観た映画(2016年7〜9月公開)


インデペンデンス・デイ:リサージェンス
 「バカっぽさ」と「燃え」が前作の肝だったのに、今回は人間側もエイリアン側も致命的なバカに成り下がりビックリするほど燃えないドラマを展開。やりすぎ感たっぷりの超巨大円盤の割に、被害規模やミッション難易度はスケールダウンしてて呆れる。


『シング・ストリート 未来へのうた』
 音楽映画の申し子ジョン・カーニー監督が贈る80年代青春ドラマ。ニューロマンティック全盛の時代に、素人バンドがその影響を受けながら成長していく感じを伝えるオリジナル楽曲群がとにかく粒ぞろい。映像もあの時代の再現度が高いし、不遇な少年少女達の理想と現実のギャップが巧く表現されてて楽しい。無名俳優ばかりだけどバンドメンバーの好感度はマックスで指南役の兄貴も良かった。


『ロスト・バケーション』
 浅瀬の小さな岩礁で展開するソリッドシチュエーションな低予算サメ映画。無意味なヌードやくだらないギャグを排除し、矢継ぎ早にイベントをぶち込んで緊張感を維持し続けるストイックさに脱帽する。オチが強引だったりはするけど。カモメがとてもいい味を出してて素敵。それと、テキサスに海があることを学んだ。


シン・ゴジラ
 ハイテンポで字幕情報だらけの実に庵野監督らしい作品なので特撮マニア層が熱狂するのは当然だが、東日本大震災という共通体験を投影した暴れぶりに、あの時よりはちょっと頼もしい政府関係者が底力を発揮する構成で一般向けのカタルシスを生むとは。あの記憶が薄れてしまえば解けてしまう魔法だけど、本当スゴイものを観た。なお、浮きっぷりが物議を醸す石原さとみだが、個人的にはスピンオフが観たいぐらい好きなキャラだ。


ゴーストバスターズ』(2016版)
 残念ながらギャグがツボに嵌まらず。ワンタンのくだりとか謎過ぎる。『サタデー・ナイト・ライブ』とかに詳しい人は解るのかな?あと、美味しい所が金髪と受付に片寄ってて他のキャラが妙に薄いのが不満。オリジナルを知らなくても楽しめるのはグッド。


君の名は。
 ぶっちゃけ前半が『転校生』で後半は『時かけ』だし、記憶が消えて文字情報でやり取りって設定が途中で破棄され、スマホ時代にゃ不自然なご都合主義もかなり目立つんだけど、郷愁と男女のすれ違いがお家芸新海誠監督らしい青春映画に仕上がってて面白かった。最後は電車内で互いに気づいて走り出す辺りで切ってくれた方が好みだけども。


『後妻業の女』
 連続不審死を題材にした、大竹しのぶ無双のピカレスク・コメディ。旦那殺しまくって罪悪感の欠片もない女って役柄なのに物凄く痛快に魅せちゃうのは流石の一言。抱腹絶倒とはいかないが軽妙でブラックな笑いのバランスも良かった。ただ、笑福亭鶴瓶の挿話が中途半端だったり、物語の着地点がぼやけ気味なのが残念。


『セルフレス/覚醒した記憶』
 デザイナーの石岡瑛子さんが亡くなった為「選ぶ題材が変わった」らしいターセム監督だが、まさか幻想的映像が鳴りを潜めたB級アクションになるとは。まあ、話はド直球だけど美しい画は健在で一安心。問題は、ライアン・レイノルズが『デッドプール』でも似た設定をやってて、そっちのイメージが強過ぎ。中身がベン・キングスレーには見えない。


スーサイド・スクワッド
 マーゴット・ロビー演じるハーレイ・クインは最高だが、それ以外はこれじゃない感が満載。全体にクドいし編集が下手すぎる。予告のノリは素晴らしかったし、垣間見えるジョーカーとハーレイの馴れ初めは単独映画で成り立つ魅力を放ってるのに。


『怒り』
 本当に気持ちを開いているのか掴みきれない3人の男と、人を信じる難しさに揺れる周囲の人々。人物像の説得力が重要な作品であり、超豪華俳優陣は伊達じゃ無く、見応えがあった。特に妻夫木聡×綾野剛による同性愛描写のインパクトは強烈。不満は偏見の助長に近い形で在日米軍を絡めたこと。


ハドソン川の奇跡
 トラブル発生から着水まで僅か3分・救助完了まででも30分弱で誰もが顛末を知ってるという難儀なネタなのに、事故そのものは淡々と描きつつ緊迫感ある映画にしてしまうイーストウッド監督の手腕に感服。疑惑の機長として糾弾される法廷劇をクライマックスに置く構成が見事だった。ただ、事故調査委がこんな低レベルなわけないとは思う。