観た映画(2021年1~3月公開)

『新感染半島 ファイナル・ステージ』
 韓国ゾンビパニックの続編だが、前作と同じ監督とは思えないほど別物だった。平野美宇っぽい娘のドリフトでゾンビをなぎ倒すのは痛快だが、期待したのはコレジャナイ。人間ドラマ、特に主人公のキャラが希薄すぎる。日本映画と見紛う冗長な終盤も印象悪い。

 

『Swallow/スワロウ』
 スリラー映画かと思って観たらリアルにメンヘラな話だった。妊娠とストレスで異食症を患うヒロインに感情移入するのが正しいのだろうが、悪気無くストレスを与えてる夫や義父母の側を単純に無神経とも思えずキツかった。どうすれば正解なのか?

 

『KCIA 南山の部長たち』
 朴大統領暗殺事件を基に、側近中の側近が何故凶行に奔ったのかを描く政治フィクション。当時の軍事政権がさっさと処刑しちゃって動機は迷宮入りらしい。「人権外交」のカーター政権が槍玉に挙げてたぐらいしか背景を知らず、権力闘争の構図も理解しきれなかったが、マフィア同然の大統領府で忠誠争いの幼稚な衝突とか韓国らしくて楽しかった。

 

『花束みたいな恋をした』
 同じ趣味嗜好の最高の相手と恋に落ち同棲、生活に追われる中で価値観が違っていく。昔っからドラマや歌詞で取り上げられてきたテーマを菅田将暉×有村架純で令和の若者に贈る。お手本みたいに、素敵な出会いと積もるわだかまりと爽やかな別れが描かれてて感心。ただ、劇中のサブカル的アレコレの殆どを名前すら聞いたこと無くてビックリした。


『哀愁しんでれら』
 社会を震撼させる凶悪事件を起こす女の話と宣伝されてる割に事件はなかなか起こらない。そこに至るまでの流れもリアリティに欠ける部分が目立ちすぎる。褒め言葉としての「作り手の性格の悪さ」が随所にちりばめられてるのに、丁寧さに欠けブラックなオチに収束しきれないもどかしさを感じた。

 

『すばらしき世界』
 佐木隆三の約30年前の犯罪ルポ『身分帳』を西川美和監督が暴対法のある現代に落とし込んだ、刑期を終えた元ヤクザの社会復帰奮闘記。愛おしさと暴力性が同居する役所広司の凄味に圧倒された。登場人物の殆どが善意で接してくれて、主人公も応えようと懸命に努力して、それでも直情型の性格が災いし挫折を繰り返す。元受刑者に不寛容な日本社会を描くだけで無く、迎合すべき場所なのかまで問う終盤の容赦ない展開に唸らされた。

 

『あのこは貴族』
 日本の良家のお嬢さんやら地方の娘さんは、型に嵌まった人生や家父長的な構造を求められがちで悩ましいという女性映画。劇中で云うように「女同士を分断する必要はない」というスタンスが特徴的だった。上流階級にもエグゼクティブにも出会う事ない階層の都民としては忸怩たる想いを抱えつつ、色々と腑に落ちてエールを送る気分に。


『太陽は動かない』
 原作・吉田修一のスパイアクション。定期連絡しないと爆死というバカっぽい設定は作者の責任だが、そもそも作劇が下手すぎて苛々する。本筋よりも枝葉に注力し話が頭に入らず、盛り上げるべき所でアクション無し。救出対象の描写不足でスリル感も皆無。

 

『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』
 数多の謎や伏線っぽいあれこれを放り出し、それらしいワードを並べて誤魔化した感も多々あれど、四半世紀に渡る物語が一応の大団円に漕ぎ着けたことは感慨深い。ぶっちゃけ無駄に性的でキモい描写に溢れ、強引に次ぐ強引な展開の割に意外と普通な着地点なわけだが、『ボイジャー』が流れてきて全てを持って行った。

 

トムとジェリー
 なぜ欧米人はアニメと実写を融合させたがるのかとぼやきつつも、主役がクロエ・グレース・モレッツで久々にコミカルでキュートな役柄とくれば観ざるを得ない。ドタバタと追いかけっこし破壊を繰り広げるキャラ達と実写との絡みは割と上手くいっていて、トムとジェリーは無言で正解。ただ、ストーリーはかなり薄っぺらくてご都合主義。

 

『騙し絵の牙』
 豪華キャストのエンタメ映画として面白かった。ただ、宣伝や表題が想起させるコン・ゲームな感じじゃなくて、主導権争いの駆け引きがメイン。大泉洋に当て書きされた原作という触れ込みだが実質の主役は松岡茉優だったし。無理矢理な部分や使い捨てキャラが散見してて巧い脚本とは言い難いが、テンポよく進めて誤魔化す力技が素晴らしい。

 

『映画 モンスターハンター
 このゲームのことよく知らないが、それでも伝わるコレジャナイ感。怪獣が現代兵器を屠るシーンばかりで、ファンタジックな白兵戦で巨大モンスターを狩る話には全然なってない。久しぶりにムエタイ超人トニー・ジャーのアクションを堪能できて楽しかったが。

 

ノマドランド』
 現代アメリカ事情として興味深いが、色々と疑問符。年金で老後を賄えず車上生活しながら転々と季節労働って所までは理解出来るが、社会構造を批判するでも無くポジティヴに大自然の中を自由に旅するって方向で纏まるのがなんとも。ヒッピー世代だからか?しかも、黒人貧困層は彼らよりも過酷な環境に置かれてるっぽいのが悩ましい。