邦画オールタイム、私選10作

 こんな企画があったので遅ればせながら参加します。

 しかしですね、普通に列挙していったら松田優作の出演作が異様に多いわけなんですよ。そこまで熱狂的なファンという自覚は無いのに殆んど優作と伊丹十三でベストテン埋まる勢い。そんなわけで、10ジャンルに分けてバランスを配慮。順位はつけずに十選としました。
 困った事に劇場で観た事のある映画は軒並み振り落とされTV観賞の映画ばかりになってしまいました。そして9本は昭和映画。これが角川映画華やかなりし時代を生きた四十男のセレクトです。明日になれば違う事言ってそうですが・・・。


「順不同」


 以下、詳細。


【アクション・犯罪部門】
  『野性の証明』(78)
 ○『太陽を盗んだ男』(79)
 ◎『蘇える金狼』(79)
 ○『野獣死すべし』(80)
  『誘拐報道』(82)

 村川透監督&松田優作ばかりになるので『・・遊戯』三作は外しました。それでも凄く短い時期にセレクトが集中していて驚きます。やはり『太陽にほえろ』の影響が色濃いのでしょう。そして北野武監督に全く興味が無いのもありあり。印つけた3作は本当に僅差。「ジュリーもいいけど優作は百年に一人のハードボイルド俳優」っていう思いと話の好みだけですな。


【サスペンス・ミステリー部門】
  『砂の器』(74)
 ◎『犬神家の一族』(76)
  『獄門島 』(77)
 ○『人間の証明』(77)
  『黄金の犬』(79)

 年齢誤魔化してると疑われそうですがミステリーは70年代に集中。テレビの2時間ドラマとかは80年代にも観てた気がするんですが、映画はたぶん洋画にシフトしちゃったんでしょうね。赤川次郎モノは観てたけどアレは別ジャンルだろうし。
 ファースト・インパクトというのは何かと強くやっぱスケキヨに軍配。推理サスペンスというより悲劇のヒューマンドラマとして、主題歌とCMが印象的な『人間の証明』が次点。


【戦争・歴史部門】
  『八甲田山』(77)
 ○『影武者』(80)
  『未完の対局』(82)
 ◎『乱』(85)
  『敦煌』(88)

 黒澤明監督と佐藤純彌監督が2本ずつノミネート。とはいえ実質はクロサワ2作の争いでした。エンタメ色の強い『影武者』のが取っ付き易いけど、話が暗かろうが退屈だろうが『乱』のスケール感が洋画界に与えた影響は計り知れず。その恩恵を鑑みて。最近はこういう大作をオーソドックスに撮れる巨匠が見当たらなくて困ります。


【文芸・ベストセラー部門】
  『家族ゲーム』(83)
 ◎『麻雀放浪記』(84)
 ▲『それから』(85)
  『野ゆき山ゆき海べゆき』(86)
 ○『優駿 ORACION』(88)
  『黒い雨』(89)

 セレクトは何か勘違いして真面目な日本映画のリバイバル上映を熱心に観てた時期に重なっております。原作が台無しになってて憤る事が多いので積極的に観なくなってるこのジャンル。やっぱりどれも原作読む前に観賞してるのでした。良く考えると麻雀と競馬と無職野郎の話が上位に。


【SF・パニック部門】
 ◎『日本沈没』(73)
 ▲『新幹線大爆破』(75)
 ○『宇宙からのメッセージ』(78)
  『復活の日』(80)
  『時をかける少女』(83)

 東映が誇るSFバカ映画の『宇宙・・』や正統派で面白い『新幹線・・』も捨てがたいけど、ここは絶望感溢れるストーリーにハイレベルな特撮の『日本沈没』がダントツ。その後のロボットアニメや怪獣映画にも色濃く投影されたわけですし。本流のSFが衰退の一途なのが悩ましいけど。


【コメディ・エンタメ部門】
  『近頃なぜかチャールストン』(81)
  『蒲田行進曲』(82)
 ▲『マルサの女』(87)
  『12人の優しい日本人』(91)
  『シコふんじゃった。』(92)
 ◎『ミンボーの女』(92)
 ▲『Shall we ダンス?』(96)
 ▲『ラヂオの時間』(97)

 ここは90年代が群雄割拠の呈を為しました。伊丹映画も三谷脚本もまだまだ入れたい作品がありますが泣く泣くカットです。ただ、1本に絞るのは『ミンボー』で楽勝でした。伊丹十三監督命懸けの暴力団叩きに脱帽です。


【青春・スポーツ部門】
 ○『翔んだカップル』(81)
 ◎『転校生』(82)
  『台風クラブ』(83)
  『瀬戸内少年野球団』(84)
 ▲『私をスキーに連れてって』(87)

 やはり自身の青春期と被る映画がセレクトされました。さりげなく薬師丸ひろ子VS原田知世が実現していますが、ベストには『転校生』を敢えてSFではなくコッチのジャンルで。地味なキャストにノスタルジックな田舎という、ある種のフォーマットを完成させた作品であります。『私を・・』は映画の質よりバブル的な時代性の凝縮を評価しました。


【特撮・怪獣部門】
 ○『ゴジラ』(54)
  『モスラ』(61)
 ◎『ゴジラ対ヘドラ』(71)
  『ゴジラVSビオランテ』(89)
 ▲『ガメラ2 レギオン襲来』(96)

 他のジャンルに比べ時代の幅が極端に広く、しかも生まれる前まで遡っております。各年代のメッセージ色が強く打ち出されたラインナップになりました。パイオニア反核映画の初代『ゴジラ』に敬意を払いつつも、ちびっ子時代は白黒よりカラーなのであります。トレンドの公害を前面に押し出した『ヘドラ』はとにかく怖く、善玉ゴジラにキレられる日本にショックを受けたものです。


【一般アニメ部門】
  『宇宙戦艦ヤマト』(77)
 ▲『銀河鉄道999』(79)
 ○『風の谷のナウシカ』(84)
 ◎『天空の城ラピュタ』(86)
  『カウボーイ・ビバップ 天国の扉』(01)
  『時をかける少女』(06)

 他にも『ルパン三世 カリオストロの城』(79)とか『魔女の宅急便』(89)とか、ほぼ完全に宮崎駿監督の天下。男の子なら痛快娯楽冒険活劇ってことで難なく『ラピュタ』に決定。それにしてもジブリを除いてしまうと90年代の劇場版アニメ(ロボットもの以外)を思い出せないのは何故でしょう。


【ロボットアニメ部門】
  『機動戦士ガンダム? 哀・戦士』(81)
  『宇宙戦士バルディオス』(81)
 ◎『伝説巨神イデオン・発動篇 -Be Invoked-』(82)
 ○『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』(84)
  『機動警察パトレイバー2 the Movie』(93)
  『新世紀エヴァンゲリオン Air/まごころを、君に』(97)

 単品で完璧なのは『マクロス』の方なのでかなり悩んだけど、それでもインパクトで『イデオン』にしました。サンライズ系にもガイナックス系にも大きく影響を残した「皆殺しの富野」を象徴する骨太な作品です。『バルディオス』のノミネートは意外でしょうがSF好きには堪らないストーリーなのです。