観た映画(2019年7~9月公開)

『Diner ダイナー』
 独特の色彩表現は苦手だが、平山夢明の凄惨な原作をR指定無しに撮るなら蜷川実花監督の作風は合うと期待した。実際、怖さが無いのが残念だが、奇抜なキャラ達のシュールな世界は良い雰囲気だった。でも終盤の酷いアクションと蛇足な恋愛要素で全て台無し。

『天気の子』
 『君の名は。』のメガヒットで一般ウケにシフトするかと思いきや、ピーターパン・シンドロームなアプローチで突っ走って、あの物議を醸すだろうオチ。新海誠監督はガチだと思った。明らかに意図的なご都合主義連発や拳銃関連の不自然さには笑うしかない。東京の街並みの再現力や雨描写も素晴らしい。

アルキメデスの大戦』
 戦艦大和の建造阻止に挑む数学の天才の話。結果は皆さんご存じな話を如何に盛り上げ決着させるのか興味津々。数学的アプローチとか表面をなぞってるだけで、無理難題の数々は殆ど主人公の天才性だけで克服する酷い流れなのに、菅田将暉柄本佑のバディ感が楽しく、何より二転三転な攻防からの決着にツイストが効いていた。

『メランコリック』
 低予算インディー映画ながら色々凄いと噂の巻き込まれ型サスペンス・コメディ。とにかく予想がつかないストーリーテリングに唸らされた。コーエン兄弟っぽいダークなユーモア&バイオレンスを日本化しホンワカと纏めた印象。全然見覚えのない役者さんばかりなのに嵌まりっぷりが見事で、特に「松本」役の多面性が良かった。

『ダンスウィズミー』
 催眠で急に歌い踊る着想がバカで面白いし、笑えるシーンは一杯あり、踊りまくる三吉彩花は本当に楽しかった。門外漢なやしろ優とchayの演技も意外にいける。でも、総じて勿体ない。脳内と現実のギャップの見せ方に難があるし、後半にゴージャスな妄想シーンが殆ど無いのもがっかり。終わり方は素敵だけど、貧乏が解消しないのでモヤモヤ。

ロケットマン
 エルトン・ジョンの伝記ミュージカル。同性愛者として苦難の道を歩みドラッグと酒に蝕ばまれ更正する迄が描かれるが、歌詞を書いてるのはエルトンじゃないのに歌詞に合わせて作劇されてるって事は、たぶん話は脚色だらけ。その割に盛り上がらないのは本人存命が足枷か。『ライオン・キング』や「ダイアナ妃」の話には至らないで終わるのも残念。

『火口のふたり』
 出演は基本的に柄本佑瀧内公美のみでシーンの半分は濡れ場ながら、「キネ旬ベスト」の1位&主演女優賞獲得の官能映画。エロさや美しさよりも艶笑話として際立ってて、モラルを放り出してダラダラと性に溺れるだけの男女が異様に滑稽だった。終盤のまさかな展開は表題の「火口」につながるからたぶん原作通りだと思うけど・・・なんなんだ?

『引っ越し大名!』
 幾度も国替を重ねた越前松平家をモチーフにしたコメディ時代劇。不自然なギャグをちょこちょこ挟むのが難だが、話の大筋は普通に面白い。ただ、取って付けたような謀略や半端なミュージカルや冗長なアクションに尺を使うより、もっと知恵と人情なプロジェクト系の盛り上がりに力点を置いて欲しかった。

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
 ディカプリオとブラピの関係が可笑しくも胸熱で、ニアミスしつつ二人とは別の日常を送るヒロインも超キュートだった。シャロン・テートの事件を忘れてた故に所々意味不明だったが最後まで愉快に観れた。タランティーノ映画は常に固有名詞検索必須であり、調べれば別の面白みを逃したと知る。でも、テレビに洋画や洋ドラが流れる毎日の70年代を体験した世代としては、懐かしく夢のような楽しい世界で、長尺は苦にならず。

『アス』
 現代アメリカ風刺色の強いスリラー。主役が全員黒人のためか米国での評価は妙に高いが、正直ピンとこないで眠かった。特に中盤以降に加速していく荒唐無稽ぶりには呆れるばかりで、特権に与れる者の裏にいる恵まれない人々の事を真面目に考える気も失せる。

『記憶にございません!』
 三谷幸喜監督にしては「脚本の妙」が少なめ。ウィットに富んで心暖まる手堅いコメディなので気軽に楽しめるが、小さく纏まった感は否めない。事情により何者かを演じるお得意の枠組みに加え、三谷ドラマ『総理と呼ばないで』と同じような構図なので新味にも乏しい。

アイネクライネナハトムジーク
 原作は未読だが 、おそらく伊坂幸太郎が得意とする登場人物が巧妙に繋がって収束する群像劇なのだろう。叙述トリックだったりのパズル的快楽部分が弱まってると推測され、全体に薄味な印象は否めない。伊坂ワールドのイメージを崩さず、いくつもの素敵な出会いがあり爽やかな余韻を残す恋愛ドラマに仕上がってはいるけれども。

『アド・アストラ』
 批評家好評も一般ウケしないってのは本格SFにありがちだが、コイツは数多のハードSF映画の要素を寄せ集めてみたものの纏める力量も科学知識も持ち合わせてないって代物。ドラマも在り来たりすぎてブラピ&宇宙人ジョーンズでもカバーできない。

『ホテル・ムンバイ』
 ムンバイ同時多発テロを題材にした超一級品のスリラー。とにかくテロ描写が地獄絵図で緊張感が半端なかった。正解か墓穴か判らない行動選択の連続で、意外な所であっさり退場するキャラだらけ。物凄く怖いがグイグイ引き込まれる。冷酷無比な殺戮者が貧乏で無知で組織に踊らされた殉教者達だって事も描かれ、理不尽な暴力に憤りつつも富める側としてはなんとも言えない気持ちに・・・。

観た映画(2019年4~6月公開)

麻雀放浪記2020』
 「これ、本当に白石和彌監督?ダメな時の三池崇史園子温じゃなくて?」って思うぐらいおつむのネジが緩んだ世界観で驚いた。正直、社会風刺的要素は邪魔くさいだけなのだが、現代に現れた昭和の博打打ちのカルチャー・ギャップ・コメディ部分はそれなりに面白かった。84年版のオマージュが至る所に散りばめられてるのも嬉しい。

『ハンターキラー 潜航せよ』
 リアリティは気にせずにカッコいい男達に胸を熱くするB級ミリタリー。とにかくテンポが良く、よくある展開ばっかなのに飽きさせない。潜水艦・陸の特殊部隊・司令部のパートが切り替わりつつ進行する間に各々のキャラも作戦状況もアクションの位置関係もきっちり伝わる。味方は全員が超有能で人格者揃いという勧善懲悪ぶりも爽快。

『愛がなんだ』
 若い女性にウケてロングランヒットしたらしいが、何が刺さったのか正直よくわからない。主役の岸井ゆきのは痛々しいほど一途だが共感は難しそうなトンデモ女だし、成田凌は安定のサイテー男ぶりだし。とはいえ、こんなドロドロの報われない恋模様を軽快に描いてしまう手腕は見事。カメラマン君との対比とか脚本も巧い。

アガサ・クリスティー ねじれた家』
 クリスティーなのに最後まで探偵が全く活躍しないで唖然。ミステリーとしては古典の部類かつ、演出もミスリードが下手なので盛り上がりに欠ける。海外ドラマで見かける女優さんがちらほらってのと、ヒロインのステファニー・マティーニの美貌が見所。

アベンジャーズ/エンドゲーム』
 前作『インフィニティ・ウォー』の続きだけど『アントマン&ワスプ』『キャプテン・マーベル』のオマケ・シーンも鑑賞必須。その他、シリーズの記憶を総動員せざるを得ない構成なので長くは感じない3時間だった。これだけの豪華キャストを揃えるだけでも偉業なのに、各々に見せ場もあるし話も力技に頼らず綺麗に纏まってた。ギャグ多目なのも凄い。キャロル強すぎ問題が未解決なのと東京シーンが全体にアレな点は不満だけど。

『名探偵ピカチュウ
 ポケモンたちの基礎知識すら持たない身としては、ほぼ『ズートピア』な世界観を楽しむしかなかったわけだが、デフォルメが予想以上にかわいいし実写との共存も違和感なしで素晴らしかった。ただ、研究所潜入の辺りから探偵モノを逸脱するのが残念。最後は良い話っぽく纏めたが山場はかなり雑。ヒロインや刑事を絡めないのは勿体ない。

『居眠り磐音』
 佐伯泰英のロングラン時代小説の映画化って事で松竹もシリーズ化を狙ってるらしく役者が豪華。それがあっさり死んだり顔見せ程度で退場したりするので、意外性はあるが落ち着かない。メインキャラの描写に時間を割かず直ぐ台詞で説明しちゃうのも苛つく。とはいえ、王道娯楽活劇として手堅い造りで、集客不足で終わらせるには惜しい。

アメリカン・アニマルズ』
 当事者や家族による証言を織り交ぜつつ再現される、無駄に実行力があるボンクラ大学生達が起こした窃盗事件の顛末記。計画から実行までウルトラにおバカな若者たちがスタイリッシュに描かれてるのが異様に可笑しかった。青春映画なのに彼らに全然女っ気がないのが物哀しい。オーデュボンの本『アメリカの鳥類』の巨大さに驚かされた。

『空母いぶき』
 俳優陣は頑張っているが、どうにも食えない生煮え脚本。脈絡無く差し込まれるコンビニのシーンや、情勢に影響しない低レベルな記者達もキツイが、根本的に足枷だらけの自衛隊の有事対応や政治的なドラマ部分で納得性が低すぎる。特に捕虜のくだりが稚拙。

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』
 所謂「ギャレゴジ」の続きだが、後任マイケル・ドハティ監督のゴジラ愛がスパークし過ぎて、悪い意味で「日本の怪獣特撮映画」っぽい仕上がりに。即ち、怪獣プロレスばかりに全力で、ドラマが子供向け・・・というか出鱈目。そして説明台詞が跋扈。まあ、オマージュだらけでゴジラ好きには堪らないんだけどね。

ザ・ファブル
 色々アンバランス。凄いが細かすぎて伝わらないアクション。たぶん岡田准一本人が凝った銃撃動作や高度な格闘術を駆使してるが殆どが覆面姿。主役はクドく相棒の娘は妙に薄いキャラ設定。ヤクザ演出がなぜかサイコパス。そして徹底してスベるギャグと比し爆笑の主題歌選曲。総合的には豪華キャスト熱演で面白いっちゃ面白い映画だったが。

スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』
 マーベル版の2作目だが『アベンジャーズ/エンドゲーム』の後日談の意味合いのが大きい。でかくなりすぎたスケールを修正する工夫に満ちてて、高校生ヒーローの青春模様と成長の物語という本来の形に無理なく帰結して感心。ガジェット類を駆使したアクションも面白かった。「ツェッペリン大好き!」の曲が実は『AC/DC』というハードロック好きの爺向けギャグは日本だと気づかない観客が多そう。

観た映画(2019年01~03月公開)

蜘蛛の巣を払う女
 原作は『ドラゴン・タトゥーの女』のシリーズらしいが、監督・キャストが一新されジャンル自体も全く違う映画に。あまりにも女性版『007 スカイフォール』で驚いた。スーパー過ぎるハッカー描写が愉しくアクションも多目で退屈はしないが、話がスッカスカで謎解き要素ゼロな点が残念すぎる。

クリード 炎の宿敵』
 シリーズ2作目。父アポロを殺したドラゴの息子と因縁の対決というプロットは、『ロッキー4』が東西冷戦の徒花でラジー賞を賑わした娯楽作なだけに不安だったが、蓋を開ければクリードとロッキーとドラゴそれぞれの家族の話を巧みに配置した感動のドラマだった。ぶっちゃけ、主人公よりドラゴ父子に感情移入してしまったわけだが。

『マスカレード・ホテル』
 キャストや舞台は豪華で、キムタクと長澤まさみがいがみ合いつつ相棒となるお約束の流れも痛快。ホテルマンのトラブル解決ノウハウとかも面白い。ただメインのミステリ部分はイマイチ。わかりやすく配置され過ぎてる伏線、通話記録調べりゃアウトなトリック、挙げ句に無意味に近い偽装工作を「頭が良すぎた」で済ますのがなんとも。

『チワワちゃん』
 原作はバブル時代の若者文化を代表するマンガ家・岡崎京子の短編。当時のサブカルな人々が全員パリピに置き換わってる違和感や、六百万円の件と浅野忠信の収まりの悪さが気になるが、今の若い子たちが感情移入出来ちゃう世界観に巧くアップデートしてるとも思う。

『ミスター・ガラス』
 中途半端な所で終わった『スプリット』の続編にして、00年公開の『アンブレイカブル』まさかの完結編。ジェームズ・マカヴォイの多重人格芸を堪能しつつ、話はヒーロー(或いは怪人)活動する人々と「超能力は妄想」な女医さんの対決へ。それが次第にシャマラン監督とダメ出しする側に重なり・・・。面白いが、いつもながらの微妙な後味。

サスペリア(2018)
 リメイクでも続編でも無くインスパイア。政治色が加わり変に高尚で無駄に話が長い。折角、『フィフティ・シェイズ』のダコタ・ジョンソンや“ヒット・ガール”クロエ・モレッツを揃えたんだから、エログロ無残絵を美しく撮ればそれで良いのに。

ファースト・マン
 臨場感が半端なかったり、ミッションのギリギリ感をわかりやすく伝えたり、作り手は色々工夫してるのだが、如何せん人一倍沈着冷静で寡黙と定評のアームストロング船長の内面を描く狙いなので、全ては淡々と語られドラマは盛り上がりに欠ける。どうしても『ライトスタッフ』や『アポロ13』のような偉業達成の感動を期待しちゃうものね。

『アクアマン』
 変に大人向けを狙って失敗を繰り返してきたDCコミック世界観から距離を置いてファンタジー寄りの冒険活劇に仕立てたのは正解。大半を占める水中シーンが色鮮やかで、バトルでの位置関係も把握しやすい演出なのが好印象。シチリアの地上戦も面白かった。まあ、シナリオが雑過ぎるとか、ヒロインの方が目立ってるとかあるけれど。

女王陛下のお気に入り
 欧州史に疎いので観賞中は全く理解してなかったが、背景の戦争はルイ14世との「スペイン継承戦争」、英国女王側近の座を巡る女の闘いも史実に基づく。そんなこと知らなくても非常にわかりやすい成り上がりモノで、アカデミー賞級の三女優が火花散らす演技合戦は見事。えげつない話なのに基本コメディなのでドロドロし過ぎないのが良い。

『半世界』
 「キネ旬ベスト」と「毎日映コン」で脚本賞を獲った作品だが、その割に盛り込みすぎで中途半端な印象。ただ、キャストに当て書きされた人物描写は秀逸。経営にも親子関係にも問題を抱える鈍感な備長炭職人に稲垣吾郎を起用するセンスが凄い。池脇千鶴も普通のおばさんにしか見えなくて凄い。長谷川博己による護身術指南がためになった。

アリータ:バトル・エンジェル
 原作漫画の『銃夢』は読んでないが90年代のサイバーパンクっぽさは巧く表現されてて、アクション演出も疾走感重視で見応えバッチリ。目がデカいのも直ぐに慣れた。ただ、詰め込み過ぎな上に中途半端なところで終わる脚本はいただけない。続編が作られる保証はないのに。

『翔んで埼玉』
 当て書きレベルでGACKTと二階堂ふみが嵌まる。『のだめ』といい『テルマエ』といい武内英樹監督のキャスティング・センスには脱帽。埼玉ディスりどころか千葉・群馬・茨城に加え都下はおろか西葛西や池袋まで被弾する始末に苦笑する。しかし、関東民ぐらいしか解らなそうな馬鹿馬鹿しい小ネタばかりなのにまさかの大ヒット。謎だ。

『グリーンブック』
 昨今の白人優位批判の風潮でオスカー受賞が問題視されてるらしいが、相棒モノ好きとしては普通に楽しい映画だった。差別が酷い時代のアメリカ南部を裕福な黒人ミュージシャンと運転手兼用心棒の白人が旅するって題材は確かに新味はないけれど、軽妙な掛け合いがあって伏線がいっぱい回収されて衝撃的なピザの食べ方に出会う。それだけで大満足。

スパイダーマン:スパイダーバース』
 複数の世界観のスパイダーマンが登場するCGアニメ。スパイダーマンの基本設定やバリエーションをろくに知らないのでパロディやリスペクト方面は殆ど理解不能なのだが、アメコミがそのまま動く物凄い映像表現に度肝を抜かれた。どんな技術なのかさっぱり解らない。そこに一見実写に見えるキャラから日本の萌えキャラまでが違和感なく収まるのも不思議。

『運び屋』
 予告からは想像もつかないが実はコメディ。87歳で製作・監督・主演。更に室内劇じゃなくロード・ムービー、おまけに運転も自分。元気すぎるジジイに驚く以外にない。実在の運び屋が題材と言いつつ、仕事はスペシャルで家庭人としては失格な役柄はイーストウッドの人物像と重なり超愉しかった。女性ウケは無理なので親爺だけ観れば良し。

『シンプル・フェイバー』
 謎解きとか放っといてアナ・ケンドリックのコメディエンヌぶりを堪能するユーモア・ミステリー。場当たり展開だらけの嘘くさい作劇なのにそこそこ面白いのは、彼女の演じたキャラの魅力による所が大きく、裏が無さそうで有りそうなバカっぽさが超キュート。ファッション演出も見事だった。

キャプテン・マーベル
 スーパーヒロイン物で『アベンジャーズ』絡みとしか知らなかったが、蓋を開けてみれば「若きフューリー長官の冒険」だった。「昔のサミュエル・L・ジャクソンに激似の彼は何者?」と思えば本人出演でビックリ。特殊効果技術もここまで来たのか。主人公は格好良いし話も意外に面白かったが、アクション面ではこれといった見せ場が無いのが残念。

『ブラック・クランズマン』
 KKKに潜入捜査した70年代の実話を題材としてるが、スパイク・リー監督らしく人種や歪んだ思想による対立など現代アメリカを痛烈に批判した内容だった。相棒モノとしても潜入サスペンスとしても割と面白かったが、終わり方にはドン引き。暴力に躊躇しない土壌では、これだけ強いメッセージが要るって事なんだろうけど。

観た映画(2018年10~12月公開)

 『フィフティ・シェイズ・フリード
 惰性で観た三部作最終作。官能方面もセレブ方面もスケールダウンして、チープなラブサスペンスになってしまった。とにかく全般的にエッジが効いてない。でも、内容と裏腹にサントラはポップな曲が粒ぞろいで嗤う。

イコライザー2』
 続編だけど単独で成立。周到な準備で状況を瞬時に識別し、手近にあるものを武器にスマートに悪人を殺戮する戦闘スタイルは今回も健在。アクション超楽しい。ただ、本筋であるべき必殺仕事人として勝手に人助けの日々を送る話と、親友殺しの真相を追う話が巧く混ざってないので幾分バランスが悪い。

『チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛』
 17世紀のオランダにチューリップ狂時代が在ったとか全然知らなかったので歴史や当時の文化・風俗方面でタメになった。豪商の妻が貧乏画家と恋に落ちてってな在り来たりロマンスも後半は意外な展開となり退屈はしなかった。画家が修道院長に気に入られる件が理解不能だったり、球根取引関連のシステムが急ぎ足で分かり辛いのが難。

日日是好日
 茶道を通じて学ぶ、五感で味わう生きる歓び。非常に静かで地味だけど素敵な映画だった。和のモノは覚えてからが稽古なんだとつくづく。二十歳から四十代まで演じた黒木華の所作が見事で、素人目にも心の成長と佇まいの変化がひしひしと伝わる。そして、公開直前に突然の別れが訪れてしまった樹木希林さん演ずるお茶の先生の圧巻の重みと温かみ。「毎年同じことができるということが本当に幸せなんですね」って台詞がもう・・・。

デス・ウィッシュ
 残酷描写に定評のイーライ・ロス監督による『狼よさらば』リメイク。でも暴力面は意外にマイルドで、それよりもお手軽に動画が見られたり撮られたりなネット時代的演出が面白かった。「銃による自警活動を称賛」とか目くじら立てるよりも、「アメリカって大変だよなぁ」と思いつつ娯楽作品と割り切って楽しむべき。

ピッチ・パーフェクト ラストステージ』
 シリーズ3作目ともなると、どうにも話は薄っぺらい。コメディのパンチ力もかなり衰えている。けど、今どきのポップな楽曲に疎くても楽しめるレベルで、キュートな美女達の刺激的で面白いア・カペラとダンスが披露されるので文句は無い。90分じゃ物足りない事を除けば。

『ヴェノム』
 『寄生獣』みたいな血まみれダーク路線かと思ったらコミカルでポップなヒーローものだったという予告編詐欺。設定上は人食い生物なのにグロ描写はぬるく恐怖感皆無なのにがっかりだが、『仮面ライダー電王』的なバディ感が心地よくテンポも良い。ただ、ちょっとシーンを足してくれれば解決しそうな説明不足が彼方此方にあってモヤモヤする。

ボヘミアン・ラプソディ
 事実関係が大きく異なるとわかって観てても終盤の怒濤の泣かせにゃあらがえず。ライブエイドのシーンは口パクなのに実際の記録映像より感動してしまう。あそこで演った曲の歌詞にシンクロするように本編を作劇したんだろうから凄まじい。エンドロールの「ドント・ストップ・ミー・ナウ」と「ショウ・マスト・ゴー・オン」で余命の生き様を表現したセンスにもガツンときた。

ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ
 前作は観てなくてもOK。メキシコの兇悪麻薬カルテルと渡り合う凄惨なテイストはそのままに、違法も辞さず合理的で非情だった親爺ペアも少しだけ人間味あるキャラに変更され、コレはコレでグッとくる。銃連射シーンには驚愕。そして、女子高生役のラテン系の娘が可愛かった。なお、前回の主演女優エミリー・ブラントは出てこない。

『ハード・コア』(2018)
 山田孝之佐藤健荒川良々&古臭いロボットの昭和感溢れるポスターに惹かれ鑑賞。シュールなドタバタ喜劇を想像したんだが、意外に笑えそうで笑えないハードボイルドな話だった。予想つかない展開でそこそこ面白いが、どうにも話が膨らまない。

『ヘレディタリー/継承』
 「映画秘宝」界隈ではスゲー怖いと絶賛のホラーなわけだが、個人的には全然。ムードや女優さんの顔芸は確かに良い感じだけど、妄想を疑わせる演出やスピリチュアル要素に辟易して始終醒めていた。

『来る』
 癖の強い中島哲也監督らしく徹頭徹尾やり過ぎてて、不快感ばかり強いがホラーとしては全く怖くない。重要な部分が異様に曖昧だし。だが、終盤に入って無駄に壮大な霊能バトルものにギヤチェンジすると「何故の嵐」なバカ映画として楽しめた。おいしいとこは柴田理恵が全部持って行った。

『暁に祈れ』
 タイの刑務所を舞台にした実録ムエタイ映画と言うことでスポ根ドラマを想像してたが全然違った。敢えてタイ語部分は字幕無しで進行するドラマは、威圧的で言葉の通じぬ全身タトゥーの囚人たちに囲まれた監獄生活。賄賂が無いと色々キツイ劣悪な環境は、非常に怖い脅しばかりで緊張感が半端なかった。終盤にはムエタイ燃え展開もちゃんとある。

アリー/ スター誕生
 手堅くオーソドックスに現代リメイク。レディー・ガガの歌唱シーンは掛け値無しで演技の方も案外いけてた。初監督・主演に加え歌も無難にこなすブラッドリー・クーパーにも驚かされた。ただ、カントリー・ロックからダンス・ポップに転身ってとこのモヤモヤ感が強いし、粒揃い楽曲の中でその売れ線の曲ってのの出来が微妙なのが困る。

観た映画(2018年7~9月公開)

バトル・オブ・ザ・セクシーズ
 お蝶夫人が未婚で夫人呼ばわりな原因、かつて女子テニス界に君臨したビリー・ジーン・キング夫人が、男女同権を訴えて男尊女卑な殿堂入りシニアと行った世紀の一戦を描く・・・のだが、賃金格差や性差別はあまり強調されず、裏で互いに抱えていた別の家庭問題がクローズアップされる。予想と全然違う内容だったが、これはこれで良し。

菊とギロチン
 劇中の台詞にある通り「何言ってるんだ?意味わかんねぇ!」の変な映画だった。差別的で不寛容な社会へと向かう事に警鐘を鳴らしたいのは解るんだが、左翼思想がパワフルに炸裂しまくってるせいで大事な所で失笑の繰り返し。テロリストと女相撲の境遇にもっと相似性なり対照性なりがあれば・・・。

ジュラシック・ワールド/炎の王国
 まさかのスケールダウン。マンネリとの戦いなのは解るが、このシリーズに客が求めるのはコレジャナイ。悪い奴しかいない舞台で恐竜達が暴れてもハラハラしないし、オチ自体は嫌いじゃないが主人公達の頑張りは台無しでキッズ向けとしては不適。

未来のミライ
 細かいディテールとか子供描写は素晴らしいんだけど、何でもありあり過ぎる。幼児の想像の世界ならそれも良いけど、現実をバンバン混ぜて強引にSF的な説明つけられちゃイラッとくる。そもそも細田守監督は四歳児に求め過ぎだ。ちゃんと大人が導けばいい。

ウインド・リバー
 過疎なネイティブ居留地の無法地帯化にインスパイアされた社会派ドラマ。ミステリーとしては捻りがないが、現代アメリカの闇を描く重い内容ながら勧善懲悪の西部劇にもなってて面白かった。ただ、万単位の住人がいて地元警察僅か6人ってのを許容しちゃう先住民の感覚がさっぱり理解出来ない。増員しても汚職警官が蔓延るだけだからか?

ミッション:インポッシブル/フォールアウト
 アクションありきで後付けシナリオと聞いてたので覚悟してたけど、やはりコントみたいな謎行動が満載。でもトム・クルーズ56歳が不可能ミッションに挑戦するノースタント作品だとわかって観れば、惜しみない拍手を贈るしかない。足砕いたのニュースになってたし。予告にあった超凄いアクションを本編未収録にしちゃう大胆な編集にも脱帽。

ペンギン・ハイウェイ
 謎めいた予告編が気になって観たアニメ映画。いちいち可愛いペンギンの動きと「探求するんだ!科学の心だ!」な正統派ジュブナイルを堪能してたら、『惑星ソラリス』の「海」っぽいのが出てきて子供向けにしては難解なSFに。面白かったが、観る側の想像に委ねる謎が多すぎる気はする。「巾着袋」とかヒントを丁寧に置いてはいるけど。

検察側の罪人
 司法制度の問題点を描いた題材は面白いしキャストの大げさな芝居も楽しいが、原田眞人監督の作家性がスパークしまくってて変な所が多すぎる。日本社会の問題を盛り込んだというより無理矢理混ぜただけで、ノイズどころかメインの話が破綻するレベルで邪魔。

アントマン&ワスプ
 一見さんにもわかりやすい非常に良く出来た続編。アイデア満載のアクションが愉しく、「縮小&巨大化」を万能になりすぎないように調整してる事に感心する。とかく殺伐としがちな最近の『アベンジャーズ』界隈で、善い人達と憎めない敵に囲まれてコミカルにミッションをこなす姿にほっこり。なのに、最後の最後で世界観ぶち壊しなのが許せない。

『MEG ザ・モンスター』
 良くも悪くもない中途半端なサメ映画。テンポ良く話は進み、ジェイソン・ステイサムは出ずっぱりで活躍してて、サメも大暴れしてるので意外と退屈はしない。だが、パニック性は皆無で、中国側の規制なのか残虐描写も全然無くて、ネタになるようなバカ展開もなく、何のための入れたのか不明なシーンは多々ある。

愛しのアイリーン
 国際結婚ネタのブラック・コメディーをイメージしてたら、かなり差別的・暴力的なドロドロの情念を突きつけられ、『ヒメアノ~ル』の吉田恵輔監督の作風と覚悟しててもキツい内容だった。痛々しくて笑うに笑えない愛憎劇だが着地は見事。安田顕木野花の熱演も賞賛に値するが、とにかくアイリーン役のフィリピン女優さんがすごくよかった。

若おかみは小学生!
 噂どおり質の高い女児向けアニメだったが、主におっさんにばかうけという事実には頭がクラクラする。ファンタジー嫌いな身としては正直お話自体はそれほど。けど、総集編のお手本のような作品で、構成が抜群に巧いのは間違いない。駆け足過ぎず端折り過ぎずで丁寧に組まれた濃密な一時間半に唸らされる事しきり。

純平、考え直せ
 朝ドラのヌードモデル役で世に出た柳ゆり菜が本当に脱いだと話題のチンピラ映画。主演の鉄砲玉は『ちはやふる』の野村周平で、これが嵌まり役。髪まで切って熱演の柳ゆり菜との決行までの3日間の恋愛模様はベタだけどグッとくる。ただ、二人に絡む周辺人物や裏で展開するSNS上の人々の心情を追う群像劇としては掘り下げが甘い。

『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』
 中国の集団カンニング事件をモチーフにしたタイ映画。意外なことに手口自体はかなり杜撰なんだけど、クライム・サスペンスみたいな演出で超ハラハラさせられた。主人公がカンニングをさせる側というのが新しいし、学歴至上主義・金持ち優遇・不正の横行などの社会問題を背景に倫理感の危うい天才たちが揺れに揺れる脚本もよく出来てる。貨幣単位がバーツなのでピンとこないのが難点。冒頭の学費が平均年収と同じぐらいらしい。

クワイエット・プレイス
 音に反応して襲う敵を前に臨月間近の妊婦を抱える家族という状況設定は面白い。だが、スリルのピークが出産シーンになっちゃって緊張感を最後まで保つのは難しかった。「防音対策これだけ?」「もっと対処法があるだろう?」とか考える暇があるのはマイナス。弱点バレも早過ぎ。

クレイジー・リッチ!
 下品な成金の贅沢三昧を風刺する話かと思いきやハーレクイン・ロマンスだった。彼氏の正体は名家の御曹司で玉の輿への嫌がらせやら格差故の障壁やらの古典的なヤツ。でもオールアジア系ハリウッド映画って事で、シンガポール人の中国系米国人への偏見とか価値観の相違が描かれてる所が新しい。好感度高めの人物が多くラブコメとしても爽快。

観た映画(2018年4~6月公開)

娼年

 組織票OKの映画ベストテンで上位に食い込み松坂桃李の人気を知らしめた作品。なので女性向けポルノを想定してたんだけど、あまりロマンチックなシーンは無くて逆に驚く。女性への接し方を丁寧にという話なのかと思えば、濡れ場がまんまAVで笑ってしまった。エロ描写はたっぷりあるが脱いだ役者たちより江波杏子西岡徳馬が印象に残った。

パシフィック・リム:アップライジング
 昭和の特撮怪獣映画だったのに90年代ロボットアニメ色が強くなりキャストもほぼ一新、要するに続編としては致命的にテイストが違うわけだが、白昼のバトル・シーンはエキサイティングで存分に楽しめた。露骨に説明不足で雑過ぎる展開や、前作キャラの非道い扱いに新キャラの魅力不足など、巧くない点は多々あるけれども。

いぬやしき
 面白かったがもっと上手く料理できた感が強い。原作がどーなってるか知らんが、佐藤健が殺人に至る流れとか、躊躇なく発砲しまくる警察とか、色々と雑で腑に落ちない。彼方此方にある伏線っぽいネタがほぼ拾われないのもストレス。けど、邦画の予算規模にしては頑張ったVFXや、スマホ時代のユニークな殺戮は見るべきものあり。

『レディ・プレイヤー1』
 80年代ポップカルチャーがてんこ盛りだがイマイチ乗れず。映像は派手だしディストピア描写や日本リスペクトなど各々のパーツは楽しいんだが、エンタメだけで生きていく的な廃人ゲーマーが蔓延る基本設定に嫌悪感すら覚える。運営を託す者への課題としてアレだったり、悪役が現実世界で無茶する理由付けが弱いなど、全体に話がガキっぽい。

アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー
 『アベンジャーズ』前作以降のMCUで観てないの『マイティ・ソー3』だけなのに、冒頭がその続きっぽくて軽く戸惑う。結局、たいした問題じゃ無かったが。ヒーロー多過ぎリストラ必至の状況からまさかの増員で、上手く見せ場を纏めた手腕に脱帽。ただ、話は人質捕って脅してゲットが繰り返えされた挙げ句の尻切れと、褒められたもんじゃない。

ラプラスの魔女
 東野圭吾ミステリーの皮を被ったB級オカルト。「仕事は来た順」で玉石混交に定評の三池監督、本作はダメ脚本をそのまま撮るってなスタンスで、やる気が全く感じられない。説明台詞満載なのに理解できないことだらけで、サスペンスもなければツイストもない。

『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』
 五輪初の三回転半成功を伊藤みどりと競った事はほぼ忘れられて、「ナンシー・ケリガン襲撃事件」で記憶されるトーニャ・ハーディングの実録モノ。信用できない証言者たちが織りなす羅生門スタイルの再現ドラマが超シニカルで、栄光と挫折に加え刺されたり撃たれたりの強烈な半生がもの凄く面白かった。競技シーンの演出もメチャメチャ格好良い。ただ、襲撃は証言者と異なる実行犯がメインにならざるを得ず、そこが退屈だった。

ホース・ソルジャー
 アフガン紛争でタリバン重要拠点制圧の電撃作戦を遂行した十二人の米兵の実録モノ。ドンパチ映画としては派手で面白かったけど、実話ベースが故の中途半端さが気になった。娯楽作品と割り切って各々の兵士に見せ場を作ったり、もっと馬を活躍させてほしかった。劇中で超困難なミッションと説明される割に、どう打開したのかよくわからないのも困る。

モリーズ・ゲーム
 アメリカン・セレブが集う地下ポーカーを取り仕切ってた才女の躍進と凋落を描く伝記映画。冒頭からハイスピードな長台詞にグイグイ引き込まれるが、賭場運営のあれこれや法廷での駆け引きなど、とかく情報過多で理解は厳しい。眼はジェシカ・チャステインの胸元ばかり追うという状況では尚更だ。まあ、雰囲気だけでも十分に楽しめたけど。

孤狼の血
 ダーティな輩を撮らせたら絶品な白石和彌監督が贈る昭和の終わりのマル暴映画。演出が「東映ヤクザ」まんまなのに暴力描写だけは異様にハードで面白かった。悪徳刑事・役所広司が抜群に痛快で、対立する相棒の松坂桃李には感情移入しやすく、複雑な抗争劇も豪華キャストのキャラがたってるので混乱しにくいのが良い。ただ、わかりやすいんだが説明台詞が多すぎる。とは言え、続編が楽しみ。

のみとり侍
 ほぼ『テルマエ・ロマエ』なモノローグで生真面目に男娼稼業を学ぶ阿部寛が最高に可笑しいお色気コメディ。性技の指南役たるトヨエツの小粋な下ネタも心地よい。かなり濃厚な濡れ場も全くエロくならず爆笑。ただ、起承は素晴らしいのに転結が巧くない。人情噺や深謀遠慮もいいが、大人のユーモアを絡めて前半のノリをキープして欲しかった。

ランペイジ 巨獣大乱闘
 単純明快にバカっぽさが炸裂するだけだが、そこを割り切れば超楽しいB級映画。所狭しと破壊の限りを尽くす怪獣たちに、当たり前に不死身で無敵なドウェイン・ジョンソンとクズっぷりを見せつけ爽快に懲らしめられる元凶姉弟。雑でご都合展開な脚本を笑って許せる妙な説得力がある。

ゲティ家の身代金
 公開間近にセクハラ告発で主役が降板も、爆速撮り直しで無事公開し、代役クリストファー・プラマーが賞レースを賑わした話題作。役が守銭奴の大富豪なのでケビン・スペイシーのが嵌まった気がするが、手堅く面白いサスペンスだった。実話ベースなのに「本気か、ジジイ?」が連発。ただ、露骨に不自然で脚色っぽい終盤展開は興ざめ。

ファントム・スレッド
 50’sオートクチュールの世界を堪能しつつ「女の怖さ」を思い知る、ロマンチックじゃない『マイ・フェア・レディ』。ファッション界が舞台だから衣装はお洒落で昔ながらのフィルム撮影が美しく音楽も優雅で格調高いが、お話はもつれそうでもつれない痴情を描くブラック・コメディというギャップが素敵。

デッドプール2』
 一作目は「意外と真面目」と思ったが、今回は逆で「非常にハチャメチャ」。ギャグは面白いしアクションも派手になってるんだけど、故に散漫で話はちっとも進まず超テンポ悪い。あるべき形になったとも言えるが。前作同様のライアン・レイノルズ自虐ネタに加え俳優ジョシュ・ブローリン弄りなど映画パロディ多目なのは個人的に助かった。

バーフバリ 王の凱旋<完全版>』
 古代インド王家のスペクタクル巨編。前編の『伝説誕生』は編集版を鑑賞。そっちは終盤以外はちょこちょこ退屈だったけど、今回は満遍なく血湧き肉躍り長尺も気にならず。何の捻りも無い脚本なんだけど、忠義と勧善懲悪の様式美とか決めポーズが素敵な殺陣とか日本の時代劇に通じるノリが超燃える。マッチョで荒唐無稽な世界観は『北斗の拳』とか『男塾』を実写で観てる気分。姫と国母様に食われ前編のヒロインが空気なのが惜しい。

万引き家族
 感動作に定評の是枝監督カンヌ受賞作だから、反社会的な人々が疑似家族となって支え合って大団円みたいなのを想像してたら、かなりブラック寄りな話で驚いた。相変わらず子役の演出が冴えてるし、「家族とは?」と考えさせる秀作だけど、、安藤さくらが生々しく脱いだり松岡茉優が下着姿で腰振ったりするのでお茶の間向けとは言いがたく。

カメラを止めるな!
 棒演技の無名役者を揃えたインディーズとしては驚異的に面白いが、個人的には「映画作りあるある」の部分に思い入れが無いため、ちょっと過大に評価されてる印象。中盤で予想したことがきっちり回収されるのは快感だが、「そう思わせてそっちかよ!」とか「ここも伏線だったの?」みたいな意外性が欲しかった。

フューチャーワールド
 何を血迷ったのかジェームズ・フランコが監督&主演(但しヒャッハー側)で贈る今更な『マッドマックス』もどき。ミラ・ジョヴォヴィッチスヌープ・ドッグルーシー・リューと無駄にキャストは豪華だが、冗長で成り行き任せで意味不明な展開にげんなり。

ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー
 細かく設定を拾ってるし、西部劇の王道やってるし、あんまり印象には残ってないけどアクションも悪くなかった。普通に面白かった。これが青臭い坊や時代のハン・ソロの話なら非常に無難に纏まってると思う。でも、ここから『EP4』のアウトローに高速チェンジするとは信じ難いし、そもそも観たいのは悪党なハン・ソロの活躍なんだよなぁ。

観た映画(2018年1~3月公開)

キングスマン:ゴールデンサークル』
 相変わらずアクションとギミックは楽しくえぐいが、前作との繋がりでモヤッとする事ばかり。雑な退場と復活、スペック下がってる主人公、ちょくちょく薄れる「キングスマン」のポリシー。「ドラッグ合法化の是非」というテーマが普通の日本人の感覚では理解しにくいのも困る。エルトン・ジョンが大活躍してたのは胸熱。

 

ジオストーム
 災害モノかと思ったら近未来SFの皮を被った陰謀映画だった。色々混ぜすぎ。無駄に壮大で収拾不能過ぎる策略には失笑するしかないが、映像は派手だしバカ映画としては楽しい。あと、カーチェイスで美味しいところを持って行くヒロインに惚れ惚れ。

 

デトロイト
 1967年のデトロイト暴動の最中に起きた白人警官による黒人射殺事件が題材。緊張感の連続で見応えあるが、怖い尋問が延々と続き不快な顛末を辿るので精神的苦痛も大きい。酷い差別に憤るよりも「半世紀経っても、あの国は・・・」な呆れが上回るのが難点。あと、裁判結果から察するに「真相は藪の中」な局面が露骨に黒人寄りなのはモヤッとする。

 

スリー・ビルボード
 妙な連帯や様々な差別はびこるアメリカ南部の田舎町で、衝動的でクズな人々が織りなす丁々発止が楽しいがテーマは重たいヒューマン・ドラマ。脚本のトリッキーさが秀逸で、とにかく想像と違う方向にばかり話が進むのが面白かった。意外過ぎる着地点にはポカンとしたが余韻は爽やか。アカデミー賞をもぎ取る事になる二人の怪演も素晴らしかった。

 

今夜、ロマンス劇場で
 昭和レトロな綾瀬はるかのファッション目当てで中身は期待してなかったのだが、意外にコメディ色は薄く映画好きシニア感涙の良作だった。『カイロの紫のバラ』の設定をベースに『ローマの休日』やら往年の名作洋画オマージュと日活無国籍映画の時代を融合し、在りがちなファンタジーを上手く捻ってて感心。終盤にグイグイくるのが心地よい。

 

グレイテスト・ショーマン
 伝記映画としてはかなり脚色してそうなのに、物語の構成がちょっと前に作られた『SING/シング』と被りまくり。しかも肝心の「改心から再起」の流れがアレより雑とくる。ミュージカルなのにサーカスメンバーに歌い手が超少なく、殆どのキャラに見せ場がないのも寂しい。けど楽曲とダンスパフォーマンスの出来が良いので退屈はしない。

 

リバーズ・エッジ
 原作は未読だが岡崎京子のマンガっぽさは良く再現されていた様に思う。90年代風の映像もグッドだ。・・・というのは作風とあの時代の空気感を知る者の感想であって、読者でない現代の十代には伝わらない予感。時々挿入されるインタビューも理解を難しくしてるし。

 

ブラックパンサー
 バトルやカーチェイスの映像はカッコイイが不満は多い。スーツが無敵設定な故に主役の強さが微妙だし、ハーブ抜きで超強い人がいるし、技術力優位ってのも『アベンジャーズ』世界じゃ眉唾だし、王位継承が腕力最優先なのも妙だし、色々バランス悪い。悪役のシリアスな存在感やお茶目な妹ちゃん等のキャラ立ちのおかげで充分に楽しめたけど。

 

シェイプ・オブ・ウォーター
 世間の好評を他所にどうにも乗り切れなかった。ラブ・ストーリーが苦手でファンタジーが嫌いという性質な上に、自分の感覚ではあの魚人は超イケメンであってキモい側じゃないのが腑に落ちない。題材として面白そうな助演俳優たちの話があっさり目なのも残念。

 

『15時17分、パリ行き』
 実際のテロ事件を当事者に演じさせて再現するだけでも実験的なのに、映画の大半は犯人制圧の中心となる若者三人組の割とボンクラな過去と普通の観光旅行が断片的に描かれるだけ。ドラマチックなことは何も起きないし事件とも繋がってない。でも、最終的には作品成立に必要なプロセスだったことが判って戦慄させられた。イーストウッド監督はスゴい。まあ、素人演技の弊害を感じとれない英語力が功を奏してる部分はあるんだろうけど。

 

坂道のアポロン
 ジャズが題材ってだけで特に期待もせずに観た青春映画だったが中々よかった。少女漫画的恋愛映画に定評の三木孝浩監督、手堅い仕事ぶりである。セッション・シーンも運指やスティックさばきがそれっぽくて格好良い。全体に高すぎるキャストの実年齢や、60年代後半から外れる美術などを、しばしば感じてしまうのが難点。

 

リメンバー・ミー
 実にピクサーらしいオーソドックスな造りで楽しめた。今回の功績は「お墓参り、行かなきゃな。」と思わせるところ。祖先崇拝がある日本人の死生観とは極めて相性がよいテーマかと思う。ただ、「音楽禁止の掟」が世襲されてるってのと、「写真」絶対主義の部分はもっと自然な設定にできたんじゃないかと。

 

ちはやふる -結び-』
 綺麗に纏まった前後編に敢えて足す暴挙かと思いきや、なかなかに見事な完結編だった。だれもがクイーン戦がクライマックスと想定する中、まさかの実質主人公は三角関係のかませ犬ポジション・野村周平恋物語を捨てて成長モノに特化した脚色が本当に上手いと思った。メンバーそれぞれ見せ場があるし今回も競技の見せ方に色々凝ってて面白かった。

 

レッド・スパロー
 ロシアのトップ・バレリーナをハニートラップ向け諜報員へ転身させるふざけた設定なくせに本格的な諜報戦が繰り広げられ楽しかった。アクションシーンは少なめで、二重スパイの駆け引きがメイン。ジェニファー・ローレンスの全裸ほかエロ描写多めだが、えぐいバイオレンスも多め。ロシア側の残虐さだけを強調してるのはちょっと非道い。

 

トレイン・ミッション
 悪い意味でしか予想を裏切らない巻き込まれ型スリラー。ミスリード連発に困り顔で右往左往するリーアム・ニーソンは楽しいけど、敵の目的や組織力から考えると、こんな手が込んでる割にリスクだらけのミッションをする意味が謎過ぎる。