観た映画(2020年2~3月公開)

『37セカンズ』
 脳性麻痺の車椅子女子の話という事でお涙頂戴を想像して敬遠してたのだが、中身は過保護な母親から自立して大人として色々経験したい女の子の冒険映画で超面白かった。身障者とか以前に若い娘としても危うい行動が多いので始終ハラハラドキドキだし、物語は予想だにしない方向に転がっていくし。親切すぎる人達や肥大化する旅路に違和感はあるが、細かい事に目を瞑らせるパワーがある。

ヲタクに恋は難しい
 ヲタ用語やらヲタ界隈の小ネタ知識がさっぱりでも福田雄一作品が好きなら愉しめるが、このノリがダメな人には拷問レベルだと思う。役者さん個々のギャグは面白いけど脚本の纏まりが非常に悪い。特に、長い割に効果が小さいミュージカルでドラマの流れをぶった切るのが難。歌って踊りまくる高畑充希は圧巻だけれども。

『屋根裏の殺人鬼 フリッツ・ホンカ』
 70年代の西ドイツに実在した連続殺人犯が題材。冒頭から死体が転がって解体開始という酷い内容なのだが、意外にブラックユーモアが強め。主人公は完膚なきまでクソ野郎なのだが犯行は拍子抜けするほど杜撰で、被害者から周辺人物までダメ人間しか出てこない。サスペンスも人間ドラマも無く、ただ狂気と混沌の異世界に紛れ込んだ感覚。

『1917 命をかけた伝令』
 塹壕戦が繰り広げられる中を伝令に奔る英軍兵士をワンカット風の映像で見せるカメラワークの妙技堪能映画。映像は新鮮だが物語自体は普通。何気に英国系TVドラマで見かける俳優が次々と出てくるのが楽しい。因みに、第一次世界大戦における西部戦線の顛末についてはこの映画じゃ全くわからない。

『スウィング・キッズ』(2018)
 朝鮮戦争下の捕虜収容所が舞台のダンス・ムービー。米兵と捕虜との明るく楽しい交流とハイレベルなタップの応酬にグイグイ引き込まれる。しかし、普通に心暖まる話に纏まらないから韓国映画は油断できない。韓国人なら当然知ってるだろう歴史的事実や共産主義者と反共が対峙する複雑な収容所事情に疎い事もプラスに働き、後半の展開にガツンとやられた。

『Red』
 夏帆×妻夫木聡の不倫モノ。結婚生活の不満部分はともかく、母親でもある主人公の行動に感情移入は難しく、過度に見せようとしない濡れ場には失笑。時々、柄本佑が話を盛り上げそうな雰囲気になるが、結局物語に全然絡んでこないのが謎。

『ミッドサマー』
 全米大ヒットの因習残るヤバい村ネタのホラーだが、特に怖くもないしサスペンス的な面白さもない。本作と『へレディタリー』を観て、アリ・アスター監督の作風は宗教くさいので今後は回避の方向でいいと確信した。

チャーリーズ・エンジェル(2019)
 キャスト一新で第三世代エンジェルたちの活躍を描く。無駄に目立つ変装と荒唐無稽なスパイグッズを駆使して美女が事件を解決する様は普通に楽しいのだが、シリーズ物としては違和感が強かった。アクションは緩く銃を撃ち、不殺が基本の割には結構死んでる。何よりバカっぽく弾けた部分が弱い。

『スキャンダル』(2019)
 トランプさんが大統領候補だった頃のセクハラMeToo運動の話。つい最近の話なのに、不名誉な扱いのキャラ含め実名がバンバン飛び交うのが凄い。実在の女性キャスターに寄せすぎてシャーリーズ・セロンニコール・キッドマンがほぼ別の顔になってるのも凄い。ただ、事実であるが故に展開が淡々としオチも中途半端でスッキリしないのが辛い。

『初恋』(2019)
 三池崇史監督らしからぬタイトルだが、中身は濃厚に三池節の効いたヴァイオレンス・コメディだった。追われる娘を助けて抗争に巻き込まれたボクサーの話だが、驚くほどに恋愛要素は薄めでPG-12が不思議なほどにスプラッタ。染谷将太大森南朋ポンコツぶりが超楽しく、ベッキーが最高にぶっ飛んでた。周りの人達が目立ちまくる中、ボクサー設定があまり活きず見せ場が少ない窪田正孝がちょっと不憫。

『Fukushima 50』
 後世に語り継ぐための映画の筈だが、あまりにも考証が蔑ろにされていて、知らない世代にはむしろ害悪。最前線で頑張ってくれた人達を讃えたいのなら、現場の事故対応をもっと丁寧に描くべき。最悪の事態をどう防ごうとしたのかが曖昧すぎる。

『ジュディ 虹の彼方に』
 『オズの魔法使』のドロシー役、ジュディ・ガーランドの伝記映画だが、扱われるのは最晩年の歌手活動で銀幕時代は希薄。レニー・ゼルウィガーの歌唱は素晴らしいが、破滅的生活の過程がカットされた結果、少女時代が不憫だったにしてもプロ意識低すぎに映るのが難。とはいえ、精神的にボロボロでステージをこなす姿と歌の力で泣かされる。

ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 Birds of Prey』
 基本的にマーゴット・ロビー演ずるハーレイ・クインが好きな人向けなので、どんなに話が薄っぺらくても邪悪でイカレた大立ち回りをキュートに繰り広げてればオールOKな筈なのだが、意外に残念感が強い。時系列シャッフルが流れをぶつ切りにしてたり、凄いアクションが大量でもカタルシスが無かったり。確かに楽しかったんだけどなぁ。