観た映画(2022年1~3月公開)

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』
 トム・ホランド版3作目で前作の続き。事態の打開をポンコツ魔術師に頼って状況を悪化させるという「のび太かお前は?」な話なのだが、そこから「そして少年は大人になる」な胸熱展開に持って行くからこのシリーズは侮れない。とにかくスパイダーマン愛に溢れている。ただ、アベンジャーズも含めて積み上げてきた人以外には厳しいのも事実。

 

『クライ・マッチョ』
 老いぼれたテキサス野郎とメキシコ少年と雄鶏の心温まるロードムービー。美女に誘惑されたり荒馬を手懐けたり、どう考えても九十超の爺さんを起用するには無理がある役柄だが、鞍に跨るイーストウッド監督の雄姿に感無量。撮影時期がコロナの猛威真っ只中っていうのも恐れ入る。

 

『ハウス・オブ・グッチ』
 グッチ創業家のお家騒動を題材とするリドリー・スコット監督作。コメディ寄りでテンポが良いので二時間半の長尺は苦にならず。ちゅか、ずっとレディー・ガガのセクシー・ボディに釘付け。単に金目当ての悪女じゃなく、良かれと思ってやり過ぎる野心と愛の権化って解釈も楽しい。ハイブランド大好きな日本人は笑われる対象だけども。

 

『ライダーズ・オブ・ジャスティス』
 復讐のためギャングに立ち向かう男のハード・バイオレンスかと思わせてコメディという謎のデンマーク映画。シリアスに主人公が死体の山を築く一方で、サポート役の三人のおっさんがコントを繰り広げる奇妙なバランスに戸惑う。モラル的には全然ダメな話なのにハートフルに畳まれて唖然。いや、結構人生の含蓄に富んでて面白かったけど。

 

『さがす』
 佐藤二朗が娘をさがす映画と思ったら逆だった。シリアスとは聞いていたが想定を超えて直接描写のハード・バイオレンスで驚く。モチーフの事件がありヒューマンなメッセージ性が強く変なタイミングで笑いの要素と、ポン・ジュノ監督の影響が露骨なのは気になったが、サスペンスとして出来が良く展開が次々と強烈だった。

 

『コーダ あいのうた』
 アカデミー賞を受賞した、聴覚障害一家の耳となり家業を手伝う娘の音楽・青春モノ。仏映画『エール!』の米国リメイクで、設定アレンジと選曲は巧みに下ネタはマイルドになって格段に好くなった。ありきたりのストーリーなんだけど家族がみんな人間臭くてハートフル。色々と面倒くさくも随所で的確な音楽の先生が素敵だった。

 

『ザ・ユナイテッド・ステイツ vs. ビリー・ホリデイ
 黒人の虐殺を唄う「奇妙な果実」で知られる女性シンガーの後半生を描く。ビッグサクセスの経緯はカットされてるし、人種・性差別と積極的に闘ったという感じでも無く、後の世への音楽的影響もよく分からない構成。身持ちが悪く酒とヘロインでボロボロな所に、連邦麻薬局の標的になって弾圧され・・・って所から話が殆ど動かない。

 

『ウエスト・サイド・ストーリー』
 ミュージカル史に輝く作品をスピルバーグ監督がリメイク。悲恋物として散々模倣された雛形なので陳腐でクラシカルなのは否めないが、「マンボ」や「アメリカ」の圧巻な華やかさを観ないのは勿体ない。様々な対立を色使いと光と影で演出する巨匠の技が冴え渡る。設定の変更で諸事情も理解しやすくなった。

 

『ちょっと思い出しただけ』
 傑作邦画と噂に聞いてジャンルすら知らず鑑賞。主人公の誕生日を遡る構成の恋愛映画と理解したのは中盤だった。全然ドラマチックじゃない話だけど、何か忘れがたい瞬間を切り取った文学的というかテクニカルな作品。『花束みたいな恋をした』を思い出しつつ、こういうテイストの恋愛映画が令和の若者に刺さる事に感心しつつ心配もする。

 

『ドリームプラン』
 テニス界の女王ウィリアムズ姉妹を育てたクレイジーなパパの伝記映画で、授賞式でウィル・スミスがビンタかましたやつ。野心家で高圧的で自分の思い通りにする毒親に見えて学業や信仰や人間教育を大事にしてたり、実務的で議論好きで面倒なキャラが面白く、長尺は気にならなかった。薄々わかっていたが妹はおまけで姉のサクセスが中心。余談だが、日本だとアランチャ・サンチェスで通ってるので「ビカリオって誰?」ってなった。

 

ナイル殺人事件(2020)
 ケネス・ブラナー監督・主演のクリスティ映画第二弾。時代設定や基本構成などは原作通りで古風だが手堅い造り。登場人物は多様性への配慮で変更多数。その結果、「ブルースを聴くポアロ」が拝めるのが斬新。ダンサー設定でもないのに無駄に凄いダンスを披露するダブルヒロインも印象的。リゾートものなのに安っぽいCGばかりなのは残念。


『THE BATMAN-ザ・バットマン-』
 今度のリブートは猟奇殺人を追うハードボイルドな探偵バットマン。『セブン』っぽく犯人の残すヒントから事件を炙り出していく展開に大興奮だったが、犯人と対峙した辺で失速し長尺が辛く感じた。痛快ヒーローものや派手なガジェットを期待する人には地獄の3時間だろう。あと今回のキャット、身のこなしは格好良いがマスクがほっかむりで恥ずかしい。