観た映画(2020年1月公開)

『エクストリーム・ジョブ』
 韓国発のポリス・アクション・コメディ。市警のお荷物な麻薬捜査班5人組が張り込みの為にフライドチキン屋のふりをしてたら一躍有名店に・・・ってな話。韓国らしさがぎゅっと詰まってる一方、吉本芸人のコントっぽい掛け合いが多く笑える。脚本も良く出来てて、しっかり伏線回収して痛快に終わる様が見事。

『フォードvsフェラーリ
 フェラーリル・マン24時間の絶対王者だった時代、フォードの依頼で車両開発とチーム運営を担ったオーナー&ドライバーの実録モノ。レースシーンは大迫力で、友情物語は胸熱で、本社上層部の相次ぐ横槍に感情移入も凄まじく。ただ、エンツォ・フェラーリが本拠地から離れない人ってのは超有名なだけに終盤の演出は気になった。好いシーンなんだけどな。

ジョジョ・ラビット』
 無邪気なナチス少年と妄想ヒトラーのブラックユーモアと思いきや、背景にはヒトラーユーゲントのヘイトな思想教育があったり、中盤にはサスペンスやシリアス展開もあり、最後はきっちりと「そして、少年は大人になる」な話へ。とにかく抜群に魅力的なキャラ立てで、子役も大人も素晴らしい仕事ぶりだった。英語劇なのは別にかまわんが、言葉が通じない設定の米軍も普通に英語しゃべるのは・・・。

『リチャード・ジュエル』
 今回も実話ネタなイーストウッド監督作。「松本サリン事件」的な見込み捜査&メディアリンチの話を手堅くサラリと面白く描く。劇中ではFBI批判が重きをなしてるが、個人的には報道側の姿勢の方が刺さった。関係者のリークを検証無く記事にして、事実かどうかは気にしないし誤報・誇張でも滅多に謝らないのは日本でもよくある事だから。

『ロマンスドール』
 アダルトなラブドール製造という自分の仕事を妻に隠している職人の物語。高橋一生の繊細な演技が光る。脱いではいないが蒼井優が体を張りまくっており、彼女を模したラブドールも登場する。付き合いたてからすれ違ってギリギリになるまでの夫婦のドラマに心が揺れた。ラブドール造形の進化や素材の変遷など物作りの面でも興味深かった。

『キャッツ』
 三谷幸喜の舞台で、本筋に影響ない曲をカットしたら「メモリー」しか残らないってネタがあったが、つまり歌とダンスできちんと魅せる以外にない題材。なのに、肝心なとこでアップ多発など編集のテンポが超悪い。曲アレンジは格好いいけど。まあ、不気味の谷を彷徨う中で、お目当てのテイラー・スウィフトはセクシーでクールだったので満足。

『AI崩壊』
 AIより設定・脚本・演出の崩壊が深刻。電源落ちただけで大惨事なシステム設計、説明無く色々ハイスペックな主人公、不自然だらけの愛娘プロット、バディ感は好いが本筋に全く絡まない刑事コンビ、事態を放置する関係各位など、とにかく作劇が雑過ぎる。

前田建設ファンタジー営業部
 マジンガーZの格納庫という空想建造物見積もりに本気で取り組んだ実話に基づくお仕事映画。ハイテンション・コメディの過剰演出がきつかったが、「プロジェクトX」的な部分は面白かった。でも終盤がテンポ悪く、その盛り上がりが台無し。

『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』
 古風な探偵物の香り漂う現代劇。嘘をつくと嘔吐する設定のヒロインとかパロディ寄りかと思えば意外に本格で楽しかった。工夫された構成に原作物かと思えば脚本は『最後のジェダイ』でとっ散らかったライアン・ジョンソン監督オリジナル。欲を言えばダニエル・クレイグ扮する探偵にもっと個性の強さが欲しい。

観た映画(2019年10~12月公開)

蜜蜂と遠雷
 若手ピアノコンクールを題材にした青春群像。原作は直木賞本屋大賞の話題作だが未読。「これを文章で表現したの?」と逆に驚くぐらいに演奏シーンばっかりだった。素人には解らんレベルの競い合いをあの手この手の演出で伝えてて興味深い。共鳴するメイン4人の演技は素敵だったが、最終的に美味しい所は鹿賀丈史が全部持って行った。

『ジョーカー』
 ホアキン・フェニックスは素晴らしいし、凝った物語構造も見事だが、始終「いや、コイツはどう転んでも理解不能な悪のカリスマにはならんだろ?」という目線で観てたので乗りきれなかった。スコセッシ監督作のオマージュとしては面白かったけど。

『真実』
 カトリーヌ・ドヌーヴ×是枝監督の話題作だが、予想を遙かに超えて是枝テイスト強め。社会派じゃなくて、穏やかでコミカルな方の。舞台はフランスで西洋人キャストだけど、「この役は希林さんで、あれは橋爪さん、コイツはリリー・・・」って自然に置換された。劇的な展開は殆ど無いが、母娘の確執がネチネチせず子役がキュートなので和む事多し。

『楽園』
 実際の事件をモチーフにした吉田修一の短編2編を一本の物語に再構成したヒューマンドラマ。共同体意識が強く不寛容な田舎社会で追い詰められ壊れてしまう人々を観るのが辛かった。都会からネットまでムラ社会化が進む昨今、色々と考えさせられた。ただ、別個の作品を纏める役割を担う杉咲花のパートが少々難解で、巧い着地とは言いがたい。

ジェミニマン』
 映像技術の革新により、51歳VS20代ウィル・スミスの本人対決が実現。まあ、フルCGよりも3D+ハイフレームレートの没入感が本作の売りらしいけど、2Dで観たので其所はよくわからない。バイクチェイスとかアクションは面白い構図が多かったが、とにかく話が雑で退屈。

『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』
 演習の「生きた標的」にされ戦車1輌でナチスの包囲網から大脱出という、ロシア製娯楽戦車アクション。かなり荒唐無稽で雑な脚本だし無理矢理なロマンスにも苦笑だが、ド派手な戦車アクションと戦術ロジックな駆け引きは、殆ど実写版『ガールズ&パンツァー』で面白かった。逸らして弾く装甲や、被弾時の車内の衝撃とかの描写が新鮮。

IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』
 少年少女が大人になっての完結編。ホラーとしては怖くないのは前作同様で、好評だったジュブナイル要素が抜けて無駄に長くてふわっとしたファンタシーに・・・。物語の進行よりホラー映画等のオマージュを拾う方に注力したので退屈はしなかったが。

『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』
 付き添いの保護者を号泣の渦に叩き込んだと噂の子供向けアニメ。ほのぼのして何処までも優しい世界で、社会に疲れた大人に刺さるのも肯ける。音声はナレーションの男女のみって演出もマーベラス。「すみっコ」の細かい設定が自然に判るのも有難い。ファンシーな見た目とは裏腹にシュールなキャラが多くて可笑しかった。

『ひとよ』
 暴力夫を殺し刑期を終えた母と事件で人生を狂わされた子供達との、再会から始まる苦悩と丁々発止を綴るホームドラマ。演技巧者たちのヒリヒリするやりとりにグッと引き込まれる。特に田中裕子の圧倒的な説得力が素晴らしい。白石和彌監督なのでもっと殺伐バイオレントな内容になるのかと思いきや笑えるシーンも多く軽重のバランスが良かった。

ターミネーター:ニュー・フェイト』
 『T3』を無かったことにした続編。また同じ話が焼き直されているが、それなりに纏まって終わるので尻切れの前2作よりは好印象。女戦士グレースのしなやかで凛々しい姿だけで鑑賞した甲斐がある。還暦を超えたサラ・コナーも格好いい。ただ、もう少し脚本に予想を超える展開が欲しかった。

『決算!忠臣蔵
 討ち入りのお金の話を関西弁で描く異色コメディ。W主演な筈の岡村隆史の出番が妙に薄く、笑いを獲る役回りでもない謎脚本。金銭管理がテーマで勘定方が活躍しないまま淡々と浪費が嵩む様に、「どんだけキャストに銭使うてんねん!」との思いだけが募る。

ゾンビランド:ダブルタップ』
 ゾンビコメディ、十年ぶり、まさかの続編。その間にエマ・ストーンはオスカーを獲り、男二人にもノミネートがあり、子供だったアビゲイルちゃんはゴージャス・ボディに。くだらないギャグとゾンビ虐殺だらけの映画に、よくもこれだけのキャストが戻ってきたもんだ。前回でやり尽くした感は否めないが、明るく生き抜く終末世界は相変わらず楽しい。

『EXIT』(2019)
 フリー・クライミングを駆使して毒ガスから逃げ回る韓流サバイバル。ディザスター物の演出としては間違ってる気がするが、韓国ならではの妙に軽いノリのドタバタ連発で楽しかった。ボルダリング技術や今時ガジェットを使ったアイデアも新鮮。ただ、メイン二人の脱出劇を描くにしちゃ大きすぎる災害規模とか、設定が色々と大雑把なのが残念。

シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』
 仏製実写版という地雷案件なので全く期待してなかったが、ちゃんと原作テイストで楽しかった。「もっこり」も「天誅」も自然な形で盛り込まれ、特に登場した瞬間に誰の役か判る再現度のキャストには拍手喝采。いかにもフレンチっぽい毒気が強くてアダルトでお下品なギャグの応酬は、うっかりキッズと観ちゃダメなレベルだけど。

『カツベン!』
 周防正行監督久々の新作は、無声映画時代の活動弁士を題材としたコメディ。同じ映像でも弁士の個性で話が変わるとか、活弁が日本独自の上映スタイルとか、色々とためになった。ただ、大時代な演出の緩いドタバタを、懐かしいととるか古臭いととるかで評価は割れそう。竹中直人×渡辺えりのいがみ合いが不発なのも残念。

スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』
 一言で済ますとグダグダ。三部作として歪過ぎるし、単純に一本の映画としてもつまらない。前作で蒔きに蒔いた種を全部無かったことにして強引に不時着させたにしちゃよく頑張ったとは思うけども。キャリー・フィッシャー急逝の影響も大きいだろうし。しかし、あんなにフォースを便利に使う必要は無いし、フィンとポーの扱いもあんまりだ。

『パラサイト 半地下の家族』
 韓国の社会状況に疎いので、家族全員が即戦力スキル持ちで要領も良く怠惰でもないのに貧乏暮らしという設定が腑に落ちないし、石の意味もわからないなどあるけれど、ブラックなユーモアたっぷりで二転三転のエンタメ作品としてとても面白かった。ポン・ジュノ監督らしい苦い終わり方も好みだ。

観た映画(2019年7~9月公開)

『Diner ダイナー』
 独特の色彩表現は苦手だが、平山夢明の凄惨な原作をR指定無しに撮るなら蜷川実花監督の作風は合うと期待した。実際、怖さが無いのが残念だが、奇抜なキャラ達のシュールな世界は良い雰囲気だった。でも終盤の酷いアクションと蛇足な恋愛要素で全て台無し。

『天気の子』
 『君の名は。』のメガヒットで一般ウケにシフトするかと思いきや、ピーターパン・シンドロームなアプローチで突っ走って、あの物議を醸すだろうオチ。新海誠監督はガチだと思った。明らかに意図的なご都合主義連発や拳銃関連の不自然さには笑うしかない。東京の街並みの再現力や雨描写も素晴らしい。

アルキメデスの大戦』
 戦艦大和の建造阻止に挑む数学の天才の話。結果は皆さんご存じな話を如何に盛り上げ決着させるのか興味津々。数学的アプローチとか表面をなぞってるだけで、無理難題の数々は殆ど主人公の天才性だけで克服する酷い流れなのに、菅田将暉柄本佑のバディ感が楽しく、何より二転三転な攻防からの決着にツイストが効いていた。

『メランコリック』
 低予算インディー映画ながら色々凄いと噂の巻き込まれ型サスペンス・コメディ。とにかく予想がつかないストーリーテリングに唸らされた。コーエン兄弟っぽいダークなユーモア&バイオレンスを日本化しホンワカと纏めた印象。全然見覚えのない役者さんばかりなのに嵌まりっぷりが見事で、特に「松本」役の多面性が良かった。

『ダンスウィズミー』
 催眠で急に歌い踊る着想がバカで面白いし、笑えるシーンは一杯あり、踊りまくる三吉彩花は本当に楽しかった。門外漢なやしろ優とchayの演技も意外にいける。でも、総じて勿体ない。脳内と現実のギャップの見せ方に難があるし、後半にゴージャスな妄想シーンが殆ど無いのもがっかり。終わり方は素敵だけど、貧乏が解消しないのでモヤモヤ。

ロケットマン
 エルトン・ジョンの伝記ミュージカル。同性愛者として苦難の道を歩みドラッグと酒に蝕ばまれ更正する迄が描かれるが、歌詞を書いてるのはエルトンじゃないのに歌詞に合わせて作劇されてるって事は、たぶん話は脚色だらけ。その割に盛り上がらないのは本人存命が足枷か。『ライオン・キング』や「ダイアナ妃」の話には至らないで終わるのも残念。

『火口のふたり』
 出演は基本的に柄本佑瀧内公美のみでシーンの半分は濡れ場ながら、「キネ旬ベスト」の1位&主演女優賞獲得の官能映画。エロさや美しさよりも艶笑話として際立ってて、モラルを放り出してダラダラと性に溺れるだけの男女が異様に滑稽だった。終盤のまさかな展開は表題の「火口」につながるからたぶん原作通りだと思うけど・・・なんなんだ?

『引っ越し大名!』
 幾度も国替を重ねた越前松平家をモチーフにしたコメディ時代劇。不自然なギャグをちょこちょこ挟むのが難だが、話の大筋は普通に面白い。ただ、取って付けたような謀略や半端なミュージカルや冗長なアクションに尺を使うより、もっと知恵と人情なプロジェクト系の盛り上がりに力点を置いて欲しかった。

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
 ディカプリオとブラピの関係が可笑しくも胸熱で、ニアミスしつつ二人とは別の日常を送るヒロインも超キュートだった。シャロン・テートの事件を忘れてた故に所々意味不明だったが最後まで愉快に観れた。タランティーノ映画は常に固有名詞検索必須であり、調べれば別の面白みを逃したと知る。でも、テレビに洋画や洋ドラが流れる毎日の70年代を体験した世代としては、懐かしく夢のような楽しい世界で、長尺は苦にならず。

『アス』
 現代アメリカ風刺色の強いスリラー。主役が全員黒人のためか米国での評価は妙に高いが、正直ピンとこないで眠かった。特に中盤以降に加速していく荒唐無稽ぶりには呆れるばかりで、特権に与れる者の裏にいる恵まれない人々の事を真面目に考える気も失せる。

『記憶にございません!』
 三谷幸喜監督にしては「脚本の妙」が少なめ。ウィットに富んで心暖まる手堅いコメディなので気軽に楽しめるが、小さく纏まった感は否めない。事情により何者かを演じるお得意の枠組みに加え、三谷ドラマ『総理と呼ばないで』と同じような構図なので新味にも乏しい。

アイネクライネナハトムジーク
 原作は未読だが 、おそらく伊坂幸太郎が得意とする登場人物が巧妙に繋がって収束する群像劇なのだろう。叙述トリックだったりのパズル的快楽部分が弱まってると推測され、全体に薄味な印象は否めない。伊坂ワールドのイメージを崩さず、いくつもの素敵な出会いがあり爽やかな余韻を残す恋愛ドラマに仕上がってはいるけれども。

『アド・アストラ』
 批評家好評も一般ウケしないってのは本格SFにありがちだが、コイツは数多のハードSF映画の要素を寄せ集めてみたものの纏める力量も科学知識も持ち合わせてないって代物。ドラマも在り来たりすぎてブラピ&宇宙人ジョーンズでもカバーできない。

『ホテル・ムンバイ』
 ムンバイ同時多発テロを題材にした超一級品のスリラー。とにかくテロ描写が地獄絵図で緊張感が半端なかった。正解か墓穴か判らない行動選択の連続で、意外な所であっさり退場するキャラだらけ。物凄く怖いがグイグイ引き込まれる。冷酷無比な殺戮者が貧乏で無知で組織に踊らされた殉教者達だって事も描かれ、理不尽な暴力に憤りつつも富める側としてはなんとも言えない気持ちに・・・。

観た映画(2019年4~6月公開)

麻雀放浪記2020』
 「これ、本当に白石和彌監督?ダメな時の三池崇史園子温じゃなくて?」って思うぐらいおつむのネジが緩んだ世界観で驚いた。正直、社会風刺的要素は邪魔くさいだけなのだが、現代に現れた昭和の博打打ちのカルチャー・ギャップ・コメディ部分はそれなりに面白かった。84年版のオマージュが至る所に散りばめられてるのも嬉しい。

『ハンターキラー 潜航せよ』
 リアリティは気にせずにカッコいい男達に胸を熱くするB級ミリタリー。とにかくテンポが良く、よくある展開ばっかなのに飽きさせない。潜水艦・陸の特殊部隊・司令部のパートが切り替わりつつ進行する間に各々のキャラも作戦状況もアクションの位置関係もきっちり伝わる。味方は全員が超有能で人格者揃いという勧善懲悪ぶりも爽快。

『愛がなんだ』
 若い女性にウケてロングランヒットしたらしいが、何が刺さったのか正直よくわからない。主役の岸井ゆきのは痛々しいほど一途だが共感は難しそうなトンデモ女だし、成田凌は安定のサイテー男ぶりだし。とはいえ、こんなドロドロの報われない恋模様を軽快に描いてしまう手腕は見事。カメラマン君との対比とか脚本も巧い。

アガサ・クリスティー ねじれた家』
 クリスティーなのに最後まで探偵が全く活躍しないで唖然。ミステリーとしては古典の部類かつ、演出もミスリードが下手なので盛り上がりに欠ける。海外ドラマで見かける女優さんがちらほらってのと、ヒロインのステファニー・マティーニの美貌が見所。

アベンジャーズ/エンドゲーム』
 前作『インフィニティ・ウォー』の続きだけど『アントマン&ワスプ』『キャプテン・マーベル』のオマケ・シーンも鑑賞必須。その他、シリーズの記憶を総動員せざるを得ない構成なので長くは感じない3時間だった。これだけの豪華キャストを揃えるだけでも偉業なのに、各々に見せ場もあるし話も力技に頼らず綺麗に纏まってた。ギャグ多目なのも凄い。キャロル強すぎ問題が未解決なのと東京シーンが全体にアレな点は不満だけど。

『名探偵ピカチュウ
 ポケモンたちの基礎知識すら持たない身としては、ほぼ『ズートピア』な世界観を楽しむしかなかったわけだが、デフォルメが予想以上にかわいいし実写との共存も違和感なしで素晴らしかった。ただ、研究所潜入の辺りから探偵モノを逸脱するのが残念。最後は良い話っぽく纏めたが山場はかなり雑。ヒロインや刑事を絡めないのは勿体ない。

『居眠り磐音』
 佐伯泰英のロングラン時代小説の映画化って事で松竹もシリーズ化を狙ってるらしく役者が豪華。それがあっさり死んだり顔見せ程度で退場したりするので、意外性はあるが落ち着かない。メインキャラの描写に時間を割かず直ぐ台詞で説明しちゃうのも苛つく。とはいえ、王道娯楽活劇として手堅い造りで、集客不足で終わらせるには惜しい。

アメリカン・アニマルズ』
 当事者や家族による証言を織り交ぜつつ再現される、無駄に実行力があるボンクラ大学生達が起こした窃盗事件の顛末記。計画から実行までウルトラにおバカな若者たちがスタイリッシュに描かれてるのが異様に可笑しかった。青春映画なのに彼らに全然女っ気がないのが物哀しい。オーデュボンの本『アメリカの鳥類』の巨大さに驚かされた。

『空母いぶき』
 俳優陣は頑張っているが、どうにも食えない生煮え脚本。脈絡無く差し込まれるコンビニのシーンや、情勢に影響しない低レベルな記者達もキツイが、根本的に足枷だらけの自衛隊の有事対応や政治的なドラマ部分で納得性が低すぎる。特に捕虜のくだりが稚拙。

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』
 所謂「ギャレゴジ」の続きだが、後任マイケル・ドハティ監督のゴジラ愛がスパークし過ぎて、悪い意味で「日本の怪獣特撮映画」っぽい仕上がりに。即ち、怪獣プロレスばかりに全力で、ドラマが子供向け・・・というか出鱈目。そして説明台詞が跋扈。まあ、オマージュだらけでゴジラ好きには堪らないんだけどね。

ザ・ファブル
 色々アンバランス。凄いが細かすぎて伝わらないアクション。たぶん岡田准一本人が凝った銃撃動作や高度な格闘術を駆使してるが殆どが覆面姿。主役はクドく相棒の娘は妙に薄いキャラ設定。ヤクザ演出がなぜかサイコパス。そして徹底してスベるギャグと比し爆笑の主題歌選曲。総合的には豪華キャスト熱演で面白いっちゃ面白い映画だったが。

スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』
 マーベル版の2作目だが『アベンジャーズ/エンドゲーム』の後日談の意味合いのが大きい。でかくなりすぎたスケールを修正する工夫に満ちてて、高校生ヒーローの青春模様と成長の物語という本来の形に無理なく帰結して感心。ガジェット類を駆使したアクションも面白かった。「ツェッペリン大好き!」の曲が実は『AC/DC』というハードロック好きの爺向けギャグは日本だと気づかない観客が多そう。

観た映画(2019年01~03月公開)

蜘蛛の巣を払う女
 原作は『ドラゴン・タトゥーの女』のシリーズらしいが、監督・キャストが一新されジャンル自体も全く違う映画に。あまりにも女性版『007 スカイフォール』で驚いた。スーパー過ぎるハッカー描写が愉しくアクションも多目で退屈はしないが、話がスッカスカで謎解き要素ゼロな点が残念すぎる。

クリード 炎の宿敵』
 シリーズ2作目。父アポロを殺したドラゴの息子と因縁の対決というプロットは、『ロッキー4』が東西冷戦の徒花でラジー賞を賑わした娯楽作なだけに不安だったが、蓋を開ければクリードとロッキーとドラゴそれぞれの家族の話を巧みに配置した感動のドラマだった。ぶっちゃけ、主人公よりドラゴ父子に感情移入してしまったわけだが。

『マスカレード・ホテル』
 キャストや舞台は豪華で、キムタクと長澤まさみがいがみ合いつつ相棒となるお約束の流れも痛快。ホテルマンのトラブル解決ノウハウとかも面白い。ただメインのミステリ部分はイマイチ。わかりやすく配置され過ぎてる伏線、通話記録調べりゃアウトなトリック、挙げ句に無意味に近い偽装工作を「頭が良すぎた」で済ますのがなんとも。

『チワワちゃん』
 原作はバブル時代の若者文化を代表するマンガ家・岡崎京子の短編。当時のサブカルな人々が全員パリピに置き換わってる違和感や、六百万円の件と浅野忠信の収まりの悪さが気になるが、今の若い子たちが感情移入出来ちゃう世界観に巧くアップデートしてるとも思う。

『ミスター・ガラス』
 中途半端な所で終わった『スプリット』の続編にして、00年公開の『アンブレイカブル』まさかの完結編。ジェームズ・マカヴォイの多重人格芸を堪能しつつ、話はヒーロー(或いは怪人)活動する人々と「超能力は妄想」な女医さんの対決へ。それが次第にシャマラン監督とダメ出しする側に重なり・・・。面白いが、いつもながらの微妙な後味。

サスペリア(2018)
 リメイクでも続編でも無くインスパイア。政治色が加わり変に高尚で無駄に話が長い。折角、『フィフティ・シェイズ』のダコタ・ジョンソンや“ヒット・ガール”クロエ・モレッツを揃えたんだから、エログロ無残絵を美しく撮ればそれで良いのに。

ファースト・マン
 臨場感が半端なかったり、ミッションのギリギリ感をわかりやすく伝えたり、作り手は色々工夫してるのだが、如何せん人一倍沈着冷静で寡黙と定評のアームストロング船長の内面を描く狙いなので、全ては淡々と語られドラマは盛り上がりに欠ける。どうしても『ライトスタッフ』や『アポロ13』のような偉業達成の感動を期待しちゃうものね。

『アクアマン』
 変に大人向けを狙って失敗を繰り返してきたDCコミック世界観から距離を置いてファンタジー寄りの冒険活劇に仕立てたのは正解。大半を占める水中シーンが色鮮やかで、バトルでの位置関係も把握しやすい演出なのが好印象。シチリアの地上戦も面白かった。まあ、シナリオが雑過ぎるとか、ヒロインの方が目立ってるとかあるけれど。

女王陛下のお気に入り
 欧州史に疎いので観賞中は全く理解してなかったが、背景の戦争はルイ14世との「スペイン継承戦争」、英国女王側近の座を巡る女の闘いも史実に基づく。そんなこと知らなくても非常にわかりやすい成り上がりモノで、アカデミー賞級の三女優が火花散らす演技合戦は見事。えげつない話なのに基本コメディなのでドロドロし過ぎないのが良い。

『半世界』
 「キネ旬ベスト」と「毎日映コン」で脚本賞を獲った作品だが、その割に盛り込みすぎで中途半端な印象。ただ、キャストに当て書きされた人物描写は秀逸。経営にも親子関係にも問題を抱える鈍感な備長炭職人に稲垣吾郎を起用するセンスが凄い。池脇千鶴も普通のおばさんにしか見えなくて凄い。長谷川博己による護身術指南がためになった。

アリータ:バトル・エンジェル
 原作漫画の『銃夢』は読んでないが90年代のサイバーパンクっぽさは巧く表現されてて、アクション演出も疾走感重視で見応えバッチリ。目がデカいのも直ぐに慣れた。ただ、詰め込み過ぎな上に中途半端なところで終わる脚本はいただけない。続編が作られる保証はないのに。

『翔んで埼玉』
 当て書きレベルでGACKTと二階堂ふみが嵌まる。『のだめ』といい『テルマエ』といい武内英樹監督のキャスティング・センスには脱帽。埼玉ディスりどころか千葉・群馬・茨城に加え都下はおろか西葛西や池袋まで被弾する始末に苦笑する。しかし、関東民ぐらいしか解らなそうな馬鹿馬鹿しい小ネタばかりなのにまさかの大ヒット。謎だ。

『グリーンブック』
 昨今の白人優位批判の風潮でオスカー受賞が問題視されてるらしいが、相棒モノ好きとしては普通に楽しい映画だった。差別が酷い時代のアメリカ南部を裕福な黒人ミュージシャンと運転手兼用心棒の白人が旅するって題材は確かに新味はないけれど、軽妙な掛け合いがあって伏線がいっぱい回収されて衝撃的なピザの食べ方に出会う。それだけで大満足。

スパイダーマン:スパイダーバース』
 複数の世界観のスパイダーマンが登場するCGアニメ。スパイダーマンの基本設定やバリエーションをろくに知らないのでパロディやリスペクト方面は殆ど理解不能なのだが、アメコミがそのまま動く物凄い映像表現に度肝を抜かれた。どんな技術なのかさっぱり解らない。そこに一見実写に見えるキャラから日本の萌えキャラまでが違和感なく収まるのも不思議。

『運び屋』
 予告からは想像もつかないが実はコメディ。87歳で製作・監督・主演。更に室内劇じゃなくロード・ムービー、おまけに運転も自分。元気すぎるジジイに驚く以外にない。実在の運び屋が題材と言いつつ、仕事はスペシャルで家庭人としては失格な役柄はイーストウッドの人物像と重なり超愉しかった。女性ウケは無理なので親爺だけ観れば良し。

『シンプル・フェイバー』
 謎解きとか放っといてアナ・ケンドリックのコメディエンヌぶりを堪能するユーモア・ミステリー。場当たり展開だらけの嘘くさい作劇なのにそこそこ面白いのは、彼女の演じたキャラの魅力による所が大きく、裏が無さそうで有りそうなバカっぽさが超キュート。ファッション演出も見事だった。

キャプテン・マーベル
 スーパーヒロイン物で『アベンジャーズ』絡みとしか知らなかったが、蓋を開けてみれば「若きフューリー長官の冒険」だった。「昔のサミュエル・L・ジャクソンに激似の彼は何者?」と思えば本人出演でビックリ。特殊効果技術もここまで来たのか。主人公は格好良いし話も意外に面白かったが、アクション面ではこれといった見せ場が無いのが残念。

『ブラック・クランズマン』
 KKKに潜入捜査した70年代の実話を題材としてるが、スパイク・リー監督らしく人種や歪んだ思想による対立など現代アメリカを痛烈に批判した内容だった。相棒モノとしても潜入サスペンスとしても割と面白かったが、終わり方にはドン引き。暴力に躊躇しない土壌では、これだけ強いメッセージが要るって事なんだろうけど。

観た映画(2018年10~12月公開)

 『フィフティ・シェイズ・フリード
 惰性で観た三部作最終作。官能方面もセレブ方面もスケールダウンして、チープなラブサスペンスになってしまった。とにかく全般的にエッジが効いてない。でも、内容と裏腹にサントラはポップな曲が粒ぞろいで嗤う。

イコライザー2』
 続編だけど単独で成立。周到な準備で状況を瞬時に識別し、手近にあるものを武器にスマートに悪人を殺戮する戦闘スタイルは今回も健在。アクション超楽しい。ただ、本筋であるべき必殺仕事人として勝手に人助けの日々を送る話と、親友殺しの真相を追う話が巧く混ざってないので幾分バランスが悪い。

『チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛』
 17世紀のオランダにチューリップ狂時代が在ったとか全然知らなかったので歴史や当時の文化・風俗方面でタメになった。豪商の妻が貧乏画家と恋に落ちてってな在り来たりロマンスも後半は意外な展開となり退屈はしなかった。画家が修道院長に気に入られる件が理解不能だったり、球根取引関連のシステムが急ぎ足で分かり辛いのが難。

日日是好日
 茶道を通じて学ぶ、五感で味わう生きる歓び。非常に静かで地味だけど素敵な映画だった。和のモノは覚えてからが稽古なんだとつくづく。二十歳から四十代まで演じた黒木華の所作が見事で、素人目にも心の成長と佇まいの変化がひしひしと伝わる。そして、公開直前に突然の別れが訪れてしまった樹木希林さん演ずるお茶の先生の圧巻の重みと温かみ。「毎年同じことができるということが本当に幸せなんですね」って台詞がもう・・・。

デス・ウィッシュ
 残酷描写に定評のイーライ・ロス監督による『狼よさらば』リメイク。でも暴力面は意外にマイルドで、それよりもお手軽に動画が見られたり撮られたりなネット時代的演出が面白かった。「銃による自警活動を称賛」とか目くじら立てるよりも、「アメリカって大変だよなぁ」と思いつつ娯楽作品と割り切って楽しむべき。

ピッチ・パーフェクト ラストステージ』
 シリーズ3作目ともなると、どうにも話は薄っぺらい。コメディのパンチ力もかなり衰えている。けど、今どきのポップな楽曲に疎くても楽しめるレベルで、キュートな美女達の刺激的で面白いア・カペラとダンスが披露されるので文句は無い。90分じゃ物足りない事を除けば。

『ヴェノム』
 『寄生獣』みたいな血まみれダーク路線かと思ったらコミカルでポップなヒーローものだったという予告編詐欺。設定上は人食い生物なのにグロ描写はぬるく恐怖感皆無なのにがっかりだが、『仮面ライダー電王』的なバディ感が心地よくテンポも良い。ただ、ちょっとシーンを足してくれれば解決しそうな説明不足が彼方此方にあってモヤモヤする。

ボヘミアン・ラプソディ
 事実関係が大きく異なるとわかって観てても終盤の怒濤の泣かせにゃあらがえず。ライブエイドのシーンは口パクなのに実際の記録映像より感動してしまう。あそこで演った曲の歌詞にシンクロするように本編を作劇したんだろうから凄まじい。エンドロールの「ドント・ストップ・ミー・ナウ」と「ショウ・マスト・ゴー・オン」で余命の生き様を表現したセンスにもガツンときた。

ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ
 前作は観てなくてもOK。メキシコの兇悪麻薬カルテルと渡り合う凄惨なテイストはそのままに、違法も辞さず合理的で非情だった親爺ペアも少しだけ人間味あるキャラに変更され、コレはコレでグッとくる。銃連射シーンには驚愕。そして、女子高生役のラテン系の娘が可愛かった。なお、前回の主演女優エミリー・ブラントは出てこない。

『ハード・コア』(2018)
 山田孝之佐藤健荒川良々&古臭いロボットの昭和感溢れるポスターに惹かれ鑑賞。シュールなドタバタ喜劇を想像したんだが、意外に笑えそうで笑えないハードボイルドな話だった。予想つかない展開でそこそこ面白いが、どうにも話が膨らまない。

『ヘレディタリー/継承』
 「映画秘宝」界隈ではスゲー怖いと絶賛のホラーなわけだが、個人的には全然。ムードや女優さんの顔芸は確かに良い感じだけど、妄想を疑わせる演出やスピリチュアル要素に辟易して始終醒めていた。

『来る』
 癖の強い中島哲也監督らしく徹頭徹尾やり過ぎてて、不快感ばかり強いがホラーとしては全く怖くない。重要な部分が異様に曖昧だし。だが、終盤に入って無駄に壮大な霊能バトルものにギヤチェンジすると「何故の嵐」なバカ映画として楽しめた。おいしいとこは柴田理恵が全部持って行った。

『暁に祈れ』
 タイの刑務所を舞台にした実録ムエタイ映画と言うことでスポ根ドラマを想像してたが全然違った。敢えてタイ語部分は字幕無しで進行するドラマは、威圧的で言葉の通じぬ全身タトゥーの囚人たちに囲まれた監獄生活。賄賂が無いと色々キツイ劣悪な環境は、非常に怖い脅しばかりで緊張感が半端なかった。終盤にはムエタイ燃え展開もちゃんとある。

アリー/ スター誕生
 手堅くオーソドックスに現代リメイク。レディー・ガガの歌唱シーンは掛け値無しで演技の方も案外いけてた。初監督・主演に加え歌も無難にこなすブラッドリー・クーパーにも驚かされた。ただ、カントリー・ロックからダンス・ポップに転身ってとこのモヤモヤ感が強いし、粒揃い楽曲の中でその売れ線の曲ってのの出来が微妙なのが困る。

観た映画(2018年7~9月公開)

バトル・オブ・ザ・セクシーズ
 お蝶夫人が未婚で夫人呼ばわりな原因、かつて女子テニス界に君臨したビリー・ジーン・キング夫人が、男女同権を訴えて男尊女卑な殿堂入りシニアと行った世紀の一戦を描く・・・のだが、賃金格差や性差別はあまり強調されず、裏で互いに抱えていた別の家庭問題がクローズアップされる。予想と全然違う内容だったが、これはこれで良し。

菊とギロチン
 劇中の台詞にある通り「何言ってるんだ?意味わかんねぇ!」の変な映画だった。差別的で不寛容な社会へと向かう事に警鐘を鳴らしたいのは解るんだが、左翼思想がパワフルに炸裂しまくってるせいで大事な所で失笑の繰り返し。テロリストと女相撲の境遇にもっと相似性なり対照性なりがあれば・・・。

ジュラシック・ワールド/炎の王国
 まさかのスケールダウン。マンネリとの戦いなのは解るが、このシリーズに客が求めるのはコレジャナイ。悪い奴しかいない舞台で恐竜達が暴れてもハラハラしないし、オチ自体は嫌いじゃないが主人公達の頑張りは台無しでキッズ向けとしては不適。

未来のミライ
 細かいディテールとか子供描写は素晴らしいんだけど、何でもありあり過ぎる。幼児の想像の世界ならそれも良いけど、現実をバンバン混ぜて強引にSF的な説明つけられちゃイラッとくる。そもそも細田守監督は四歳児に求め過ぎだ。ちゃんと大人が導けばいい。

ウインド・リバー
 過疎なネイティブ居留地の無法地帯化にインスパイアされた社会派ドラマ。ミステリーとしては捻りがないが、現代アメリカの闇を描く重い内容ながら勧善懲悪の西部劇にもなってて面白かった。ただ、万単位の住人がいて地元警察僅か6人ってのを許容しちゃう先住民の感覚がさっぱり理解出来ない。増員しても汚職警官が蔓延るだけだからか?

ミッション:インポッシブル/フォールアウト
 アクションありきで後付けシナリオと聞いてたので覚悟してたけど、やはりコントみたいな謎行動が満載。でもトム・クルーズ56歳が不可能ミッションに挑戦するノースタント作品だとわかって観れば、惜しみない拍手を贈るしかない。足砕いたのニュースになってたし。予告にあった超凄いアクションを本編未収録にしちゃう大胆な編集にも脱帽。

ペンギン・ハイウェイ
 謎めいた予告編が気になって観たアニメ映画。いちいち可愛いペンギンの動きと「探求するんだ!科学の心だ!」な正統派ジュブナイルを堪能してたら、『惑星ソラリス』の「海」っぽいのが出てきて子供向けにしては難解なSFに。面白かったが、観る側の想像に委ねる謎が多すぎる気はする。「巾着袋」とかヒントを丁寧に置いてはいるけど。

検察側の罪人
 司法制度の問題点を描いた題材は面白いしキャストの大げさな芝居も楽しいが、原田眞人監督の作家性がスパークしまくってて変な所が多すぎる。日本社会の問題を盛り込んだというより無理矢理混ぜただけで、ノイズどころかメインの話が破綻するレベルで邪魔。

アントマン&ワスプ
 一見さんにもわかりやすい非常に良く出来た続編。アイデア満載のアクションが愉しく、「縮小&巨大化」を万能になりすぎないように調整してる事に感心する。とかく殺伐としがちな最近の『アベンジャーズ』界隈で、善い人達と憎めない敵に囲まれてコミカルにミッションをこなす姿にほっこり。なのに、最後の最後で世界観ぶち壊しなのが許せない。

『MEG ザ・モンスター』
 良くも悪くもない中途半端なサメ映画。テンポ良く話は進み、ジェイソン・ステイサムは出ずっぱりで活躍してて、サメも大暴れしてるので意外と退屈はしない。だが、パニック性は皆無で、中国側の規制なのか残虐描写も全然無くて、ネタになるようなバカ展開もなく、何のための入れたのか不明なシーンは多々ある。

愛しのアイリーン
 国際結婚ネタのブラック・コメディーをイメージしてたら、かなり差別的・暴力的なドロドロの情念を突きつけられ、『ヒメアノ~ル』の吉田恵輔監督の作風と覚悟しててもキツい内容だった。痛々しくて笑うに笑えない愛憎劇だが着地は見事。安田顕木野花の熱演も賞賛に値するが、とにかくアイリーン役のフィリピン女優さんがすごくよかった。

若おかみは小学生!
 噂どおり質の高い女児向けアニメだったが、主におっさんにばかうけという事実には頭がクラクラする。ファンタジー嫌いな身としては正直お話自体はそれほど。けど、総集編のお手本のような作品で、構成が抜群に巧いのは間違いない。駆け足過ぎず端折り過ぎずで丁寧に組まれた濃密な一時間半に唸らされる事しきり。

純平、考え直せ
 朝ドラのヌードモデル役で世に出た柳ゆり菜が本当に脱いだと話題のチンピラ映画。主演の鉄砲玉は『ちはやふる』の野村周平で、これが嵌まり役。髪まで切って熱演の柳ゆり菜との決行までの3日間の恋愛模様はベタだけどグッとくる。ただ、二人に絡む周辺人物や裏で展開するSNS上の人々の心情を追う群像劇としては掘り下げが甘い。

『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』
 中国の集団カンニング事件をモチーフにしたタイ映画。意外なことに手口自体はかなり杜撰なんだけど、クライム・サスペンスみたいな演出で超ハラハラさせられた。主人公がカンニングをさせる側というのが新しいし、学歴至上主義・金持ち優遇・不正の横行などの社会問題を背景に倫理感の危うい天才たちが揺れに揺れる脚本もよく出来てる。貨幣単位がバーツなのでピンとこないのが難点。冒頭の学費が平均年収と同じぐらいらしい。

クワイエット・プレイス
 音に反応して襲う敵を前に臨月間近の妊婦を抱える家族という状況設定は面白い。だが、スリルのピークが出産シーンになっちゃって緊張感を最後まで保つのは難しかった。「防音対策これだけ?」「もっと対処法があるだろう?」とか考える暇があるのはマイナス。弱点バレも早過ぎ。

クレイジー・リッチ!
 下品な成金の贅沢三昧を風刺する話かと思いきやハーレクイン・ロマンスだった。彼氏の正体は名家の御曹司で玉の輿への嫌がらせやら格差故の障壁やらの古典的なヤツ。でもオールアジア系ハリウッド映画って事で、シンガポール人の中国系米国人への偏見とか価値観の相違が描かれてる所が新しい。好感度高めの人物が多くラブコメとしても爽快。