤の試合が「あり得ない」の連発なのもガッカリ。性描写は多いが今野杏南とかほぼ無駄脱ぎで笑う。
『ブレードランナー 2049』
一作目観賞は必須。続編という無理筋オーダーにしっかり応えてみせたSF魂には天晴れなのだが、個人的にはコレジャナイ感が強い。悲惨な男があがく話じゃなく、ハードボイルド野郎が駆け巡る斬新な未来世界が観たかった。でも、レイチェル登場は号泣モノだったし、ホログラム彼女とのあれこれは凄く魅惑的だった。
『ゲット・アウト』
タイトルと序盤展開から単なる脱出系ホラーと思いきや、ネタバレ禁止・リピート鑑賞必須の練れた脚本だった。米国人種差別あるあるをネイティブ並に感じ取れないのが残念。とかく扱いが難しい不謹慎ネタをエンタメに昇華するセンスに拍手喝采。まあ、真相の設定だけ聞いたら「なんや、それ!」なトンデモなんだけどね。
『ラストレシピ ~麒麟の舌の記憶~』
「麒麟の舌」と呼ばれる絶対味覚の設定が全く活かされてない謎脚本だが、そこそこ面白かった。二宮和也担当の現代パートは粗だらけだが、実質主演な西島秀俊の満州国パートは料理人の誇りと友情と家族愛な大河ドラマで料理も美味しそうだった。安定の甲斐甲斐しさで魅せる宮崎あおいもグッド。
『シンクロナイズドモンスター』
米国のダメ人間が原因で無関係な韓国民が被害を受けまくる頭のネジが緩んだ設定の怪獣映画。とはいえ、メインはアダルトチルドレンな女が帰郷して自分を見つめ直す系の話。DVやパワハラなどのヘビーな要素も盛り込むも踏み込みは浅くモヤッとするのが玉に瑕。何故こんなB級作品に出たのか謎だがアン・ハサウェイはダメ可愛かった。
『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』
全米で社会現象を巻き起こした特大ヒットのホラーという触れ込みだったけど全く怖くはなかった。だが、カースト下層の少年少女が恐怖に立ち向かうジュブナイルとしては面白かった。残酷描写多めの『スタンド・バイ・ミー』ってな感じで子役達が素晴らしい。ローティーン向けなのにR15指定という理不尽に嘆息。
『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』
米国製作の侍時代劇アニメ。人形コマ撮りの新時代を感じさせる凄まじい技術にも驚かされるが、それ以上に作り手の日本文化理解度に舌を巻く。外人らしい珍妙な世界観なのに死生観とかスピリッツな部分は実に的確なのだった。エンディングではビートルズの和風カヴァーという選曲と原語版声優の豪華さに二度ビックリ。
『ジャスティス・リーグ 』
「DC映画は退屈だがガル・ガドットのワンダーウーマンは観たい」程度の意気込みだったが意外に楽しかった。新キャラのドラマが薄かったり、敵が微妙だったり、超人たちの能力差が酷すぎたり、つまり『アベンジャーズ』紛いにも程があるわけだけど、従来のシリアス路線よりずっと親しみやすかった。
『光』(大森立嗣監督)
同年に同タイトルが2本公開される困った事態だが、これは『まほろ駅前』シリーズの原作×監督タッグの方。ただ、内容はそれとは違い始終ネガティヴな愛憎劇だった。子役達が演じる導入部で忌まわしさ凄惨さが全然足りない事が、最後まで足を引っ張った印象。
『鋼の錬金術師』
原作未読ゆえに理解できてない部分が多々あるのだろうが退屈だった。冒頭のCGシーンは予算規模の割に頑張ってたし、キメラの件がダークな展開で期待感も増したのだが、後は犯人バレバレで動機不明の最低なミステリー。しかも主人公が活躍しない。
『パーティで女の子に話しかけるには』
タイトルからは全く想像つかないブッ飛んだ映画だった(原題通りなんだけどね)。ボーイミーツガールの皮を被ってるが、パンク・ロックと小難しく不条理なSFとエロくてサイケでシュールなコメディの融合。拒絶反応数え役満だが、俺はこういうの大好きだ。表情豊かで圧倒的にキュートなエル・ファニングが最高。
『オリエント急行殺人事件』
「筋を知らなきゃ当然面白い、だが大半はオチまで知ってる」ってのが古典の厄介なとこ。だから、謎解きより人物の感情面を重視したり舞台を車外に広げたのには感心したが、出来は大目に見て普通。ミステリーの仕掛けを大胆に省き過ぎてポアロは憶測吐いてるだけに見えるなど、予備知識無しの観客には論理的に真相が導かれる快感が弱い気がする。
『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』
全篇にわたりイラッとくる粗や欠点が目立ち看過できないレベルに達してるのは事実だ。だが、前回広げた大風呂敷を畳んだり、只のこじらせた坊やだったカイロ・レンの急成長に説得力をもたらしたり、従来の価値観を敢えて壊す驚きの展開も多々有り。娯楽活劇として存分に楽しめた。次で相応しい結末を迎えられるかは大いに疑問だけど。
よいお年を!
さあ、いよいよ大晦日。今年も無益な活動ばかりでしたが、厄介なことに見舞われることも無く平穏に過ごせてラッキーでした。
冬季五輪やサッカーW杯などに盛り上がったのも遠い記憶となり、語るのはやはり映画のことばかり。今年は前半に『カメラを止めるな!』の予期せぬロングラン、後半には『ボヘミアン・ラプソディ』がファン層以外から異例の大ブレイクと、驚かされる年でした。
で、さっき興収を調べたら前者が31億円、後者が70億円となってまして、話題の二作をぶっちぎって興収92億円を叩き出したのが『劇場版コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命』。マジか?ファミリー向けでも3Dでもなくリピーターも少なそうなのにこんなに稼いでんの?・・・と、最後まで驚かされた年でした。
来年も面白い映画に出会えますように。
観た映画(2017年7〜9月公開)
『忍びの国』
主演が嵐の大野君&変キャラ女優の石原さとみなのでポップでコミカルな緩い忍者アクションなのは許す。けど、『殿、利息でござる!』の中村義洋が監督し脚本は原作者自身でなんで此処までドラマ性が無いのか。最後で中途半端にシリアスになられても・・・。
『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』
今回は初期三部作の直接的な後日譚。超常現象ありの世界観とスパロウ船長のふざけたキャラが足を引っ張り、話のとっ散らかりぶりは回を重ねる毎に悪化。もうインフレが酷くて収拾が付かない。けど、お約束を楽しむ分にはまだまだいけてる冒険映画なのだった。原題の「死人に口無し」で問題なかろうに謎な邦題が付いてるのはご愛敬。
『ライフ』
豪華キャスト、作り込んだ国際宇宙ステーション、ワイヤーを駆使した無重力表現など、めちゃめちゃ金と手間かけて完成したのが使い古されたB級SFホラーという驚き。わかりきった展開なのに結構おもろかった。惜しむらくは終盤が弱い。宇宙生物の恐怖描写が極限まで高まらないので続く起死回生も盛り上がらずオチの切れ味も薄れた。
『銀魂』
福田雄一監督作品だから観たが原作未読ではキツイ映画だった。キャラの特徴や関係性の理解が追いつかない。それでもパロディや何でもやっちゃう女優陣のギャグでちょこちょこは笑えたんだけど、後半のシリアス・アクションがとにかく冗長でまいった。
『パワーレンジャー』
二時間丸々まさかのスーパー戦隊「第一話」だった。初変身は終盤までお預けされ、合体ロボもお披露目程度で、殆どの尺は五人の若者が正義に目覚めるまでに費やされるという構成。だが、これが意外に良い。まんま『ブレックファスト・クラブ』なスクール・カースト集結型青春グラフィティで。まあ、変身アクションが超短い点は惨いけど。
『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』
地雷臭はしてたが想像を超えてた。トム・クルーズらしい大掛かりなアクションはあるし、ソフィア・ブテラの女ミイラはヒロインよりも魅力的だが、監督に基本設定を伝える能力が無いのが致命的。観客側の補完能力に委ねられる部分が多すぎる。
『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』
キャストの強烈なヴィジュアルから想起される程には出来は悪くなかった。これは三池崇史監督が不良や猟奇な人を描くのを得手としてるおかげ。スタンドバトルよりもホラー&サスペンスを重視した演出も功を奏してる。ただ、原作既読が前提な上に無駄に詰め込んだ脚本は不親切極まりない。あと承太郎さんが老け過ぎ&見せ場無さ過ぎ。
『スパイダーマン:ホームカミング』
ライミ版もアメスパも完全スルーしたが、コイツは『シビル・ウォー』に強引に出た時の印象が好かったので観る。よく喋るガキの無邪気な自警活動って立ち位置が、やたら壮大化したアベンジャーズ世界の箸休めにぴったり。アクションはイマイチだが、明るく元気なティーン・コメディの側面がグッド。実質『アイアンマン3』の続編なので要観賞。
『ベイビー・ドライバー』
「逃がし屋」が主人公の痛快犯罪活劇と思いきや、まさかのミュージカル。サントラに合わせリズムを刻みつつ自然に会話する登場人物達が超クール。内容と歌詞がリンクしてるっぽいのが英語力ゼロの身には辛いがそれでも充分面白かった。キャラは立ちまくり、カーチェイスもとにかくテンポが良い。後半の意外な展開も素晴らしいが、ケヴィン・スペイシーの翻心が唐突なのとアクションが失速気味なのが残念。
『ワンダーウーマン』
とにかくガル・ガドットが美しく格好いい。序盤のアマゾネス軍団アクション、中盤の『ローマの休日』&ジャンヌ・ダルクぶりも文句の付けようが無い。だが、話が面白いのはここまで。写真の男達に大した見せ場が無いままに、ラストはDCユニバース共通の退屈極まりない超人バトルでがっかり。
『エル ELLE』
還暦超えてるとは思えないイザベル・ユペールに脱帽。ポール・バーホーベン監督らしい自由奔放で妖艶で強い女を見事に演じ、普通だとモラルも社会通念も関係無い奇天烈な女になってしまう役を、ブラックな笑いを高尚に保ち倒錯的かつ気品あるヒロイン像に体現したバランス感覚が素晴らしい。物議を醸す社会派テーマも興味深いが、サスペンス要素や人間模様など作劇も普通に面白い。
『関ヶ原』
大人数の合戦シーンはまずまずの迫力。けれど戦況も人物像も描き方は全然ダメ。歴史に疎い人には何が何やらな駆け足展開は詮ないとは思うが、散漫に拍車をかける中途半端な忍者要素がかなり邪魔臭かった。方言キツイし早口でセリフが聞き取れないのも困る。
『トリガール!』
題材は面白そうだったが、競技系青春コメディとしては致命的に燃え要素が薄い。人力飛行機へのフォーカスが異様に少なくほぼ「自転車ガール」ってどーなのか?偏見に満ちた理系男子演出などギャグが寒くてイラッとくる。ナダルは何言ってるのかわかんない。
『新感染 ファイナル・エクスプレス』
やり過ぎなほどにエンタメてんこ盛りの韓国産パニックホラー。ベタな展開の筈なのに国民性の違いでナチュラルにパターンを崩してくるのが面白かった。無駄に感情的で良くも悪くも即断即決な点も作品の圧倒的スピード感にマッチしてて良し。全体にちょっと頭が悪すぎるとは思うが。
『ダンケルク』
史実に基づく映画だろうとクリストファー・ノーランが監督すると奇妙な世界観になるってことが判った。CG使わず実写に拘った故に30万人いる筈のビーチはスカスカだし、飛行機は片手に余る程しか飛んでない。時間軸の違う3つの物語もややこしい。でも、翻弄されまくる撤退組の緊迫感は凄かった。
『散歩する侵略者』
黒沢清監督なので「敢えての強烈な安っぽさと妙な繋ぎ」を織り込む必要はあるが、『ジョジョ』っぽいSF設定とコミカルな会話劇が楽しかった。役者の嵌まり振りも素晴らしく、長谷川博己がシリアスな場面で面白すぎるし、後半の長澤まさみは超キュート。集めた概念の違いで三者三様な侵略者達も良い。特に恒松祐里の身体能力には惚れ惚れ。
『三度目の殺人』
是枝裕和監督作品だが、いつもの感動作を期待するとガッカリで、知恵熱を出しながらスッキリしない話に頭を捻るのが好きな人向け。法廷は真実を追求する場所ではなく、登場人物は嘘つきばかり。真相に近づいたかと思いきや、接見の度に証言を変える役所広司の怪演が光る。中盤で彼が評された「感情のない空っぽの器」は重要キーワード。
『エイリアン:コヴェナント』
『エイリアン』の前日譚に当たる『プロメテウス』の続編。前作と違いエイリアンは暴れ回ってて一安心なのだが、アンドロイドの「創造主への叛乱」が本筋で、殆ど『ブレードランナー』な話だった。なのに、挑まれる藭としての人類たちがバカすぎてテーマは台無し。あんな迂闊で対応力の低いクルーに率いられた入植者達が哀れでならない。
『ドリーム』
この邦題からは全く想像つかないが、米国初の有人宇宙飛行計画の裏方に凄い数学能力の黒人女性たちが存在したという史実に基づく物語。キング牧師が頑張ってる時代の南部が舞台だが、権利を主張して差別と戦う話が主ではなく、高い能力を認められるように対応策を考えて周囲を変えていく理系女子が凄く格好良かった。黒人蔑視や男尊女卑はさして強くないのに慣習や前例踏襲主義が壁になり非効率を生む図式が面白い。
観た映画(2017年4〜6月公開)
『ハードコア』
これぞ新感覚アクションって感じの工夫を凝らした作品。FPSのゲームって全く縁が無いんだけど、こんな感じなのかしら?斬新な映像に加え世界観の狂いっぷりも刺激的で楽しかった。全編一人称視点っちゅうことで画面酔いでクラクラし、アクション要素詰めすぎ情報量多すぎで頭も疲れて誤魔化されるけど、話自体は一本調子で退屈なのが難。
『ゴースト・イン・ザ・シェル』
ジャパニメーション版リスペクトな凄いヴィジュアルが多々あり、かつ、あの面倒くさい押井守の哲学要素がごっそり抜けて話は解り易くなってる。正直、予想より数段出来は良かった。だが、似たようなSF映画が粗製濫造されてる現状での実写化はあまりに遅すぎたと思う。白人って事より少佐の体型にコレジャナイ感が強いのもマイナス。
『LION/ライオン 〜25年目のただいま〜』
5歳で迷子になったインド人の故郷への長い道のりを描く実話ベースの作品。映画賞界隈を眺めると、インド系若者役でお馴染みの実力派俳優デーヴ・パテールはあくまで助演で、主演はその幼少期を演じた子役ってのが謎だったのだが観て納得。とにかく圧倒的な存在感。オチが判かってても存分に魅せる脚本力にも唸らせられる。
『美女と野獣』
キャラ的にエマ・ワトソンはこの役に合うと予想したが、歌も踊りも思った以上に嵌まってた。ルーク・エヴァンスのガストンも完璧。野獣をはじめ「魔法が解けたら誰やねん」多発なのは苦笑。アニメ版で指摘されてきた変なところが色々フォローされてて微笑ましい。ただ、余計なモノを足し過ぎてもっさりした印象も。
『帝一の國』
原作は知らんが「漫画実写化の成功例」と噂に聞いて観賞。なるほど、学園コメディとしてノリが良く寒いギャグは殆ど見当たらない。高校生には見えないホスト顔の若手キャスト達の大袈裟な芝居も世界観に合ってる気がする。ただ、採点のやり取りとかフンドシ太鼓とかのインパクトに比べ終盤が弱い。肝心の所で不要な殴り合いに尺を使いすぎ。
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』
ストーリーと密接にリンクした選曲ってのが英語がダメダメな我が身に厳しいのは相変わらずだが、世界観とかメンバーの関係性が解ってるので前作より観やすかった。各々の活躍場面も妥当な配分だし因縁キャラとの絡みも良し。ギャグも面白いしベイビー・グルートはいちいち可愛いが、それが挿入されることでテンポが悪くなるのが玉に瑕。
『破裏拳ポリマー』
『キャシャーン』や『ガッチャマン』の実写よりはましだけどコレジャナイ感は強い。流行りのシリアスなアメコミ映画を意識してる割に話は大人っぽく無いし。アクションや効果は予算の割に頑張ってるけど印象に残るのは柳ゆり菜&原幹恵の谷間ばかり。
『マンチェスター・バイ・ザ・シー』
「暗い過去を持つ孤独な男と兄が遺した息子が織りなすヒューマンドラマ」と聞いて想像した内容とはかなり違った。オスカー脚本賞も納得で回想シーンの入れ方が抜群に巧い。淡々と地味な映画だが退屈はせず、切なさが心に沁みる。実はずっと舞台は英国(そっちにもマンチェスターとボストンがある)と勘違いして観てたんだけどね。
『メッセージ』
アカデミックな第三種接近遭遇モノらしく小難しい本格SF。いや、最終的にはそんなに難しい作品じゃないと解るんだが過程は複雑で超ディープ。幻想的で静かな映像がとても良い雰囲気だった。ただし、終盤のパラドックス展開は腑に落ちない。あと、表意文字を使ってて同盟国な我が方も、ちょっとは活躍させて欲しかった。
『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』
謎なタイトルだが中身はマカロニ・スーパーヒーロー映画だった。精神を病んだヒロインの心の支えとして『鋼鉄ジーグ』が登場するのだが、イタリアでこの古いロボットアニメはどんな位置付けなんだろうか?さておき、ローマの貧困地区で繰り広げられる超人に覚醒した盗人とチンピラたちの殺伐とした抗争がクール。悪役のゲスっぷりも素敵。
『LOGAN/ローガン』
これまで『X-MEN』シリーズを一切観ないで来たが、血みどろアクションとして絶賛の声には抗い難く。基本設定がさっぱり解らないものの、正当防衛であれ無自覚な非道であれ「異能者が背負う罪」を容赦ないゴア描写で見せつけられ満足。疑似家族ロードムービーとしての交流が薄目なのが残念。
『22年目の告白 -私が殺人犯です-』
ネタ元の韓国版は未見。「時効成立後に犯人が自供」も「殺人犯が手記を出版」も日本で実際に在った事なのでプロットの面白さは申し分ない。過去と現在の映像の使い分けが巧く雰囲気もとても良い。だが、ミステリーとしては粗が目立つ。特に、肝心の時効を崩し犯人を追い込むロジックが致命的に弱い。ラストも蛇足。
『フィフティ・シェイズ・ダーカー』
ロマンチックじゃないしエロくもないがギャグとして笑えた。とにかく「今から?ここで?何故?」な濡れ場の連発。間に挟まる薄っぺらい話を進めるために脱いだり着たり忙しい二人。もう、男の闇とかどうでもよさそうなので勝手にしろとしか・・・。
『ハクソー・リッジ』
沖縄戦で多くの人命を救ったミラクル衛生兵の実話が元ネタ。メル・ギブソン監督らしい一線を超えた戦争描写で贈る、物量や装備差を凌駕する日本兵の驚異と、正面突破な地獄の戦場を丸腰で駆け回る英雄の狂気。少年期・青年期・新兵訓練期で非暴力を信条とする人物像を追う前半部分も何気に面白い。これだけ詰め込んでも駆け足感が無いのが素晴らしい。
観た映画(2017年1〜3月公開)
『ダーティ・グランパ』
デ・ニーロ&ザック・エフロンで祖父と孫の心暖まるロードムービーかと思いきや、二人が下ネタの限りを尽くすだけの作品。水着程度の女優陣を差し置き二人が脱ぎまくるとか狂ってる。特にザックが股間に蜂の縫いぐるみだけの姿で披露するシーケンスは強烈だった。下品でブラックなギャグばかりだが字幕のセンスが良いので笑いどころは多い。
『ネオン・デーモン』
終盤展開とキアヌ・リーブスの無駄遣いぶりに度肝を抜かれたが、全体にアート過ぎてワケ解らん。いや、ある意味解り易いんだが、このアクの強さが口に合わない。抽象シーンを深読みする気が失せる。だけど80'sエレクトロニックな音楽は好み。
『本能寺ホテル』
万城目学が全ボツ脚本のアイデアを勝手に小ネタで消化されたって愚痴ってたのが本作らしい。有名作家との関係を悪くしてまで作った割に杜撰な映画だった。プロットを殆ど活かせず、登場人物達が到る結論に全く説得力が無い。妙な演出の連打にも戸惑った。
『沈黙 -サイレンス-』
遠藤周作の小説をスコセッシ監督が撮った時代劇。日本人にも違和感ない出来で驚く。切支丹弾圧ネタなので過激な拷問の連発にぐったりするし殉教する程の厚い信仰も本質的には理解不能だけど、禁教の理由とか基督教の変容とか弾圧側の指摘が良い勉強になった。ただ、キャスト的に「ジェダイは如何にしてダークサイドへ」な話の気がして困る。
『ザ・コンサルタント』
予想を裏切る風変わりなアクション映画だったが独特の味わいがある。シリーズ化して欲しい作品。けれど、「謎のスーパー会計士は高機能自閉症の殺人マシーン」って設定だけでもややこしいのに、不正会計の真相と黒幕捜し・会計士の過去と人間関係・彼を追う捜査官のドラマが複雑に絡むので超疲れた。特に会計関係のやり取りが難しい。
『新宿スワンⅡ』
ヤクザの類なのに自覚が無い風俗スカウト達の抗争劇。とにかく脚本が酷い。敵ボスとの因縁、前作の暗殺の真相、謎のキャバ嬢コンテスト、そして本筋の横浜侵攻における逆転の布石。どれにも主人公は殆ど関与してない。売りである面倒見の良さが発揮されるべきヒロインの借金問題も未解決だし・・・。けどアクションだけは良かった。
『ドクター・ストレンジ』
カンバーバッチが主役なので観たが予感通り好みに合わなかった。『インセプション』的な映像表現は面白いけど、魔法が万能過ぎてどっちが優位のバトルなのか全然わからない。修行モノにしては、あっさり最強クラスの使い手になるのも興醒め。
『スノーデン』
ドキュメンタリー映画が既にあるので、スノーデン氏の主張よりも彼の仕事場と私生活にフォーカスした造りになってる。ちゅか、普通にハッカーが主役のサスペンス映画だった。スパイ行為の様々なツールが興味深い。でも、創作部分が多そう。機密奪取シーンとか事実なら同僚に迷惑かけまくりだし、システム開発とかの功績も嘘くさい。
『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』
久々にティム・バートン監督らしさ全開のダーク・ファンタジーをたっぷり味わう。遊園地で触手怪物と骸骨剣士が戦う場面など視覚効果の出来が素晴らしい。ただ、時間ループの基本法則が不明瞭なままなので終盤が無駄に複雑化している。あと、ミス・ペレグリンの見せ場が意外に少ないっちゅうか後半の扱いが酷すぎる。
『マリアンヌ』
砂嵐の中での濡れ場とか印象に残るシーンはちょこちょこあり雰囲気はとても良いが、話は古典ラブロマンスのオマージュにしても堅実過ぎ。艶っぽいマリオン・コティヤールを堪能って点では存分だが、序盤で見せた手練れの工作員ぶりが後半で消滅するバランスの悪さが残念。ブラピ中佐の暴走も目に余る。あれじゃ疑惑が晴れてもアウトだ。
『サバイバルファミリー』
「電池を含む全電力を喪失」という状況設定が楽しい。序盤は都会あるあるな危機感の無さで笑わせ、東京脱出後は主人公一家のバカ過ぎてイラっと来る旅路を軸に色々と考えさせる。意識高い系や自給自足な人々の適応力にグッときた。惜しむらくはディテールが雑過ぎる。それに自転車で鹿児島目指すのは無駄に壮大すぎ。あと、長男の恋の件も邪魔。
『ラ・ラ・ランド』
充分に楽しくロマンチックで、切なくドラマチックなミュージカル映画だったが、期待ほどでは無かったのも確か。大人数オープニングからカラフルな4人組やらタップシューズに履き替えるくだりやら序盤で怒濤の盛り上がりを見せた割にダンスシーンが少ない印象。お話的には基本「ダメ人間2人だけの世界」なのでイライラする部分もあるけど、願った夢と叶った夢の狭間を突きつけるラスト20分にグッときた。
『お嬢さん』
官能性の高さがヤバいし、脚本・演出が凄い。めっちゃ面白かった。第一部は古風で耽美なレズ物サスペンスから入り、第二部で淫靡かつダークな乱歩調の変態度が桁外れに増幅し、第三部では韓流らしい過剰なギャグが冴え渡る。そして韓国キャストの拙い日本語台詞がシュール感を煽る。全篇にわたり完全にどうかしてるのに、最後には多幸感に包まれてる不思議。エンドロールに流れる歌も昭和歌謡ぽくって良かった。
『アシュラ』
クズ揃いな登場人物が超楽しい血まみれバイオレンス。あまりにハイテンションな韓国ノワールぶりに、この映画が日本の『アウトレイジ』みたいな位置付けなのか、もっとコメディ寄りなのか掴みかねる。顔は松重豊だけど芸風は西村まさ彦っぽい市長さんの極悪ぶりが凄く可笑しい。西島秀俊に激似な主人公の救いようのない小物感もグッド。
『チア☆ダン 〜女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話〜』
友情・努力・勝利&恋の部活青春モノとしては極めて堅実で可愛く楽しいが、実話ベースにしては偉業達成へのプロセスがさっぱり解らないし、逆転の秘策も説得力皆無。おデブやメガネっ娘の殻を破る姿にも時間を割いて『ピッチ・パーフェクト』並の個性の融合を示すべきだし、地獄先生の指導による精神面の成長も強調すべきだったと思う。
『哭声/コクソン』
國村隼がふんどし一丁で殺戮の限りを尽くす韓流サスペンスかと思いきや、宗教色が強く悪霊とかが絡むオカルトだった。そっち方面が嫌いな身としては祈祷師が出てきた辺りでドン引き。夢や幻覚との境界も曖昧な視点で語られたんじゃ、全然わけがわからない。
『SING/シング』
好評の吹替版は無視して字幕版を観た。洋楽好きとしては文句なしの選曲で新旧ポップスを堪能できたし、お話はド定番の群像劇をクライマックスのステージに収斂させてて演出と歌詞の力を見せつけられた。けど、遵法意識が低く自己中な主人公を周りが簡単に許しちゃうのは不快。かけた迷惑に見合う落とし前が欲しかった。
『パッセンジャー』
冷凍睡眠から早く目覚め孤独に生涯を終える窮地ってなハードSFなのだが、中盤までの悲壮な人間ドラマから一転のエンタメ路線にげんなり。アンディ・ガルシアの無駄遣いぶりから終盤全ボツ案件と邪推するが、それにしてもオチが安直すぎる。上位権限ゲットで状況打開ってのもがっかりで、もっと知恵で解決して欲しかった。
『キングコング:髑髏島の巨神』
冒頭の妙な日本人描写&露骨な中国資本キャストで心配になったが、『地獄の黙示録』風味で怪獣大決戦が超楽しい最初から最後までクライマックスな映画だった。人間パートはありきたりだが全然飽きない。コングは開始30分で早々とヒューイ編隊を屠り、その後は大量の怪獣と暴走軍人を相手に次々とバトル。最終決戦は「日本よ、これが怪獣プロレスだ!」ってなアピールがビンビン。ただ、対決予定のギャレゴジとの力量差は心配。
『ムーンライト』
少年期・青年期・成人期の三部構成で贈る黒人社会の学校カーストで底辺に属した男の物語。良質なドラマだが、過酷な境遇で育つ系にしては悲惨度は軽めで拍子抜け。ゲイ設定はあるものの恋愛映画としてもわりと普通だし。でも、音楽と映像の美しさは印象的。
観た映画(2016年10〜12月公開)
『SCOOP!』
福山雅治主演という事になってるが実は二階堂ふみの成長物語。最後だけ福山のアイドル映画みたいだけど。全体にテンポが良く、デフォルメされてるんだろうけどパパラッチの内幕も面白く、相棒モノとしてベタで楽しかった。が、終盤の超無理筋展開で評価は急落。あと、二人の進展は賭けの結果と現像室の写真で匂わす程度にして欲しかった。
『ジェイソン・ボーン』
美しく纏まったシリーズ三部作には数段劣ると言わざるを得ないが、それなりに楽しいアクション映画だった。唸るようなアイデアには乏しいけど機敏な動きと機転が売りのバトルは健在だし、野心家ヒロインのアリシア・ヴィキャンデルもおでこが可愛い。
『スター・トレック BEYOND』
監督交代で前作までより出来はかなり落ちるけどクライマックスの映像は美しかった。それに中弛みからの唐突展開で強引なオチはTV版の雰囲気を再現してるとも言える。敵の行動原理がさっぱり解らないが、クルー達のキャラ立ちが良く全体的にはまあまあ面白かった。しかし、リブートは毎回とばっちりで襲撃される話だな。
『金メダル男』
ほぼ同世代なので『フォレスト・ガンプ』的な作りに惹かれて観たけど五十年史の時代感覚は薄目で残念。内村光良のコントや舞台作品は好きで結構観てるのに監督映画を避けてきたのは間違いじゃなかった。ウッチャンらしいハートウォームな話だし笑えるシーンも多いが映画としては稚拙。やっぱりこの人はステージのような制限がある方が冴える。
『手紙は憶えている』
この作品を「観なくちゃリスト」に加えた経緯が思い出せない。たぶん予告は観てないし、あらすじも知らないしで、劇中の老人並みに記憶が薄れてて困る。それはさておき、銃持った健忘の爺の一人旅はナチスへの復讐劇とは違う意味のサスペンス感が堪らない。主役が『サウンド・オブ・ミュージック』のエーデルワイスの人ってのも趣。
『ぼくのおじさん』
舞台設定を現代と言い張りつつ半世紀前の児童文学のテイストを巧く再現したのに感心した。前半は完璧な北杜夫ワールドだと思う。松田龍平も甥っ子とその家族もかなりのハマリ役でほのぼの感が満載。ただ、原作には無い後半の展開があまりにも『男はつらいよ』過ぎて退屈だった。
『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』
前作『アウトロー』は未見だが特に支障は無い模様。一匹狼の戦士が不良娘と疑似家族になりつつ悪党とバトルってな凡庸な内容を、体当たりアクションと顔芸で保たせてみせたトム・クルーズの年甲斐も無い頑張りに惜しみない拍手を贈る。母親ポジションのコビー・スマルダーズの勇姿も二重丸。強く素っ気なく付かず離れずの感じが良かった。
『この世界の片隅に』
反戦を謳わず平凡でほんわかな女の子の日常から戦争の悲惨さを軽妙なタッチで伝える。色々な感情が後を引く作品。キャラ造形大勝利で、幼くふわふわしたヒロインに色っぽさを巧妙に潜ませてて驚く。アニメとしてのクオリティの高さも感動的で、水彩画のような背景でゆったりと丁寧に動かしきちっと止めるという、ピクサーとかではちょっとお目にかかれない演出が素晴らしい。あまり見覚えが無い兵器描写の数々も印象深い。
『聖の青春』
「東の羽生善治、西の村山聖」の時代を知ってるし原作も十数年前に読んだ。松山ケンイチも東出昌大も見事な役作りだと思う。話もお涙頂戴になってない点は良かった。けど、原作の要である師弟関係を省き創作色の強いライバル物にしたのは疑問。あと、皆が「詰む」と検討する中で「詰まない」と読みきったのが凄いって話を逆にしてどうする。
『メン・イン・キャット』
猫が好きって理由だけで観た。意識が猫に入ってしまった社長が会社を乗っ取られたり家庭を顧みなかった自分に反省したりする、極めてありがちなコメディだがそこそこ楽しめた。キャストも無駄に豪華だし。ただ、監督が『メン・イン・ブラック』の人だからってこの邦題は無い。
『海賊とよばれた男』
元々が大河ドラマ向けの題材なのは解るが、エピソードが面白くなりそうなところで次々とピークを外すのでストレスが溜まる。創業時の若手社員に二十歳以上違う染谷将太と吉岡秀隆を並べるなど困惑必至のキャスティングに唖然。
『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』
様々な設定が補完される様が心地よく、メカ類も洗練され勇姿に釘付け。一切活躍しないフォレスト・ウィテカーが邪魔臭い事を除けば超面白かった。特に怒涛のクライマックスは燃えたし泣けたしドニー・イェンとベイダー卿が最高だった。けれど冷静に考えると拭えない微妙感。「なんでそんなところにメインスイッチが?」とか「この後、間髪入れずに捕まるレイア!」とかが感動的な場面に付いて回る。
『ドント・ブリーズ』
強盗団が全盲の老人宅に侵入したら爺の白兵戦能力がスペシャルだったって設定が旨い。展開も捻りがあって状況は二転三転し最後まで手に汗握る。限定空間を巧く使って逃走劇に仕立てたアイデアも秀逸。だが、この先使う小道具に寄る超親切なカメラワークとか、お約束を徹底踏襲するスタイルとかが気になって恐怖感は薄れてしまった。
『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』
関係無い子供とか巻き添えになるけど、自爆テロを未然に防ぐにはアジトにミサイルぶち込むしか無いって状況設定が重い。軍人と政治家や英米の手続きの違いが面白かった。現場工作員の決死の努力も胸熱。本作はフィクションだが、対地攻撃無人機の遠隔操作だの鳥や虫のドローンだのは実用化され、本国に居ながら戦争してるってのは事実で驚く。