観た映画(2017年1〜3月公開)


『ダーティ・グランパ』
 デ・ニーロ&ザック・エフロンで祖父と孫の心暖まるロードムービーかと思いきや、二人が下ネタの限りを尽くすだけの作品。水着程度の女優陣を差し置き二人が脱ぎまくるとか狂ってる。特にザックが股間に蜂の縫いぐるみだけの姿で披露するシーケンスは強烈だった。下品でブラックなギャグばかりだが字幕のセンスが良いので笑いどころは多い。


ネオン・デーモン
 終盤展開とキアヌ・リーブスの無駄遣いぶりに度肝を抜かれたが、全体にアート過ぎてワケ解らん。いや、ある意味解り易いんだが、このアクの強さが口に合わない。抽象シーンを深読みする気が失せる。だけど80'sエレクトロニックな音楽は好み。


本能寺ホテル
 万城目学が全ボツ脚本のアイデアを勝手に小ネタで消化されたって愚痴ってたのが本作らしい。有名作家との関係を悪くしてまで作った割に杜撰な映画だった。プロットを殆ど活かせず、登場人物達が到る結論に全く説得力が無い。妙な演出の連打にも戸惑った。


沈黙 -サイレンス-
 遠藤周作の小説をスコセッシ監督が撮った時代劇。日本人にも違和感ない出来で驚く。切支丹弾圧ネタなので過激な拷問の連発にぐったりするし殉教する程の厚い信仰も本質的には理解不能だけど、禁教の理由とか基督教の変容とか弾圧側の指摘が良い勉強になった。ただ、キャスト的に「ジェダイは如何にしてダークサイドへ」な話の気がして困る。


ザ・コンサルタント
 予想を裏切る風変わりなアクション映画だったが独特の味わいがある。シリーズ化して欲しい作品。けれど、「謎のスーパー会計士は高機能自閉症の殺人マシーン」って設定だけでもややこしいのに、不正会計の真相と黒幕捜し・会計士の過去と人間関係・彼を追う捜査官のドラマが複雑に絡むので超疲れた。特に会計関係のやり取りが難しい。


新宿スワンⅡ』
 ヤクザの類なのに自覚が無い風俗スカウト達の抗争劇。とにかく脚本が酷い。敵ボスとの因縁、前作の暗殺の真相、謎のキャバ嬢コンテスト、そして本筋の横浜侵攻における逆転の布石。どれにも主人公は殆ど関与してない。売りである面倒見の良さが発揮されるべきヒロインの借金問題も未解決だし・・・。けどアクションだけは良かった。


ドクター・ストレンジ
 カンバーバッチが主役なので観たが予感通り好みに合わなかった。『インセプション』的な映像表現は面白いけど、魔法が万能過ぎてどっちが優位のバトルなのか全然わからない。修行モノにしては、あっさり最強クラスの使い手になるのも興醒め。


『スノーデン』
 ドキュメンタリー映画が既にあるので、スノーデン氏の主張よりも彼の仕事場と私生活にフォーカスした造りになってる。ちゅか、普通にハッカーが主役のサスペンス映画だった。スパイ行為の様々なツールが興味深い。でも、創作部分が多そう。機密奪取シーンとか事実なら同僚に迷惑かけまくりだし、システム開発とかの功績も嘘くさい。


ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち
 久々にティム・バートン監督らしさ全開のダーク・ファンタジーをたっぷり味わう。遊園地で触手怪物と骸骨剣士が戦う場面など視覚効果の出来が素晴らしい。ただ、時間ループの基本法則が不明瞭なままなので終盤が無駄に複雑化している。あと、ミス・ペレグリンの見せ場が意外に少ないっちゅうか後半の扱いが酷すぎる。


『マリアンヌ』
 砂嵐の中での濡れ場とか印象に残るシーンはちょこちょこあり雰囲気はとても良いが、話は古典ラブロマンスのオマージュにしても堅実過ぎ。艶っぽいマリオン・コティヤールを堪能って点では存分だが、序盤で見せた手練れの工作員ぶりが後半で消滅するバランスの悪さが残念。ブラピ中佐の暴走も目に余る。あれじゃ疑惑が晴れてもアウトだ。


『サバイバルファミリー』
 「電池を含む全電力を喪失」という状況設定が楽しい。序盤は都会あるあるな危機感の無さで笑わせ、東京脱出後は主人公一家のバカ過ぎてイラっと来る旅路を軸に色々と考えさせる。意識高い系や自給自足な人々の適応力にグッときた。惜しむらくはディテールが雑過ぎる。それに自転車で鹿児島目指すのは無駄に壮大すぎ。あと、長男の恋の件も邪魔。


ラ・ラ・ランド
 充分に楽しくロマンチックで、切なくドラマチックなミュージカル映画だったが、期待ほどでは無かったのも確か。大人数オープニングからカラフルな4人組やらタップシューズに履き替えるくだりやら序盤で怒濤の盛り上がりを見せた割にダンスシーンが少ない印象。お話的には基本「ダメ人間2人だけの世界」なのでイライラする部分もあるけど、願った夢と叶った夢の狭間を突きつけるラスト20分にグッときた。


『お嬢さん』
 官能性の高さがヤバいし、脚本・演出が凄い。めっちゃ面白かった。第一部は古風で耽美なレズ物サスペンスから入り、第二部で淫靡かつダークな乱歩調の変態度が桁外れに増幅し、第三部では韓流らしい過剰なギャグが冴え渡る。そして韓国キャストの拙い日本語台詞がシュール感を煽る。全篇にわたり完全にどうかしてるのに、最後には多幸感に包まれてる不思議。エンドロールに流れる歌も昭和歌謡ぽくって良かった。


『アシュラ』
 クズ揃いな登場人物が超楽しい血まみれバイオレンス。あまりにハイテンションな韓国ノワールぶりに、この映画が日本の『アウトレイジ』みたいな位置付けなのか、もっとコメディ寄りなのか掴みかねる。顔は松重豊だけど芸風は西村まさ彦っぽい市長さんの極悪ぶりが凄く可笑しい。西島秀俊に激似な主人公の救いようのない小物感もグッド。


『チア☆ダン 〜女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話〜』
 友情・努力・勝利&恋の部活青春モノとしては極めて堅実で可愛く楽しいが、実話ベースにしては偉業達成へのプロセスがさっぱり解らないし、逆転の秘策も説得力皆無。おデブやメガネっ娘の殻を破る姿にも時間を割いて『ピッチ・パーフェクト』並の個性の融合を示すべきだし、地獄先生の指導による精神面の成長も強調すべきだったと思う。


哭声/コクソン
 國村隼がふんどし一丁で殺戮の限りを尽くす韓流サスペンスかと思いきや、宗教色が強く悪霊とかが絡むオカルトだった。そっち方面が嫌いな身としては祈祷師が出てきた辺りでドン引き。夢や幻覚との境界も曖昧な視点で語られたんじゃ、全然わけがわからない。


SING/シング
 好評の吹替版は無視して字幕版を観た。洋楽好きとしては文句なしの選曲で新旧ポップスを堪能できたし、お話はド定番の群像劇をクライマックスのステージに収斂させてて演出と歌詞の力を見せつけられた。けど、遵法意識が低く自己中な主人公を周りが簡単に許しちゃうのは不快。かけた迷惑に見合う落とし前が欲しかった。


パッセンジャー
 冷凍睡眠から早く目覚め孤独に生涯を終える窮地ってなハードSFなのだが、中盤までの悲壮な人間ドラマから一転のエンタメ路線にげんなり。アンディ・ガルシアの無駄遣いぶりから終盤全ボツ案件と邪推するが、それにしてもオチが安直すぎる。上位権限ゲットで状況打開ってのもがっかりで、もっと知恵で解決して欲しかった。


キングコング:髑髏島の巨神
 冒頭の妙な日本人描写&露骨な中国資本キャストで心配になったが、『地獄の黙示録』風味で怪獣大決戦が超楽しい最初から最後までクライマックスな映画だった。人間パートはありきたりだが全然飽きない。コングは開始30分で早々とヒューイ編隊を屠り、その後は大量の怪獣と暴走軍人を相手に次々とバトル。最終決戦は「日本よ、これが怪獣プロレスだ!」ってなアピールがビンビン。ただ、対決予定のギャレゴジとの力量差は心配。


『ムーンライト』
 少年期・青年期・成人期の三部構成で贈る黒人社会の学校カーストで底辺に属した男の物語。良質なドラマだが、過酷な境遇で育つ系にしては悲惨度は軽めで拍子抜け。ゲイ設定はあるものの恋愛映画としてもわりと普通だし。でも、音楽と映像の美しさは印象的。