観た映画(2018年7~9月公開)

バトル・オブ・ザ・セクシーズ
 お蝶夫人が未婚で夫人呼ばわりな原因、かつて女子テニス界に君臨したビリー・ジーン・キング夫人が、男女同権を訴えて男尊女卑な殿堂入りシニアと行った世紀の一戦を描く・・・のだが、賃金格差や性差別はあまり強調されず、裏で互いに抱えていた別の家庭問題がクローズアップされる。予想と全然違う内容だったが、これはこれで良し。

菊とギロチン
 劇中の台詞にある通り「何言ってるんだ?意味わかんねぇ!」の変な映画だった。差別的で不寛容な社会へと向かう事に警鐘を鳴らしたいのは解るんだが、左翼思想がパワフルに炸裂しまくってるせいで大事な所で失笑の繰り返し。テロリストと女相撲の境遇にもっと相似性なり対照性なりがあれば・・・。

ジュラシック・ワールド/炎の王国
 まさかのスケールダウン。マンネリとの戦いなのは解るが、このシリーズに客が求めるのはコレジャナイ。悪い奴しかいない舞台で恐竜達が暴れてもハラハラしないし、オチ自体は嫌いじゃないが主人公達の頑張りは台無しでキッズ向けとしては不適。

未来のミライ
 細かいディテールとか子供描写は素晴らしいんだけど、何でもありあり過ぎる。幼児の想像の世界ならそれも良いけど、現実をバンバン混ぜて強引にSF的な説明つけられちゃイラッとくる。そもそも細田守監督は四歳児に求め過ぎだ。ちゃんと大人が導けばいい。

ウインド・リバー
 過疎なネイティブ居留地の無法地帯化にインスパイアされた社会派ドラマ。ミステリーとしては捻りがないが、現代アメリカの闇を描く重い内容ながら勧善懲悪の西部劇にもなってて面白かった。ただ、万単位の住人がいて地元警察僅か6人ってのを許容しちゃう先住民の感覚がさっぱり理解出来ない。増員しても汚職警官が蔓延るだけだからか?

ミッション:インポッシブル/フォールアウト
 アクションありきで後付けシナリオと聞いてたので覚悟してたけど、やはりコントみたいな謎行動が満載。でもトム・クルーズ56歳が不可能ミッションに挑戦するノースタント作品だとわかって観れば、惜しみない拍手を贈るしかない。足砕いたのニュースになってたし。予告にあった超凄いアクションを本編未収録にしちゃう大胆な編集にも脱帽。

ペンギン・ハイウェイ
 謎めいた予告編が気になって観たアニメ映画。いちいち可愛いペンギンの動きと「探求するんだ!科学の心だ!」な正統派ジュブナイルを堪能してたら、『惑星ソラリス』の「海」っぽいのが出てきて子供向けにしては難解なSFに。面白かったが、観る側の想像に委ねる謎が多すぎる気はする。「巾着袋」とかヒントを丁寧に置いてはいるけど。

検察側の罪人
 司法制度の問題点を描いた題材は面白いしキャストの大げさな芝居も楽しいが、原田眞人監督の作家性がスパークしまくってて変な所が多すぎる。日本社会の問題を盛り込んだというより無理矢理混ぜただけで、ノイズどころかメインの話が破綻するレベルで邪魔。

アントマン&ワスプ
 一見さんにもわかりやすい非常に良く出来た続編。アイデア満載のアクションが愉しく、「縮小&巨大化」を万能になりすぎないように調整してる事に感心する。とかく殺伐としがちな最近の『アベンジャーズ』界隈で、善い人達と憎めない敵に囲まれてコミカルにミッションをこなす姿にほっこり。なのに、最後の最後で世界観ぶち壊しなのが許せない。

『MEG ザ・モンスター』
 良くも悪くもない中途半端なサメ映画。テンポ良く話は進み、ジェイソン・ステイサムは出ずっぱりで活躍してて、サメも大暴れしてるので意外と退屈はしない。だが、パニック性は皆無で、中国側の規制なのか残虐描写も全然無くて、ネタになるようなバカ展開もなく、何のための入れたのか不明なシーンは多々ある。

愛しのアイリーン
 国際結婚ネタのブラック・コメディーをイメージしてたら、かなり差別的・暴力的なドロドロの情念を突きつけられ、『ヒメアノ~ル』の吉田恵輔監督の作風と覚悟しててもキツい内容だった。痛々しくて笑うに笑えない愛憎劇だが着地は見事。安田顕木野花の熱演も賞賛に値するが、とにかくアイリーン役のフィリピン女優さんがすごくよかった。

若おかみは小学生!
 噂どおり質の高い女児向けアニメだったが、主におっさんにばかうけという事実には頭がクラクラする。ファンタジー嫌いな身としては正直お話自体はそれほど。けど、総集編のお手本のような作品で、構成が抜群に巧いのは間違いない。駆け足過ぎず端折り過ぎずで丁寧に組まれた濃密な一時間半に唸らされる事しきり。

純平、考え直せ
 朝ドラのヌードモデル役で世に出た柳ゆり菜が本当に脱いだと話題のチンピラ映画。主演の鉄砲玉は『ちはやふる』の野村周平で、これが嵌まり役。髪まで切って熱演の柳ゆり菜との決行までの3日間の恋愛模様はベタだけどグッとくる。ただ、二人に絡む周辺人物や裏で展開するSNS上の人々の心情を追う群像劇としては掘り下げが甘い。

『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』
 中国の集団カンニング事件をモチーフにしたタイ映画。意外なことに手口自体はかなり杜撰なんだけど、クライム・サスペンスみたいな演出で超ハラハラさせられた。主人公がカンニングをさせる側というのが新しいし、学歴至上主義・金持ち優遇・不正の横行などの社会問題を背景に倫理感の危うい天才たちが揺れに揺れる脚本もよく出来てる。貨幣単位がバーツなのでピンとこないのが難点。冒頭の学費が平均年収と同じぐらいらしい。

クワイエット・プレイス
 音に反応して襲う敵を前に臨月間近の妊婦を抱える家族という状況設定は面白い。だが、スリルのピークが出産シーンになっちゃって緊張感を最後まで保つのは難しかった。「防音対策これだけ?」「もっと対処法があるだろう?」とか考える暇があるのはマイナス。弱点バレも早過ぎ。

クレイジー・リッチ!
 下品な成金の贅沢三昧を風刺する話かと思いきやハーレクイン・ロマンスだった。彼氏の正体は名家の御曹司で玉の輿への嫌がらせやら格差故の障壁やらの古典的なヤツ。でもオールアジア系ハリウッド映画って事で、シンガポール人の中国系米国人への偏見とか価値観の相違が描かれてる所が新しい。好感度高めの人物が多くラブコメとしても爽快。