観た映画(2017年10~12月公開)

アウトレイジ 最終章
 前二作で主だった凶悪キャラが全滅した結果、実質の主役がコミカル・ポジションにいた西田敏行という事態に。更に今回加わった大杉漣ピエール瀧もコメディ・リリーフ担当。笑うところは豊富だがバイオレントなヤクザ映画シリーズの幕引きとしては・・・。

 

あゝ、荒野 前篇』
 前後篇あわせて5時間超なので勇気が要ったが、映画賞方面での高評価を頼りに内容を知らずに観賞。「現代設定なのに『あしたのジョー』の時代っぽいボクシング映画だなぁ。」と思ったら原作が寺山修司で納得。それじゃサヨクインテリ臭さも許容しないとね。人物描写が面白いので長尺は気にならず。だが、あまりに偶然すぎる人物配置には苦笑。

 

猿の惑星:聖戦記
 クズな人類を余所に格好良い猿達の生き様に感動のシリーズ三作目。原罪を背負い楽園を追われ受難の末に約束の地へ・・・ってな神話の宗教臭さを減衰して西部劇に仕立てた辺りが面白かった。ただ、虫の息だった人類が盛り返し過ぎてる違和感はある。あと、防衛用に石で壁とか作ってたのに戦闘が始まってみたらロケット弾が飛び交うのも・・・。

 

アトミック・ブロンド
 シャーリーズ・セロンのアクション満載なスパイ・サスペンス。女性の非力を感じさせるゴリゴリの肉弾戦で容赦なく傷だらけ痣だらけのヒロインが凄まじい。ハードボイルドでセクシーで体張り過ぎな役柄とシャリ姐のフィット感に戦慄を覚える。ただ、お話の方は単純な事件を無理にややこしく見せてるだけで脚本のための脚本。

 

女神の見えざる手
 銃規制側に寝返ったロビイストが卓越した頭脳で手段を選ばず勝利を目指す辣腕モノ。ドラマ1クール分撮れそうな内容を二時間超に収めた脚本力が素晴らしい。銃や選挙の米国複雑事情やロビー活動の実態に全く馴染みがなく何処までが合法なのか解ってなくても面白かった。ワーカホリックで非情な女なのにジェシカ・チャステインが超格好良い。

 

あゝ、荒野 後篇』
 辛い過去を抱えた人々の因縁やら社会派ネタやら広げておきながら風呂敷全く畳めず。前篇だけの映画だった。終盤の試合が「あり得ない」の連発なのもガッカリ。性描写は多いが今野杏南とかほぼ無駄脱ぎで笑う。

 

ブレードランナー 2049
 一作目観賞は必須。続編という無理筋オーダーにしっかり応えてみせたSF魂には天晴れなのだが、個人的にはコレジャナイ感が強い。悲惨な男があがく話じゃなく、ハードボイルド野郎が駆け巡る斬新な未来世界が観たかった。でも、レイチェル登場は号泣モノだったし、ホログラム彼女とのあれこれは凄く魅惑的だった。

 

ゲット・アウト
 タイトルと序盤展開から単なる脱出系ホラーと思いきや、ネタバレ禁止・リピート鑑賞必須の練れた脚本だった。米国人種差別あるあるをネイティブ並に感じ取れないのが残念。とかく扱いが難しい不謹慎ネタをエンタメに昇華するセンスに拍手喝采。まあ、真相の設定だけ聞いたら「なんや、それ!」なトンデモなんだけどね。

 

『ラストレシピ ~麒麟の舌の記憶~』
 「麒麟の舌」と呼ばれる絶対味覚の設定が全く活かされてない謎脚本だが、そこそこ面白かった。二宮和也担当の現代パートは粗だらけだが、実質主演な西島秀俊満州国パートは料理人の誇りと友情と家族愛な大河ドラマで料理も美味しそうだった。安定の甲斐甲斐しさで魅せる宮崎あおいもグッド。

 

シンクロナイズドモンスター
 米国のダメ人間が原因で無関係な韓国民が被害を受けまくる頭のネジが緩んだ設定の怪獣映画。とはいえ、メインはアダルトチルドレンな女が帰郷して自分を見つめ直す系の話。DVやパワハラなどのヘビーな要素も盛り込むも踏み込みは浅くモヤッとするのが玉に瑕。何故こんなB級作品に出たのか謎だがアン・ハサウェイはダメ可愛かった。

 

IT/イット “それ”が見えたら、終わり。
 全米で社会現象を巻き起こした特大ヒットのホラーという触れ込みだったけど全く怖くはなかった。だが、カースト下層の少年少女が恐怖に立ち向かうジュブナイルとしては面白かった。残酷描写多めの『スタンド・バイ・ミー』ってな感じで子役達が素晴らしい。ローティーン向けなのにR15指定という理不尽に嘆息。

 

『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』
 米国製作の侍時代劇アニメ。人形コマ撮りの新時代を感じさせる凄まじい技術にも驚かされるが、それ以上に作り手の日本文化理解度に舌を巻く。外人らしい珍妙な世界観なのに死生観とかスピリッツな部分は実に的確なのだった。エンディングではビートルズの和風カヴァーという選曲と原語版声優の豪華さに二度ビックリ。

 

ジャスティス・リーグ
 「DC映画は退屈だがガル・ガドットワンダーウーマンは観たい」程度の意気込みだったが意外に楽しかった。新キャラのドラマが薄かったり、敵が微妙だったり、超人たちの能力差が酷すぎたり、つまり『アベンジャーズ』紛いにも程があるわけだけど、従来のシリアス路線よりずっと親しみやすかった。

 

『光』(大森立嗣監督)
 同年に同タイトルが2本公開される困った事態だが、これは『まほろ駅前』シリーズの原作×監督タッグの方。ただ、内容はそれとは違い始終ネガティヴな愛憎劇だった。子役達が演じる導入部で忌まわしさ凄惨さが全然足りない事が、最後まで足を引っ張った印象。

 

鋼の錬金術師
 原作未読ゆえに理解できてない部分が多々あるのだろうが退屈だった。冒頭のCGシーンは予算規模の割に頑張ってたし、キメラの件がダークな展開で期待感も増したのだが、後は犯人バレバレで動機不明の最低なミステリー。しかも主人公が活躍しない。

 

パーティで女の子に話しかけるには
 タイトルからは全く想像つかないブッ飛んだ映画だった(原題通りなんだけどね)。ボーイミーツガールの皮を被ってるが、パンク・ロックと小難しく不条理なSFとエロくてサイケでシュールなコメディの融合。拒絶反応数え役満だが、俺はこういうの大好きだ。表情豊かで圧倒的にキュートなエル・ファニングが最高。

 

オリエント急行殺人事件
 「筋を知らなきゃ当然面白い、だが大半はオチまで知ってる」ってのが古典の厄介なとこ。だから、謎解きより人物の感情面を重視したり舞台を車外に広げたのには感心したが、出来は大目に見て普通。ミステリーの仕掛けを大胆に省き過ぎてポアロは憶測吐いてるだけに見えるなど、予備知識無しの観客には論理的に真相が導かれる快感が弱い気がする。

 

スター・ウォーズ/最後のジェダイ
 全篇にわたりイラッとくる粗や欠点が目立ち看過できないレベルに達してるのは事実だ。だが、前回広げた大風呂敷を畳んだり、只のこじらせた坊やだったカイロ・レンの急成長に説得力をもたらしたり、従来の価値観を敢えて壊す驚きの展開も多々有り。娯楽活劇として存分に楽しめた。次で相応しい結末を迎えられるかは大いに疑問だけど。