観た映画(2020年4~9月公開)

『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語
『続・若草物語』の途中から始まり、過去と現在を行きつ戻りつする脚色がややこしくも面白い。適齢期を迎えた四姉妹の話に必要な分だけ少女時代のエピソードを挿入することで高密度化を実現している。四人の個性を示す衣装の数々も楽しかった。ただ、キャストの実年齢が高目なので、七年前の四女は未だ十二歳だとか絵面で理解するのは厳しい。

『はちどり』
 90年代コリアン女子の中学生日記。いつの時代もどこでもある思春期の壊れやすい人間関係に加え、韓国社会特有の極端な男尊女卑&上下関係&学歴主義な中での疎外感を繊細に描く。ちょこちょこ入る劇中歌の意味とか色々とピンとこないで戸惑うシーンが多かった。世界的に絶賛されてる部分を半分も理解出来て無い気がするが退屈はしなかった。

ランボー ラスト・ブラッド
 齢七十を過ぎて、まさかの5作目。舞台が戦場じゃなく敵も軍隊じゃないのに、2作目以降の「盛大に殺しまくるランボー」をやった結果、戦争で心に傷を追った悲しい男は完全に罪を問われる側の異常殺戮者に。これでいいのかスタローン。メキシコ・パートのあちこちにもっと肉付けされてた痕跡を残す雑編集が安っぽい。

『透明人間』
 透明人間にネチネチと嫌がらせされて孤立するというアイデアは秀逸で、ストーリーは良く練られ伏線も丁寧に回収してる。だが、追い込まれるスリルを味わう上で、事態収拾不能レベルの展開が中盤に来るのがバランス悪く、後半がやや弱くなったと感じた。

『悪人伝』
 暴力刑事とヤクザのボスが手を組んで連続殺人鬼を追う韓国ノワール。この設定で実話ベースってのが謎だが、アクションありカーチェイスありバイオレンス描写も盛りだくさんでオチも痛快。タフで強くて兇悪で男気溢れる組長のおっさんに比べ、刑事の魅力がやや落ちるのがバディものとしては残念だが。

今日から俺は!! 劇場版』
 ドラマ版キャストもそうだが、新キャラも役作りが素晴らしい。時折挟まる福田雄一監督の独自ギャグがダダ滑りだが原作寄りの部分は面白かった。ただ、敵番長組がズタボロになってから連戦で主役コンビと闘うって展開が奇妙。そもそも、アクションで一番目立ってるのが清野菜名って時点でおかしいが。

『アルプススタンドのはしの方』
 義理で適当に応援する生徒達の不完全燃焼な高校生活のモヤモヤが、表舞台にいる野球部に刺激され昇華する青春群像。やや演劇的すぎるものの、グラウンドを一切映さず野球に疎い女子ーズのトーク中心で試合を描写したりで面白かった。原作の4人舞台劇の出来が良すぎるのか、映画的に広げたっぽい要素が露骨に浮いてるのが残念。

『海辺の映画館 キネマの玉手箱』
 大林宣彦監督の遺作となってなければスルーした3時間大作。異界過ぎて理解が追いつかない作劇、過剰な情報量、炸裂する反戦思想。まさに大林無双。その歴史観や危機感には同意しかねるが、集大成と言われれば「お疲れ様でした」と頭を下げるしかない。

ぐらんぶる
 主演二人が大半のシーンでパンイチかフルチンという、完全にどうかしている青春コメディ。冒頭の全裸ループが強烈過ぎて後半は失速気味だが、大学ダイビングサークルの悪ノリをくだらない方向に振り切れて描いており、そこそこ面白かった。野郎の肌ばかりで精神的に堪えたけど。

『糸』
 贅沢に揃えた主演級俳優陣と中島みゆきの歌の力で成り立ってるが、二つの物語が織りなす布は上出来とは言えず惜しい作品。切れたりほつれたりした糸を紡ぐ話なのに、ヒロインが出逢いと別れで紡いだ糸が全然見えない。親切な知人レベルの主人公が紡いだ糸を認識する機会も無い。双方が「逢うべき糸」と悟り結ばれる理由がさっぱり解らない。

『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』
 カーストの垣根を超えて交流して理解し合うファンキーでお下品なアメリカ学園コメディ。よくあるネタだが、主役がナード女子二人組なのが新しい。文化的にも世代的にもギャグについていくのは厳しかったが、今どきの多様性を認め合う風潮とかポジティヴなメッセージの詰まった青春映画だった。

『ブルータル・ジャスティス』
 メル・ギブソン主演のバディもの刑事アクションだが『リーサル・ウェポン』とは大違いのハード・バイオレンス。なにか前時代的な空気感漂う渋いドラマの端々で人々がサクッと殺される非情な世界の緊張感が堪らない。しかし、ジャスティスなんて欠片も無い話なんだが、何故にこの邦題?

『ミッドウェイ』(2019)
 天下分け目のミッドウェイ海戦をエメリッヒ監督で描くと言うからアメリカ万歳映画かと思えば意外にフェア意識が高い。『インデペンデンス・デイ』的な盛り上がりには欠けるが、諜報戦の巧拙や航空機動部隊運用の妙など丁寧で解りやすい戦記物となっていた。ただ、群像劇としては出来が悪く、工夫無く史実の英雄譚をつぎはぎした感が強い。

『TENET テネット』
 時間逆行設定に理解が追いつかず何が起きてるのかはサッパリなのに、クリストファー・ノーラン監督の奇抜な発想とCGキャンセルな映像の物凄さに圧倒された。鑑賞後にじっくりとSF解釈やタイムラインを咀嚼して大筋に合点が行くと、物語構造が難解と言うより単に脚本が杜撰で不親切なだけの部分が多いという結論になったが。

『ミッドナイトスワン』
 トランスジェンダー女性を演じた草彅剛が話題だが、オリジナル脚本を書いた内田英治監督の手腕も素晴らしい。性的マイノリティへの偏見や差別や無理解を描くだけで無く、育児放棄され愛を知らない自傷癖のバレエ少女と絡め、やがて孤独な二つの心が寄り添って・・・と思ったら一筋縄では終わらない。実に興味深かった。ただ、金持ち同級生の顛末が反映されない点は勿体ない。