観た映画(2020年10~12月公開)

『浅田家!』
 写真家・浅田政志の写真集をモチーフにした「家族」の映画。前半はコスプレして家族写真を撮る変わった一家の魅力的な姿を楽しませ、後半で東日本大震災での写真洗浄ボランティアというシリアス路線に転じつつ、コミカル調も崩さず家族写真を撮る意義を爽やかに纏めた。劇中の家族写真がホームページで観られる実際の写真集と瓜二つで笑う。

『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』
 原作未読、『立志編』は観たが何がウケてるのかピンとこず。本作も普通に面白かったとは思うが、社会現象になるほどの魅力はよくわからない。絵が綺麗だとか技の数々が超カッコイイとか台詞回しが独創的とか、つまり、煉獄さんが格別の人気キャラなのは理解出来るが・・・。

『スパイの妻<劇場版>』
 銀獅子賞受賞作。黒沢清監督らしさ全開の、人間に潜む狂気と相互不理解を突きつけるミステリー。上っ面は必然性の無い行動だらけで微妙な内容だが、それぞれの行動原理に照らすとなかなかどうしてよく練られた脚本。夫婦二人の複雑で正気の沙汰じゃない愛の形が面白かった。なお、ドラマ版は画面サイズと色調が違うだけで内容は全く同じらしい。

『朝が来る』
 特別養子縁組の葛藤や親子のあり方を描く社会派サスペンス。望んでも得られない者と手放さざるを得ない者の人間ドラマが丁寧に描かれ胸に突き刺さる。実親との親権が断絶する日本のシステムと『ジュノ』とかで知る米国のそれとの隔たりなど、色々と考えさせられた。ただ、妊娠させた男にも心に射した影はあるだろうに棚上げなのは残念。

『罪の声』
 「グリコ・森永事件」をモチーフとした未解決事件を、脅迫電話に声を使われた子供達に焦点を当てて追う。30年以上前のお宮入り案件があれよあれよと炙り出される展開は失笑ものだが、なかなかに説得力のある事件の全貌と巻き込まれた者の葛藤は見応えあり。「キツネ目の男」が良い感じに再現されてた。

ばるぼら
 原作は手塚治虫が低迷期に描いたエロチック奇譚。70年代前半の退廃的で狂気なアートの世界の雰囲気が巧く再現されている。だが、設定は現代なので違和感は否めず、原作を知らないとかなり意味不明のため、下手すると二階堂ふみの裸を拝むだけになる。

『燃ゆる女の肖像』
 18世紀のフランスを舞台に、望まない結婚を控える令嬢と、その肖像画を依頼された女性画家が次第に惹かれ合うレズビアンもの。男たちはモブキャラでほぼ女性のみで作劇されてるのが興味深かった。道ならぬ恋はひたすら静かに淡々と描かれ、その先で伏線回収が巧みなエンディングに至り唸らされた。メイドを加えた3人の親密な時間も印象的。

『新解釈・三國志
 三国志についてそこそこ素養もあり福田雄一監督の作風も嫌いではないが、これは厳しかった。ぼやきまくる劉備、かる~いノリの孔明などのキャラ設定は面白そうなのに、それで様々な逸話を成立させるアイデアが乏しすぎる。ギャグも大抵ぐだぐだで笑えない。

ワンダーウーマン 1984
 シリーズ2作目。相変わらずガル・ガドットの役作りは素晴らしいが、「願い」と「代償」の話は生煮えで燃え要素が薄く、アクションも少な目と、スーパーヒーロー物としての出来は微妙。唐突に登場するチーターの雑な扱いも気になった。クリス・パインとのラブロマンス部分は悪くないのだが。

『ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!』
 アクション・スターなイメージのキアヌ・リーブスが、出世作とはいえ「おバカ」役コメディの29年ぶり第三作に出演する英断。ノリと勢いで対処するアホなおっさんたちには笑いより痛々しさが勝るものの、クライマックスは音楽の力でハッピーな気分に。よく見たら死神が5弦ベースでクール。二人娘のパートにはもっと尺を割いて欲しかった。