観た映画(2016年10〜12月公開)

『SCOOP!』
 福山雅治主演という事になってるが実は二階堂ふみの成長物語。最後だけ福山のアイドル映画みたいだけど。全体にテンポが良く、デフォルメされてるんだろうけどパパラッチの内幕も面白く、相棒モノとしてベタで楽しかった。が、終盤の超無理筋展開で評価は急落。あと、二人の進展は賭けの結果と現像室の写真で匂わす程度にして欲しかった。


ジェイソン・ボーン
 美しく纏まったシリーズ三部作には数段劣ると言わざるを得ないが、それなりに楽しいアクション映画だった。唸るようなアイデアには乏しいけど機敏な動きと機転が売りのバトルは健在だし、野心家ヒロインのアリシア・ヴィキャンデルもおでこが可愛い。


スター・トレック BEYOND』
 監督交代で前作までより出来はかなり落ちるけどクライマックスの映像は美しかった。それに中弛みからの唐突展開で強引なオチはTV版の雰囲気を再現してるとも言える。敵の行動原理がさっぱり解らないが、クルー達のキャラ立ちが良く全体的にはまあまあ面白かった。しかし、リブートは毎回とばっちりで襲撃される話だな。


『金メダル男』
 ほぼ同世代なので『フォレスト・ガンプ』的な作りに惹かれて観たけど五十年史の時代感覚は薄目で残念。内村光良のコントや舞台作品は好きで結構観てるのに監督映画を避けてきたのは間違いじゃなかった。ウッチャンらしいハートウォームな話だし笑えるシーンも多いが映画としては稚拙。やっぱりこの人はステージのような制限がある方が冴える。


手紙は憶えている
 この作品を「観なくちゃリスト」に加えた経緯が思い出せない。たぶん予告は観てないし、あらすじも知らないしで、劇中の老人並みに記憶が薄れてて困る。それはさておき、銃持った健忘の爺の一人旅はナチスへの復讐劇とは違う意味のサスペンス感が堪らない。主役が『サウンド・オブ・ミュージック』のエーデルワイスの人ってのも趣。


ぼくのおじさん
 舞台設定を現代と言い張りつつ半世紀前の児童文学のテイストを巧く再現したのに感心した。前半は完璧な北杜夫ワールドだと思う。松田龍平も甥っ子とその家族もかなりのハマリ役でほのぼの感が満載。ただ、原作には無い後半の展開があまりにも『男はつらいよ』過ぎて退屈だった。


ジャック・リーチャー NEVER GO BACK
 前作『アウトロー』は未見だが特に支障は無い模様。一匹狼の戦士が不良娘と疑似家族になりつつ悪党とバトルってな凡庸な内容を、体当たりアクションと顔芸で保たせてみせたトム・クルーズの年甲斐も無い頑張りに惜しみない拍手を贈る。母親ポジションのコビー・スマルダーズの勇姿も二重丸。強く素っ気なく付かず離れずの感じが良かった。


この世界の片隅に
 反戦を謳わず平凡でほんわかな女の子の日常から戦争の悲惨さを軽妙なタッチで伝える。色々な感情が後を引く作品。キャラ造形大勝利で、幼くふわふわしたヒロインに色っぽさを巧妙に潜ませてて驚く。アニメとしてのクオリティの高さも感動的で、水彩画のような背景でゆったりと丁寧に動かしきちっと止めるという、ピクサーとかではちょっとお目にかかれない演出が素晴らしい。あまり見覚えが無い兵器描写の数々も印象深い。


『聖の青春』
 「東の羽生善治、西の村山聖」の時代を知ってるし原作も十数年前に読んだ。松山ケンイチ東出昌大も見事な役作りだと思う。話もお涙頂戴になってない点は良かった。けど、原作の要である師弟関係を省き創作色の強いライバル物にしたのは疑問。あと、皆が「詰む」と検討する中で「詰まない」と読みきったのが凄いって話を逆にしてどうする。


『メン・イン・キャット』
 猫が好きって理由だけで観た。意識が猫に入ってしまった社長が会社を乗っ取られたり家庭を顧みなかった自分に反省したりする、極めてありがちなコメディだがそこそこ楽しめた。キャストも無駄に豪華だし。ただ、監督が『メン・イン・ブラック』の人だからってこの邦題は無い。


海賊とよばれた男
 元々が大河ドラマ向けの題材なのは解るが、エピソードが面白くなりそうなところで次々とピークを外すのでストレスが溜まる。創業時の若手社員に二十歳以上違う染谷将太吉岡秀隆を並べるなど困惑必至のキャスティングに唖然。


ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー
 様々な設定が補完される様が心地よく、メカ類も洗練され勇姿に釘付け。一切活躍しないフォレスト・ウィテカーが邪魔臭い事を除けば超面白かった。特に怒涛のクライマックスは燃えたし泣けたしドニー・イェンベイダー卿が最高だった。けれど冷静に考えると拭えない微妙感。「なんでそんなところにメインスイッチが?」とか「この後、間髪入れずに捕まるレイア!」とかが感動的な場面に付いて回る。


ドント・ブリーズ
 強盗団が全盲の老人宅に侵入したら爺の白兵戦能力がスペシャルだったって設定が旨い。展開も捻りがあって状況は二転三転し最後まで手に汗握る。限定空間を巧く使って逃走劇に仕立てたアイデアも秀逸。だが、この先使う小道具に寄る超親切なカメラワークとか、お約束を徹底踏襲するスタイルとかが気になって恐怖感は薄れてしまった。


『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』
 関係無い子供とか巻き添えになるけど、自爆テロを未然に防ぐにはアジトにミサイルぶち込むしか無いって状況設定が重い。軍人と政治家や英米の手続きの違いが面白かった。現場工作員の決死の努力も胸熱。本作はフィクションだが、対地攻撃無人機の遠隔操作だの鳥や虫のドローンだのは実用化され、本国に居ながら戦争してるってのは事実で驚く。