観た映画(2021年4~6月公開)

『21ブリッジ』
 『ブラックパンサー』主演チャドウィック・ボーズマンの遺作となった、マンハッタン島にかかる21の橋を封鎖しての逃走・追跡劇。70年代の刑事アクションを彷彿するハードボイルドな作品で、かなり先が読める話ではあるが手堅く面白かった。21の橋は殆ど話に絡んでこないけれども。

 

『BLUE/ブルー』
 凄く弱いけれどボクシングへの情熱は人一倍の男、才能はあるがダメージの蓄積がそれを上回る男、モテたい動機で形だけ習うつもりが徐々に嵌まる男。努力や代償に見合う結果を得られるのは一握りの世界で、大多数側にいるボクサー達の群像劇がよく出来てた。人間味溢れるキャラ造形が素晴らしく、地味だが嘘っぽく無いボクシング描写も素敵。

 

るろうに剣心 最終章 The Final』
 4作目で所謂「人誅編」。立体的なアクションがてんこ盛りで、演者さん超頑張ってて格好いい殺陣を存分に堪能できる。だが話の出来は悪い。原因は復讐劇の核心部分が次作ってことで結末に説得力が無いため。時代設定が違う次作じゃ出番無しな都合で、事情も知らんまま参戦し見せ場を終えたら本筋に絡まないキャラばかり。

 

『ファーザー』
 アンソニー・ホプキンスが最高。昔っから凄かったけど齢八十を超えて更に磨きがかかってる。予想外の受賞とか言われてたけど二度目のオスカーも納得。幻想の扱い方が非常に巧みな脚本にも唸らされた。ただ、認知症を体感させる本作は、この素晴らしい演技に見惚れて無ければ耐えられないぐらいキツかった。介護する側として結構傷ついた経験もあるし、自分が自分でなくなる恐怖もリアルに感じてしまう年齢なので。

 

アメリカン・ユートピア
 スパイク・リー監督の映画のつもりで観たら丸々デヴィッド・バーンのライブでびっくり。トーキング・ヘッズ時代の数曲しか知らん人だけど、凄い演出の連発で飽きなかった。電子楽器はケーブル無しでマーチングバンドな打楽器構成。ダンサー二人を含む十二名が繰り広げる照明と見事にシンクロした縦横無尽のフォーメーション。ちゃんと生演奏って解るくだりがあるのも良い。映画作品としてはどうなのかと思うけども。

 

るろうに剣心 最終章 The Beginning』
 幕末の人斬り時代に遡った所謂「追憶編」。「不殺」設定解除でバッサバッサと斬りまくるアクションは緊張感が半端ない。話の都合上「血の雨」が必須だが、残虐になり過ぎず美しく描く工夫が成されている。物話の重みも纏まりも過去4作の微妙な再構築とは段違い。巴さんは寺で丁重に弔ってもらうのが筋だとは思うが。

 

『映画大好きポンポさん』
 ハリウッド風の映画製作現場をモチーフにした日本のアニメ。ポップな絵柄ながら恋愛や萌え要素は皆無で、目の死んだ男の夢と狂気の業界成長モノ。苦渋の映像カットにスポットをあてるドラマ展開のため、本編自体も90分の尺と説得力のある編集を求められる難題を見事にクリアしてみせた。カットとカットのつなぎに色々工夫してあったり、2回目観るのも映画好き的には超楽しい。

 

機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ
 原作は読んでるが結末以外はほぼ忘却の彼方。予定では三部作らしい。『逆襲のシャア』から繋がる話という雰囲気は良く出てる。リアルな戦闘シーンで人間ドラマも大人向け。人物や背景説明が異様に簡素なのは富野由悠季の特徴なので仕方ない。けど、「これで終わり?」な構成と、あまりにも暗くて見えなすぎる中盤以降の夜戦描写はマイナス。

 

『キャラクター』
 セカオワFukaseのサイコ野郎ぶりが話題のサスペンス。確かに俳優陣の演技に文句は無い。だが、脚本が酷い。漫画にシンクロして兇悪事件が繰り返される掴みは良いが、後半のアイデアは月並みで恐怖感に乏しい。ディテールも雑過ぎて「なぜ?」の嵐。

 

ザ・ファブル 殺さない殺し屋』
 アクションは前作よりも迫力が増し見やすくなり、ちゃんと岡田准一が自分で演じてるのが判るシーンも多い。木村文乃の見せ場も印象的で、堤真一の怪演ぶりも楽しかった。一味が明らかに雑魚なのに中盤戦闘のスケールが無駄に大きく最後は妙にこぢんまりという按配や、お話に色々と消化不良な部分も散見するが、大筋は面白かった。

 

夏への扉 ―キミのいる未来へ―』
 ハインラインの古典SFを何故か今、日本で実写化。地雷案件と覚悟して臨んだけど予想よりはずっと良かった。ちょっと違う歴史を歩んでる日本が舞台とか、原作の無理矢理な所のアレンジとか。ただ、それはアップデートって視点からであっって、映画単体としてはバレバレの展開とご都合主義だらけ。