観た映画(2018年4~6月公開)

娼年

 組織票OKの映画ベストテンで上位に食い込み松坂桃李の人気を知らしめた作品。なので女性向けポルノを想定してたんだけど、あまりロマンチックなシーンは無くて逆に驚く。女性への接し方を丁寧にという話なのかと思えば、濡れ場がまんまAVで笑ってしまった。エロ描写はたっぷりあるが脱いだ役者たちより江波杏子西岡徳馬が印象に残った。

パシフィック・リム:アップライジング
 昭和の特撮怪獣映画だったのに90年代ロボットアニメ色が強くなりキャストもほぼ一新、要するに続編としては致命的にテイストが違うわけだが、白昼のバトル・シーンはエキサイティングで存分に楽しめた。露骨に説明不足で雑過ぎる展開や、前作キャラの非道い扱いに新キャラの魅力不足など、巧くない点は多々あるけれども。

いぬやしき
 面白かったがもっと上手く料理できた感が強い。原作がどーなってるか知らんが、佐藤健が殺人に至る流れとか、躊躇なく発砲しまくる警察とか、色々と雑で腑に落ちない。彼方此方にある伏線っぽいネタがほぼ拾われないのもストレス。けど、邦画の予算規模にしては頑張ったVFXや、スマホ時代のユニークな殺戮は見るべきものあり。

『レディ・プレイヤー1』
 80年代ポップカルチャーがてんこ盛りだがイマイチ乗れず。映像は派手だしディストピア描写や日本リスペクトなど各々のパーツは楽しいんだが、エンタメだけで生きていく的な廃人ゲーマーが蔓延る基本設定に嫌悪感すら覚える。運営を託す者への課題としてアレだったり、悪役が現実世界で無茶する理由付けが弱いなど、全体に話がガキっぽい。

アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー
 『アベンジャーズ』前作以降のMCUで観てないの『マイティ・ソー3』だけなのに、冒頭がその続きっぽくて軽く戸惑う。結局、たいした問題じゃ無かったが。ヒーロー多過ぎリストラ必至の状況からまさかの増員で、上手く見せ場を纏めた手腕に脱帽。ただ、話は人質捕って脅してゲットが繰り返えされた挙げ句の尻切れと、褒められたもんじゃない。

ラプラスの魔女
 東野圭吾ミステリーの皮を被ったB級オカルト。「仕事は来た順」で玉石混交に定評の三池監督、本作はダメ脚本をそのまま撮るってなスタンスで、やる気が全く感じられない。説明台詞満載なのに理解できないことだらけで、サスペンスもなければツイストもない。

『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』
 五輪初の三回転半成功を伊藤みどりと競った事はほぼ忘れられて、「ナンシー・ケリガン襲撃事件」で記憶されるトーニャ・ハーディングの実録モノ。信用できない証言者たちが織りなす羅生門スタイルの再現ドラマが超シニカルで、栄光と挫折に加え刺されたり撃たれたりの強烈な半生がもの凄く面白かった。競技シーンの演出もメチャメチャ格好良い。ただ、襲撃は証言者と異なる実行犯がメインにならざるを得ず、そこが退屈だった。

ホース・ソルジャー
 アフガン紛争でタリバン重要拠点制圧の電撃作戦を遂行した十二人の米兵の実録モノ。ドンパチ映画としては派手で面白かったけど、実話ベースが故の中途半端さが気になった。娯楽作品と割り切って各々の兵士に見せ場を作ったり、もっと馬を活躍させてほしかった。劇中で超困難なミッションと説明される割に、どう打開したのかよくわからないのも困る。

モリーズ・ゲーム
 アメリカン・セレブが集う地下ポーカーを取り仕切ってた才女の躍進と凋落を描く伝記映画。冒頭からハイスピードな長台詞にグイグイ引き込まれるが、賭場運営のあれこれや法廷での駆け引きなど、とかく情報過多で理解は厳しい。眼はジェシカ・チャステインの胸元ばかり追うという状況では尚更だ。まあ、雰囲気だけでも十分に楽しめたけど。

孤狼の血
 ダーティな輩を撮らせたら絶品な白石和彌監督が贈る昭和の終わりのマル暴映画。演出が「東映ヤクザ」まんまなのに暴力描写だけは異様にハードで面白かった。悪徳刑事・役所広司が抜群に痛快で、対立する相棒の松坂桃李には感情移入しやすく、複雑な抗争劇も豪華キャストのキャラがたってるので混乱しにくいのが良い。ただ、わかりやすいんだが説明台詞が多すぎる。とは言え、続編が楽しみ。

のみとり侍
 ほぼ『テルマエ・ロマエ』なモノローグで生真面目に男娼稼業を学ぶ阿部寛が最高に可笑しいお色気コメディ。性技の指南役たるトヨエツの小粋な下ネタも心地よい。かなり濃厚な濡れ場も全くエロくならず爆笑。ただ、起承は素晴らしいのに転結が巧くない。人情噺や深謀遠慮もいいが、大人のユーモアを絡めて前半のノリをキープして欲しかった。

ランペイジ 巨獣大乱闘
 単純明快にバカっぽさが炸裂するだけだが、そこを割り切れば超楽しいB級映画。所狭しと破壊の限りを尽くす怪獣たちに、当たり前に不死身で無敵なドウェイン・ジョンソンとクズっぷりを見せつけ爽快に懲らしめられる元凶姉弟。雑でご都合展開な脚本を笑って許せる妙な説得力がある。

ゲティ家の身代金
 公開間近にセクハラ告発で主役が降板も、爆速撮り直しで無事公開し、代役クリストファー・プラマーが賞レースを賑わした話題作。役が守銭奴の大富豪なのでケビン・スペイシーのが嵌まった気がするが、手堅く面白いサスペンスだった。実話ベースなのに「本気か、ジジイ?」が連発。ただ、露骨に不自然で脚色っぽい終盤展開は興ざめ。

ファントム・スレッド
 50’sオートクチュールの世界を堪能しつつ「女の怖さ」を思い知る、ロマンチックじゃない『マイ・フェア・レディ』。ファッション界が舞台だから衣装はお洒落で昔ながらのフィルム撮影が美しく音楽も優雅で格調高いが、お話はもつれそうでもつれない痴情を描くブラック・コメディというギャップが素敵。

デッドプール2』
 一作目は「意外と真面目」と思ったが、今回は逆で「非常にハチャメチャ」。ギャグは面白いしアクションも派手になってるんだけど、故に散漫で話はちっとも進まず超テンポ悪い。あるべき形になったとも言えるが。前作同様のライアン・レイノルズ自虐ネタに加え俳優ジョシュ・ブローリン弄りなど映画パロディ多目なのは個人的に助かった。

バーフバリ 王の凱旋<完全版>』
 古代インド王家のスペクタクル巨編。前編の『伝説誕生』は編集版を鑑賞。そっちは終盤以外はちょこちょこ退屈だったけど、今回は満遍なく血湧き肉躍り長尺も気にならず。何の捻りも無い脚本なんだけど、忠義と勧善懲悪の様式美とか決めポーズが素敵な殺陣とか日本の時代劇に通じるノリが超燃える。マッチョで荒唐無稽な世界観は『北斗の拳』とか『男塾』を実写で観てる気分。姫と国母様に食われ前編のヒロインが空気なのが惜しい。

万引き家族
 感動作に定評の是枝監督カンヌ受賞作だから、反社会的な人々が疑似家族となって支え合って大団円みたいなのを想像してたら、かなりブラック寄りな話で驚いた。相変わらず子役の演出が冴えてるし、「家族とは?」と考えさせる秀作だけど、、安藤さくらが生々しく脱いだり松岡茉優が下着姿で腰振ったりするのでお茶の間向けとは言いがたく。

カメラを止めるな!
 棒演技の無名役者を揃えたインディーズとしては驚異的に面白いが、個人的には「映画作りあるある」の部分に思い入れが無いため、ちょっと過大に評価されてる印象。中盤で予想したことがきっちり回収されるのは快感だが、「そう思わせてそっちかよ!」とか「ここも伏線だったの?」みたいな意外性が欲しかった。

フューチャーワールド
 何を血迷ったのかジェームズ・フランコが監督&主演(但しヒャッハー側)で贈る今更な『マッドマックス』もどき。ミラ・ジョヴォヴィッチスヌープ・ドッグルーシー・リューと無駄にキャストは豪華だが、冗長で成り行き任せで意味不明な展開にげんなり。

ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー
 細かく設定を拾ってるし、西部劇の王道やってるし、あんまり印象には残ってないけどアクションも悪くなかった。普通に面白かった。これが青臭い坊や時代のハン・ソロの話なら非常に無難に纏まってると思う。でも、ここから『EP4』のアウトローに高速チェンジするとは信じ難いし、そもそも観たいのは悪党なハン・ソロの活躍なんだよなぁ。