観た映画(2017年7〜9月公開)

忍びの国
 主演が嵐の大野君&変キャラ女優の石原さとみなのでポップでコミカルな緩い忍者アクションなのは許す。けど、『殿、利息でござる!』の中村義洋が監督し脚本は原作者自身でなんで此処までドラマ性が無いのか。最後で中途半端にシリアスになられても・・・。


パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊
 今回は初期三部作の直接的な後日譚。超常現象ありの世界観とスパロウ船長のふざけたキャラが足を引っ張り、話のとっ散らかりぶりは回を重ねる毎に悪化。もうインフレが酷くて収拾が付かない。けど、お約束を楽しむ分にはまだまだいけてる冒険映画なのだった。原題の「死人に口無し」で問題なかろうに謎な邦題が付いてるのはご愛敬。


『ライフ』
 豪華キャスト、作り込んだ国際宇宙ステーション、ワイヤーを駆使した無重力表現など、めちゃめちゃ金と手間かけて完成したのが使い古されたB級SFホラーという驚き。わかりきった展開なのに結構おもろかった。惜しむらくは終盤が弱い。宇宙生物の恐怖描写が極限まで高まらないので続く起死回生も盛り上がらずオチの切れ味も薄れた。


銀魂
 福田雄一監督作品だから観たが原作未読ではキツイ映画だった。キャラの特徴や関係性の理解が追いつかない。それでもパロディや何でもやっちゃう女優陣のギャグでちょこちょこは笑えたんだけど、後半のシリアス・アクションがとにかく冗長でまいった。


パワーレンジャー
 二時間丸々まさかのスーパー戦隊「第一話」だった。初変身は終盤までお預けされ、合体ロボもお披露目程度で、殆どの尺は五人の若者が正義に目覚めるまでに費やされるという構成。だが、これが意外に良い。まんま『ブレックファスト・クラブ』なスクール・カースト集結型青春グラフィティで。まあ、変身アクションが超短い点は惨いけど。


ザ・マミー/呪われた砂漠の王女
 地雷臭はしてたが想像を超えてた。トム・クルーズらしい大掛かりなアクションはあるし、ソフィア・ブテラの女ミイラはヒロインよりも魅力的だが、監督に基本設定を伝える能力が無いのが致命的。観客側の補完能力に委ねられる部分が多すぎる。


ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』
 キャストの強烈なヴィジュアルから想起される程には出来は悪くなかった。これは三池崇史監督が不良や猟奇な人を描くのを得手としてるおかげ。スタンドバトルよりもホラー&サスペンスを重視した演出も功を奏してる。ただ、原作既読が前提な上に無駄に詰め込んだ脚本は不親切極まりない。あと承太郎さんが老け過ぎ&見せ場無さ過ぎ。


スパイダーマン:ホームカミング』
 ライミ版もアメスパも完全スルーしたが、コイツは『シビル・ウォー』に強引に出た時の印象が好かったので観る。よく喋るガキの無邪気な自警活動って立ち位置が、やたら壮大化したアベンジャーズ世界の箸休めにぴったり。アクションはイマイチだが、明るく元気なティーン・コメディの側面がグッド。実質『アイアンマン3』の続編なので要観賞。


ベイビー・ドライバー
 「逃がし屋」が主人公の痛快犯罪活劇と思いきや、まさかのミュージカル。サントラに合わせリズムを刻みつつ自然に会話する登場人物達が超クール。内容と歌詞がリンクしてるっぽいのが英語力ゼロの身には辛いがそれでも充分面白かった。キャラは立ちまくり、カーチェイスもとにかくテンポが良い。後半の意外な展開も素晴らしいが、ケヴィン・スペイシーの翻心が唐突なのとアクションが失速気味なのが残念。


ワンダーウーマン
 とにかくガル・ガドットが美しく格好いい。序盤のアマゾネス軍団アクション、中盤の『ローマの休日』&ジャンヌ・ダルクぶりも文句の付けようが無い。だが、話が面白いのはここまで。写真の男達に大した見せ場が無いままに、ラストはDCユニバース共通の退屈極まりない超人バトルでがっかり。


『エル ELLE』
 還暦超えてるとは思えないイザベル・ユペールに脱帽。ポール・バーホーベン監督らしい自由奔放で妖艶で強い女を見事に演じ、普通だとモラルも社会通念も関係無い奇天烈な女になってしまう役を、ブラックな笑いを高尚に保ち倒錯的かつ気品あるヒロイン像に体現したバランス感覚が素晴らしい。物議を醸す社会派テーマも興味深いが、サスペンス要素や人間模様など作劇も普通に面白い。


関ヶ原
 大人数の合戦シーンはまずまずの迫力。けれど戦況も人物像も描き方は全然ダメ。歴史に疎い人には何が何やらな駆け足展開は詮ないとは思うが、散漫に拍車をかける中途半端な忍者要素がかなり邪魔臭かった。方言キツイし早口でセリフが聞き取れないのも困る。


トリガール!
 題材は面白そうだったが、競技系青春コメディとしては致命的に燃え要素が薄い。人力飛行機へのフォーカスが異様に少なくほぼ「自転車ガール」ってどーなのか?偏見に満ちた理系男子演出などギャグが寒くてイラッとくる。ナダルは何言ってるのかわかんない。


『新感染 ファイナル・エクスプレス』
 やり過ぎなほどにエンタメてんこ盛りの韓国産パニックホラー。ベタな展開の筈なのに国民性の違いでナチュラルにパターンを崩してくるのが面白かった。無駄に感情的で良くも悪くも即断即決な点も作品の圧倒的スピード感にマッチしてて良し。全体にちょっと頭が悪すぎるとは思うが。


ダンケルク
 史実に基づく映画だろうとクリストファー・ノーランが監督すると奇妙な世界観になるってことが判った。CG使わず実写に拘った故に30万人いる筈のビーチはスカスカだし、飛行機は片手に余る程しか飛んでない。時間軸の違う3つの物語もややこしい。でも、翻弄されまくる撤退組の緊迫感は凄かった。


散歩する侵略者
 黒沢清監督なので「敢えての強烈な安っぽさと妙な繋ぎ」を織り込む必要はあるが、『ジョジョ』っぽいSF設定とコミカルな会話劇が楽しかった。役者の嵌まり振りも素晴らしく、長谷川博己がシリアスな場面で面白すぎるし、後半の長澤まさみは超キュート。集めた概念の違いで三者三様な侵略者達も良い。特に恒松祐里の身体能力には惚れ惚れ。


『三度目の殺人』
 是枝裕和監督作品だが、いつもの感動作を期待するとガッカリで、知恵熱を出しながらスッキリしない話に頭を捻るのが好きな人向け。法廷は真実を追求する場所ではなく、登場人物は嘘つきばかり。真相に近づいたかと思いきや、接見の度に証言を変える役所広司の怪演が光る。中盤で彼が評された「感情のない空っぽの器」は重要キーワード。


エイリアン:コヴェナント
 『エイリアン』の前日譚に当たる『プロメテウス』の続編。前作と違いエイリアンは暴れ回ってて一安心なのだが、アンドロイドの「創造主への叛乱」が本筋で、殆ど『ブレードランナー』な話だった。なのに、挑まれる藭としての人類たちがバカすぎてテーマは台無し。あんな迂闊で対応力の低いクルーに率いられた入植者達が哀れでならない。


『ドリーム』
 この邦題からは全く想像つかないが、米国初の有人宇宙飛行計画の裏方に凄い数学能力の黒人女性たちが存在したという史実に基づく物語。キング牧師が頑張ってる時代の南部が舞台だが、権利を主張して差別と戦う話が主ではなく、高い能力を認められるように対応策を考えて周囲を変えていく理系女子が凄く格好良かった。黒人蔑視や男尊女卑はさして強くないのに慣習や前例踏襲主義が壁になり非効率を生む図式が面白い。