観た映画(2019年01~03月公開)

蜘蛛の巣を払う女
 原作は『ドラゴン・タトゥーの女』のシリーズらしいが、監督・キャストが一新されジャンル自体も全く違う映画に。あまりにも女性版『007 スカイフォール』で驚いた。スーパー過ぎるハッカー描写が愉しくアクションも多目で退屈はしないが、話がスッカスカで謎解き要素ゼロな点が残念すぎる。

クリード 炎の宿敵』
 シリーズ2作目。父アポロを殺したドラゴの息子と因縁の対決というプロットは、『ロッキー4』が東西冷戦の徒花でラジー賞を賑わした娯楽作なだけに不安だったが、蓋を開ければクリードとロッキーとドラゴそれぞれの家族の話を巧みに配置した感動のドラマだった。ぶっちゃけ、主人公よりドラゴ父子に感情移入してしまったわけだが。

『マスカレード・ホテル』
 キャストや舞台は豪華で、キムタクと長澤まさみがいがみ合いつつ相棒となるお約束の流れも痛快。ホテルマンのトラブル解決ノウハウとかも面白い。ただメインのミステリ部分はイマイチ。わかりやすく配置され過ぎてる伏線、通話記録調べりゃアウトなトリック、挙げ句に無意味に近い偽装工作を「頭が良すぎた」で済ますのがなんとも。

『チワワちゃん』
 原作はバブル時代の若者文化を代表するマンガ家・岡崎京子の短編。当時のサブカルな人々が全員パリピに置き換わってる違和感や、六百万円の件と浅野忠信の収まりの悪さが気になるが、今の若い子たちが感情移入出来ちゃう世界観に巧くアップデートしてるとも思う。

『ミスター・ガラス』
 中途半端な所で終わった『スプリット』の続編にして、00年公開の『アンブレイカブル』まさかの完結編。ジェームズ・マカヴォイの多重人格芸を堪能しつつ、話はヒーロー(或いは怪人)活動する人々と「超能力は妄想」な女医さんの対決へ。それが次第にシャマラン監督とダメ出しする側に重なり・・・。面白いが、いつもながらの微妙な後味。

サスペリア(2018)
 リメイクでも続編でも無くインスパイア。政治色が加わり変に高尚で無駄に話が長い。折角、『フィフティ・シェイズ』のダコタ・ジョンソンや“ヒット・ガール”クロエ・モレッツを揃えたんだから、エログロ無残絵を美しく撮ればそれで良いのに。

ファースト・マン
 臨場感が半端なかったり、ミッションのギリギリ感をわかりやすく伝えたり、作り手は色々工夫してるのだが、如何せん人一倍沈着冷静で寡黙と定評のアームストロング船長の内面を描く狙いなので、全ては淡々と語られドラマは盛り上がりに欠ける。どうしても『ライトスタッフ』や『アポロ13』のような偉業達成の感動を期待しちゃうものね。

『アクアマン』
 変に大人向けを狙って失敗を繰り返してきたDCコミック世界観から距離を置いてファンタジー寄りの冒険活劇に仕立てたのは正解。大半を占める水中シーンが色鮮やかで、バトルでの位置関係も把握しやすい演出なのが好印象。シチリアの地上戦も面白かった。まあ、シナリオが雑過ぎるとか、ヒロインの方が目立ってるとかあるけれど。

女王陛下のお気に入り
 欧州史に疎いので観賞中は全く理解してなかったが、背景の戦争はルイ14世との「スペイン継承戦争」、英国女王側近の座を巡る女の闘いも史実に基づく。そんなこと知らなくても非常にわかりやすい成り上がりモノで、アカデミー賞級の三女優が火花散らす演技合戦は見事。えげつない話なのに基本コメディなのでドロドロし過ぎないのが良い。

『半世界』
 「キネ旬ベスト」と「毎日映コン」で脚本賞を獲った作品だが、その割に盛り込みすぎで中途半端な印象。ただ、キャストに当て書きされた人物描写は秀逸。経営にも親子関係にも問題を抱える鈍感な備長炭職人に稲垣吾郎を起用するセンスが凄い。池脇千鶴も普通のおばさんにしか見えなくて凄い。長谷川博己による護身術指南がためになった。

アリータ:バトル・エンジェル
 原作漫画の『銃夢』は読んでないが90年代のサイバーパンクっぽさは巧く表現されてて、アクション演出も疾走感重視で見応えバッチリ。目がデカいのも直ぐに慣れた。ただ、詰め込み過ぎな上に中途半端なところで終わる脚本はいただけない。続編が作られる保証はないのに。

『翔んで埼玉』
 当て書きレベルでGACKTと二階堂ふみが嵌まる。『のだめ』といい『テルマエ』といい武内英樹監督のキャスティング・センスには脱帽。埼玉ディスりどころか千葉・群馬・茨城に加え都下はおろか西葛西や池袋まで被弾する始末に苦笑する。しかし、関東民ぐらいしか解らなそうな馬鹿馬鹿しい小ネタばかりなのにまさかの大ヒット。謎だ。

『グリーンブック』
 昨今の白人優位批判の風潮でオスカー受賞が問題視されてるらしいが、相棒モノ好きとしては普通に楽しい映画だった。差別が酷い時代のアメリカ南部を裕福な黒人ミュージシャンと運転手兼用心棒の白人が旅するって題材は確かに新味はないけれど、軽妙な掛け合いがあって伏線がいっぱい回収されて衝撃的なピザの食べ方に出会う。それだけで大満足。

スパイダーマン:スパイダーバース』
 複数の世界観のスパイダーマンが登場するCGアニメ。スパイダーマンの基本設定やバリエーションをろくに知らないのでパロディやリスペクト方面は殆ど理解不能なのだが、アメコミがそのまま動く物凄い映像表現に度肝を抜かれた。どんな技術なのかさっぱり解らない。そこに一見実写に見えるキャラから日本の萌えキャラまでが違和感なく収まるのも不思議。

『運び屋』
 予告からは想像もつかないが実はコメディ。87歳で製作・監督・主演。更に室内劇じゃなくロード・ムービー、おまけに運転も自分。元気すぎるジジイに驚く以外にない。実在の運び屋が題材と言いつつ、仕事はスペシャルで家庭人としては失格な役柄はイーストウッドの人物像と重なり超愉しかった。女性ウケは無理なので親爺だけ観れば良し。

『シンプル・フェイバー』
 謎解きとか放っといてアナ・ケンドリックのコメディエンヌぶりを堪能するユーモア・ミステリー。場当たり展開だらけの嘘くさい作劇なのにそこそこ面白いのは、彼女の演じたキャラの魅力による所が大きく、裏が無さそうで有りそうなバカっぽさが超キュート。ファッション演出も見事だった。

キャプテン・マーベル
 スーパーヒロイン物で『アベンジャーズ』絡みとしか知らなかったが、蓋を開けてみれば「若きフューリー長官の冒険」だった。「昔のサミュエル・L・ジャクソンに激似の彼は何者?」と思えば本人出演でビックリ。特殊効果技術もここまで来たのか。主人公は格好良いし話も意外に面白かったが、アクション面ではこれといった見せ場が無いのが残念。

『ブラック・クランズマン』
 KKKに潜入捜査した70年代の実話を題材としてるが、スパイク・リー監督らしく人種や歪んだ思想による対立など現代アメリカを痛烈に批判した内容だった。相棒モノとしても潜入サスペンスとしても割と面白かったが、終わり方にはドン引き。暴力に躊躇しない土壌では、これだけ強いメッセージが要るって事なんだろうけど。