観た映画(2015年4〜6月公開)

 今回は結構早く消化できた。珍しく邦画のが多い。

『ジヌよさらば 〜かむろば村へ〜』
 松尾スズキ監督のカラーがかなりしっかり出てるので好き嫌いは分かれそうだけど、笑いどころは多かった。ひと癖もふた癖もある登場人物がそれぞれに面白いし、松たか子中村優子は色っぽく、そして二階堂ふみは濃厚キスが凄かった。

『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』
 中盤ぐらいまではがっつりコメディなんだけど段々シリアスでヘビーな話になって難解に終わるし、映像情報も密度が濃いので面白いけど非常に疲れる映画。技術的には、カットを繋げたままのように見せつつ数日間の物語を成立させたアイデアに関心。

『ソロモンの偽証 後篇・裁判』
 つまらなくは無いが、前篇で提示した問題が収束する度にモヤッとする。「電気屋の親父の記憶が曖昧だった場合、この計画は破綻するんじゃ?」とか。でも、それが「中学生の考えた事だから」で全部すまされる設定がむかつく。

『カイト/KITE』
 原作の18禁アニメは未見だが、海外でカルト的人気と言われるアクション&世界観が死んでしまったのは判る。何故に身体能力ゼロな娘を主役に置いたのか。

『セッション』
 スポ根モノの亜流だけど、超高速ドラム至上主義の鬼教師も嫌な奴なら、対する主人公も負けず劣らずのクズというのが最高。終盤怒濤のハイテンションが圧巻。しかし、ジャズ・ドラマーで一旗揚げようと思って名門音楽学校に進むって普通なのかね、今のアメリカは。

寄生獣 完結編』
 原作未読。説明台詞だらけで緊迫感薄めのバカっぽい演出は気になるが、ストーリーは綺麗に纏まってて面白い。アクション・CG・ゴア描写に橋本愛の濡れ場まで、邦画にしては良く頑張ってる。

『王妃の館』
 水谷豊の奇抜な服装が売りのフランス観光コメディ。原作の時点で設定に無理があったのに果敢に実写化に挑み見事轟沈。現地ロケなのに何故カツラ被って西洋人な劇中劇を?

THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』
 押井守なのでレイバーは殆ど動かない。退屈な会話が続き登場人物の行動原理が理解不能なのも通常運転。それらを含めて、ベースとなったアニメ『劇パト2』のハードな世界観を求められる水準でリアルに再現してると思う。しかし、わずか半年足らずでディレクターズカット版を劇場で公開なんて客を舐めたまねをするのは許しがたい。

映画 ビリギャル
 実際はどーか知らんが、好きなことを我慢して猛勉強の末に合格なんて話よりも、ギャルのまま受かる話が観たかった。あと、事実はどーあれ、母ちゃんパート増やし妹の学費を崩し親戚から借金してまでの塾通いなのに志望は独立前提の私大ばかりってどーよ。けど、若年向け青春映画としてはソツない作品なのだった。

『フォーカス』
 クライム・サスペンスのつもりで観たらロマコメだった。まあ、詐欺師の映画としてはミスリードが下手過ぎるのが辛いとこなので、セクシー女優マーゴット・ロビーを堪能という方向性は間違いじゃ無いと思う。

駆込み女と駆出し男
 早口で台詞が聞き取れない&幕末の言葉なので意味不明多発。挙げ句にエピソード鮨詰めにぶつ切り編集に謎構成と来るのだが、その耳心地良い台詞と軽快なタッチが人情時代劇にマッチしてて、話が面白い上に割ときっちり正当派な満足感がある不思議な作品。画面作りのメリハリが格別に巧い。

『ゼロの未来』
 テリー・ギリアム自らが縮小再生産した『未来世紀ブラジル』。つまり、さっぱりワケわからんメタファーづくめの社会風刺がだらだら続く。奔放でエロくてとてもキュートなメラニー・ティエリーが一服の清涼剤。

明烏
 元は落語の『明烏』を題材とした舞台劇らしいが、他の廓噺も拝借して構成されてる辺りは『幕末太陽傳』っぽい。オチはもっと捻って欲しかったけど、良くも悪くも福田雄一ワールド全開で楽しめた。けど、無粋を承知で言えば深夜ドラマで充分な作品。

『チャッピー』
 残虐描写を監督承諾の元でカットしたと配給が嘘ついたり、そのシーンが凄まじく不自然な処理だったりと、色々とケチがついたがそれなりに楽しめる。頭脳は子供な警官ロボ「チャッピー」が超可愛いし、頭弱い系で出たとこ任せな登場人物達も面白いんだけど、この監督は『第9地区』も『エリジウム』も全部同じようなオチになるのが・・・。

ピッチ・パーフェクト
 大学のア・カペラ部を題材にしたアメリカン・ガールズ・コメディ。あっちの学園モノ特有のダメダメで下品でイカれた連中が色々揉めて、最終的に各々の個性を合わせたら恋も友情もハッピーという、どこまでも予定調和な映画だけど歌と踊りはかなり魅せる。

新宿スワン
 園子温にしてはバイオレンス描写が普通でガッカリ。俳優さんは総じて頑張ってるんだが脚本が酷すぎる。綾野剛が嬢達に感謝されるに足る奮闘部分は描写されず、むしろフォローもリサーチも努力不足に見える。山田孝之の動きは裏社会的に即詰みの悪手ばかり。

トゥモローランド
 そばかすっ娘がキュート、それだけの映画。トゥモローランドに行くまでは面白かったんだけど、終盤は大味展開な上に説明台詞だらけ。悪役が何をしたいのか全然理解できない。

海街diary
 三姉妹と腹違いの末妹の共棲の話なんだが、一方で色々な別れを扱った物語でもあったのが意外。主演級若手女優4人に加え豪華すぎる脇役てんこ盛りの割に、個々がバランス良く配置された丁寧な作りの良作だった。しかも、広瀬すずのアイドル映画としても成立してるのが凄い。ただ、「このナイスバディな三姉妹の実母って誰よ?」と思って観てたら登場したのが大竹しのぶで爆笑した。

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
 メル・ギブソンの不在も30年間のブランクも全く問題にならなかった奇跡的な続編。極上爆音上映で観たことは一生の自慢だ。誰もがオールタイムベスト級の作品として語ってるので多くは述べんが、何もかもが狂っている世界観とぎっしり詰まった馬鹿アイデアに脱帽。あらゆるカーチェイスの手本が此処にはある。唯一の問題点は鑑賞後のドライブに色々と支障を来すことだな。

『ラブ&ピース』
 長谷川博己の怪演は一見楽しげなのだが、無名時代の園子温の鬱屈が赤裸々にぶつけられ過ぎで笑えない。冗長で退屈なファンタジー要素もキツイ。でも、最後にRCサクセションの「スローバラード」が力技を極める。あと、怪獣特撮シーンは無駄に本格的。