観た映画(2021年10~12月公開)
『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』
クレイグ版ボンド完結。過去4作と話が繋がってるが勿論ほぼ忘れての鑑賞。ビジュアルが格好良くアクション的に面白いシーンが満載だが、継ぎ接ぎ感が凄まじく、能面をわざわざ被る必然性を始めディテールに難が目立ち完成度は低い。チョイ役の新人ボンドガールが最高な一方で、もっと出番が多い00部門の後輩に全然見せ場が無いのも酷い。
『護られなかった者たちへ』
生活保護制度の闇を暴き出す社会派ミステリという触れ込みだが、シリアスな問題提起の足を引っ張っるミステリ・パート。序盤から被災者3人組にスポットをあてメインキャストに若い女性が清原果耶のみって時点でミスリードは無理。「度が過ぎるほどのお人好し」な筈の永山瑛太の演出など、役所側の葛藤や逆恨みに至るプロセスが弱い。
『DUNE/デューン 砂の惑星』
古典SF大河ロマン、二部作の前編。84年版より枝葉を大幅に削ぎ落とし駆け足にならずに物語を展開しているものの、壮大すぎる設定の説明に尺の半分を費やされ話が盛り上がる手前でぶつ切り。映画単体では退屈だが世界観の構築は素晴らしいという困った作品。やたらと格好良いメカ・ギミックを肴に我慢して後編に期待。
『最後の決闘裁判』
14世紀フランスでの史実を基に『羅生門』スタイルで贈る決闘裁判の顛末。三者三様の物語で綴られる都合の良い解釈・不都合の隠蔽が面白い。話の肝は本人証言のみの性犯罪被害という現代ですらセカンドレイプ必至な案件で、野蛮で理不尽な中世での告発のリスクが恐ろしい。粗暴亭主と夢想野郎の決闘は「どっちも死ね」って感情になるのが困る。
『CUBE 一度入ったら、最後』
四半世紀前の密室スリラーの日本リメイク。残酷描写は無理だし脱出ゲーム的謎解きで頑張ると予想したが、半端にオリジナル準拠の解読は退屈で、しかも法則性謎の時差トラップ多数。ドラマを菅田将暉だけに集中させる愚挙で意外性ゼロのキャラ達が更に陳腐化。
『アイの歌声を聴かせて』
『イヴの時間』吉浦康裕監督のオリジナルアニメ。アンドロイドと少年少女の交流を描くジュブナイル。古典的な題材だけど、実験都市の近未来ガジェットの数々、ディズニー・プリンセス、スクールカーストな青春群像劇等を織り交ぜ、令和のキッズ向けによく練られている。開発企業のセキュリティが徹底的にガバガバなのはちょっと気になるが。
『リスペクト』
ソウルの女王、アレサ・フランクリンの伝記。音楽映画として良くできてて、不遇時代はもどかしく、ブレイク後は名曲が作られていく過程が楽しい。人種差別や男尊女卑への反抗心を抱え込み、ゴスペルや信仰と結び付いて「歌」に昇華する様も見事。ただ、扱われるのは前半生のみなので、史上最も偉大なシンガーとされる説得力は物足りない。
『モスル あるSWAT部隊の戦い』
ISIL支配下にあったイラク第二の都市モスル奪還作戦の終盤が舞台の社会派戦争映画。臨場感が半端なく、難癖でフセイン政権をぶっ壊した結果として街全体が戦場化し荒廃した様をリアルに感じられる。中東系キャストがアラビア語で喋るがアメリカ作。新兵が修羅場を経て戦士に成長するお馴染み「小隊モノ」の物語構造になってるのが面白い。
『ディア・エヴァン・ハンセン』
どう見ても高校生には見えないが、原作ミュージカルのオリジナル・キャストと言われれば歌唱はバッチリだしそこは許容せざるを得ない。孤独を抱える者達への癒やし系で感動的な歌が豊富なのだが、倫理的には完全アウトな嘘から始まるプロット、更に主人公の高い吟遊詩人スキルの所為で、すんなりとは受け容れがたいのが困る。
『ラストナイト・イン・ソーホー』
過去を幻視できちゃう女の子が最先端カルチャーの発信地だった60年代ロンドンに迷い込み、華やかな時代の陰に潜む暗部まで目の当りにするサイコホラー。エドガー・ライト監督らしいスリリングで凝った筋立てで、なによりメインの女優二人が魅力的だった。強引な終盤はご愛敬。問題はホラーにしてはあまり怖くないって点だけど・・・。