観た映画(2018年1~3月公開)

キングスマン:ゴールデンサークル』
 相変わらずアクションとギミックは楽しくえぐいが、前作との繋がりでモヤッとする事ばかり。雑な退場と復活、スペック下がってる主人公、ちょくちょく薄れる「キングスマン」のポリシー。「ドラッグ合法化の是非」というテーマが普通の日本人の感覚では理解しにくいのも困る。エルトン・ジョンが大活躍してたのは胸熱。

 

ジオストーム
 災害モノかと思ったら近未来SFの皮を被った陰謀映画だった。色々混ぜすぎ。無駄に壮大で収拾不能過ぎる策略には失笑するしかないが、映像は派手だしバカ映画としては楽しい。あと、カーチェイスで美味しいところを持って行くヒロインに惚れ惚れ。

 

デトロイト
 1967年のデトロイト暴動の最中に起きた白人警官による黒人射殺事件が題材。緊張感の連続で見応えあるが、怖い尋問が延々と続き不快な顛末を辿るので精神的苦痛も大きい。酷い差別に憤るよりも「半世紀経っても、あの国は・・・」な呆れが上回るのが難点。あと、裁判結果から察するに「真相は藪の中」な局面が露骨に黒人寄りなのはモヤッとする。

 

スリー・ビルボード
 妙な連帯や様々な差別はびこるアメリカ南部の田舎町で、衝動的でクズな人々が織りなす丁々発止が楽しいがテーマは重たいヒューマン・ドラマ。脚本のトリッキーさが秀逸で、とにかく想像と違う方向にばかり話が進むのが面白かった。意外過ぎる着地点にはポカンとしたが余韻は爽やか。アカデミー賞をもぎ取る事になる二人の怪演も素晴らしかった。

 

今夜、ロマンス劇場で
 昭和レトロな綾瀬はるかのファッション目当てで中身は期待してなかったのだが、意外にコメディ色は薄く映画好きシニア感涙の良作だった。『カイロの紫のバラ』の設定をベースに『ローマの休日』やら往年の名作洋画オマージュと日活無国籍映画の時代を融合し、在りがちなファンタジーを上手く捻ってて感心。終盤にグイグイくるのが心地よい。

 

グレイテスト・ショーマン
 伝記映画としてはかなり脚色してそうなのに、物語の構成がちょっと前に作られた『SING/シング』と被りまくり。しかも肝心の「改心から再起」の流れがアレより雑とくる。ミュージカルなのにサーカスメンバーに歌い手が超少なく、殆どのキャラに見せ場がないのも寂しい。けど楽曲とダンスパフォーマンスの出来が良いので退屈はしない。

 

リバーズ・エッジ
 原作は未読だが岡崎京子のマンガっぽさは良く再現されていた様に思う。90年代風の映像もグッドだ。・・・というのは作風とあの時代の空気感を知る者の感想であって、読者でない現代の十代には伝わらない予感。時々挿入されるインタビューも理解を難しくしてるし。

 

ブラックパンサー
 バトルやカーチェイスの映像はカッコイイが不満は多い。スーツが無敵設定な故に主役の強さが微妙だし、ハーブ抜きで超強い人がいるし、技術力優位ってのも『アベンジャーズ』世界じゃ眉唾だし、王位継承が腕力最優先なのも妙だし、色々バランス悪い。悪役のシリアスな存在感やお茶目な妹ちゃん等のキャラ立ちのおかげで充分に楽しめたけど。

 

シェイプ・オブ・ウォーター
 世間の好評を他所にどうにも乗り切れなかった。ラブ・ストーリーが苦手でファンタジーが嫌いという性質な上に、自分の感覚ではあの魚人は超イケメンであってキモい側じゃないのが腑に落ちない。題材として面白そうな助演俳優たちの話があっさり目なのも残念。

 

『15時17分、パリ行き』
 実際のテロ事件を当事者に演じさせて再現するだけでも実験的なのに、映画の大半は犯人制圧の中心となる若者三人組の割とボンクラな過去と普通の観光旅行が断片的に描かれるだけ。ドラマチックなことは何も起きないし事件とも繋がってない。でも、最終的には作品成立に必要なプロセスだったことが判って戦慄させられた。イーストウッド監督はスゴい。まあ、素人演技の弊害を感じとれない英語力が功を奏してる部分はあるんだろうけど。

 

坂道のアポロン
 ジャズが題材ってだけで特に期待もせずに観た青春映画だったが中々よかった。少女漫画的恋愛映画に定評の三木孝浩監督、手堅い仕事ぶりである。セッション・シーンも運指やスティックさばきがそれっぽくて格好良い。全体に高すぎるキャストの実年齢や、60年代後半から外れる美術などを、しばしば感じてしまうのが難点。

 

リメンバー・ミー
 実にピクサーらしいオーソドックスな造りで楽しめた。今回の功績は「お墓参り、行かなきゃな。」と思わせるところ。祖先崇拝がある日本人の死生観とは極めて相性がよいテーマかと思う。ただ、「音楽禁止の掟」が世襲されてるってのと、「写真」絶対主義の部分はもっと自然な設定にできたんじゃないかと。

 

ちはやふる -結び-』
 綺麗に纏まった前後編に敢えて足す暴挙かと思いきや、なかなかに見事な完結編だった。だれもがクイーン戦がクライマックスと想定する中、まさかの実質主人公は三角関係のかませ犬ポジション・野村周平恋物語を捨てて成長モノに特化した脚色が本当に上手いと思った。メンバーそれぞれ見せ場があるし今回も競技の見せ方に色々凝ってて面白かった。

 

レッド・スパロー
 ロシアのトップ・バレリーナをハニートラップ向け諜報員へ転身させるふざけた設定なくせに本格的な諜報戦が繰り広げられ楽しかった。アクションシーンは少なめで、二重スパイの駆け引きがメイン。ジェニファー・ローレンスの全裸ほかエロ描写多めだが、えぐいバイオレンスも多め。ロシア側の残虐さだけを強調してるのはちょっと非道い。

 

トレイン・ミッション
 悪い意味でしか予想を裏切らない巻き込まれ型スリラー。ミスリード連発に困り顔で右往左往するリーアム・ニーソンは楽しいけど、敵の目的や組織力から考えると、こんな手が込んでる割にリスクだらけのミッションをする意味が謎過ぎる。